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中村 明 氏 書籍『悪文~裏返し文章読本』より

このページは、書籍『悪文~裏返し文章読本』(中村 明 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・不名誉な三冠王は偶然生まれるとはかぎらない。というより、よくわかっていないことを書く、読み手のことを意に介さない、何のために書いているのかはっきりしない、というこの三大条件は、ひとりの人間のあり方としてむしろ密接につながっているのではなかろうか。悪文としてはこの三つが主要なものである。(中略)


第四以降の条件は文章の具体的な現象を問題にしている。混乱した文章、堅すぎる調子、あいまいな表現、誤解されやすい表現、気どったためにわかりにくくなるひとりよがりな書き方、といった比較的細かい条件がが並んでいるのである。

・確実にあいまいになる表現をとりあげておく。それは「・・・・・・ように・・・・・・ない」という構文だ。「彼は彼女のように成績がよくない」などと平気で書く人がいる。(中略)

彼女は成績がよいが、彼が成績がわるい(中略)
二人の成績を比べれば彼のほうが彼女より劣る(中略)
彼と彼女はそろいもそろって成績がよくない(中略)

読み手にとっては三とおりの解釈が可能なやっかいな表現なのである。


そこを明確に区別するためには、それぞれ
「彼は彼女と違って成績がよくない」
「彼は彼女ほど成績がよくない」
「彼も彼女と同じ、成績がよくない」というふうに言い換える必要がある、


・新聞記者の場合は教訓として、材料の八割は捨てろというのがあるという、せっかく取材したのだから、あればあるだけ利用したいのが人情であろう。が、それでは質の高い記事にはならない。八割を捨てるというのは、逆から見れば、使う材料の五倍は集めなければならないということだ。多くのなから、ほんとうに価値の高いものを選びだすからこそ、充実した記事になるのだろう。


・名文を読むことによって自然に文章の勘どころをつかむようになる。悪文ばかり読んでいると表現の機微にうとくなりやすい。


●書籍『悪文~裏返し文章読本』より
中村 明 著
筑摩書房 (1995年5月初版)
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