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岡田尊司 氏 電子書籍『人を動かす対話術~心の奇跡はなぜ起きるのか』(PHP研究所 刊)より

このページは、電子書籍『人を動かす対話術~心の奇跡はなぜ起きるのか』(岡田尊司 著、PHP研究所 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・勉強が苦手な非行少年のケース(中略)

学習にはあまりこだわらずに、本人が興味をもつことや得意なことを探して、それに取り組ませることと、問題点を指摘するよりも良い点を指摘するように努めてみることを提案した。


・生真面目な人ほど、問題点があると、それを指摘して正さねばと思いがちだが、それではうまくいかないから、挫折と転落を重ねているとも言える。こちらの期待や価値観で相手を動かそうとしても、動かないのである。その場合に、こちらの関心ではなく、相手の関心がどこにあるかに意識を切り替える必要があるのだ。


・自分で自分の答えを出せるのが、遠回りのようでも結局一番近道なのである。実際、良い教師とか優れた親は正解を与えない。ただ、答えを見つけ出そうという過程を上手に助ける。そして、本人に気づかせる。こうして主体性が育っていく。


・変化を引き起こす三つの要素

変化を引き起こすうえで重要な三つの要素を、ロジャースは、「正確な共感性」「非支配的な温かさ」「誠実さ」だと述べている。こうした三つの要素で表されるような受容的な雰囲気が、人の心を解きほぐすのであり、変わろうとする意欲を生じさせるためには必要なのである。


・質問は、話を深め、整理するだけでなく、気づきを与え、変化を引き起こすうえで強力な武器となる。質問によって豊かな可能性や変化を引き出すためのポイントは、オープン・クエスチョンを用いることである。オープン・クエスチョンは、「どのように」「どうして」「どんなふうに」といった、広がりをもった質問である。


・否定されて育った人は伸びず、能力を半分も生かすことができないケースが多く、肯定されて育った人は、もてる力よりも大きな結果を残しやすいというこである。しかし、思い入れが強すぎてそれが誘導になってしまうと、せっかくの肯定的な評価も将来の行き詰まりを用意することになってしまうかもしれない。あくまで主体性を尊重しながら、肯定を与えていく


・対話には二つの大きな働きがあるいことを、先に述べた。一つは、安全感を高めることであった。そのために有効な対話の技法として、相手に敬意を払い傾聴すること、関心を共有すること、肯定すること、共感しそれを表現することをあげた。


しかし、対話には、もう一つの大切な働きがある。それは、悩みや対立といった問題を解決し、新たな変化を生み出すということである。


・問題を解決する一番の近道は、問題を解決したらどうなるかを思い描き、その状態のとき何が変わっているかを明確にすることだ


・達成可能なゴールを定めることである。進歩するにつれてゴールは変わってもいい。

「あなたが、いま一番求めていることは何ですか?」
「一年後、あなたはどうなっていたいですか?」
「この話し合いを通して、あなたは何を掴み取りたいですか?」
「そのために、今すぐあなたが実行できることはなんでしょう?」

こうした質問を随時行うことでゴールを明確にし続けることが、解決構築を促すのである。


・自分の視点から考えるだけではよい発想が浮かびにくいものである。そこで、一ひとり加えて次のような質問をしたら、どうだろうか。「今の状況を改善するには、どうしたらよいか、仮に周りの人に聞いてみたとしたら、どんな答えが返ってくると思いますか?」


・スケーリング・クエスチョン

前向きに解決に向かおうとする気持ちを拾い上げ強化するうえで、頻繁に用いられ、重要な技法となっているのがスケーリング・クエスチョンである。これは後の動機づけ面接法になどにも採り入れられている。(中略)


0から10の間のどれくらいの段階であるかを尋ねるのだ。(中略)


2や3だという答えが返ってきても、そんなに低いのかという見方は決してしない。1ではなく、どうして2や3なのかということを、むしろ驚きをもって受け止め、「0や1ではなくて3なのは、どうしてですか?」といった質問で、本人のなかの解決を求める気持ちを語らせ、強化する。


・悩みの根底には両価的葛藤がある(中略)

悩みは迷いの根底には、どちらを選ぶべきかというジレンマ(両価的葛藤)が、つきものなのである。この両価的葛藤こそ、悩みの本質とも言えるだろう。深い悩みほど、この葛藤は強まるのである。両価性とは、反対の気持ちを同時に抱えた心的な状態である。妻(夫)を愛する気持ちと愛人を愛する気持ち、そんな相反する気持ちで揺れるのは、人間という生き物である。


・人間の心には、何かをしたいという気持ちとしたくないという気持ちが同居しているし、ある人を好きだという気持ちと嫌いだという気持ちが同居することも珍しくない。変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちが同居していることも、自分でできるという気持ちと自分には無理だという気持ちが同居していることも、ごく当たり前なのである。


・変わろうとしないのは、変わりたい気持ちと変わることに抵抗する気持ちとが、すくみ合って身動きが取れなくなっている状況だと言える。こうした状態に陥ると、変われないままに時間だけが無駄に過ぎていってしまう。


・学校に行くべきだ(中略)

もっと悪いのは、「行きたくない」と抵抗しているのに、「何を言っているんだ。勉強するのが当たり前だろう」などと言ってしまうことだ。そんなことを言えば、ますますモチベーションは下がってしまう。抵抗に抵抗することは、ますます事態を悪化させるのである。


・一見、両価的葛藤と思えることが、本当の両価的葛藤ではないことが少なくないということだ。たとえば、子どもが学校に行けないという場合、行きたい気持ちと行きたくない気持ちのジレンマを掘り下げていくと、実は、授業中に先生の質問に答えられなくて、みんなから笑われたことがあり、また笑われて傷つくたくない気持ちと、以前の自信を取り戻したい気持ちの間のジレンマが起きていたりする。この場合の真のジレンマは、学校に行く、行かないのではなく、行きたいが傷つきたくないというジレンマなのである。行く、行かないのところでいくら働きかけてもあまり有効ではない。


・「~という気持ちを、~という気持ちの両方があるんですね?」と尋ねながら、「他にはどんな気持ちがありますか?」と尋ねてみるのもいいだろう。両価的といっても、単純に二つの気持ちだけではないことも多い。これらの気持ちを、現状を変えて前進しようとする気持ちと、抵抗しようとする気持ちに分けて整理していくとよいだろう。


・ひきこもっている人であれば、社会に出たい気持ちと出るのが怖い気持ちの両方があって当然である。出ようとすればするほど、怖い気持ちのほうが強まってしまうことや、その両方の気持ちの間で揺れ動いてしまうことを受け止め、そうした状態について存分に話せるようにすることが大事なのである。


・スケーリング・クエスチョン(中略)

半分を超える数字を言う人は、すでに変わりたい気持ちがかなり高まっていることを表している。そのときは、かなり高いということを評価して、「そんなに変わりたい気持ちが強くあるんですね。そう思うようになったのは、どうしてですか?」と、掘り下げると、さらに変わろうとする気持ちを強めることにちながる。


・言葉が変わると人は変わる(中略)

その人が自分で考え口にしているように人生はなっていくものである。アルコール依存症や薬物依存症の患者を対象にした研究によると、その人が回復するかどうかは、自分に回復する見込みがどの程度あると思うかという質問に対する本人自身の答えがほぼ正確に予測していたという。実際、変わろうという決意をはっきりと口にしていない人が変わることは極めて稀なのである。


・プライミング操作は修正を容易にする

塗料の下塗りをすることをプライミングという。下塗りをしておくと塗料のつきがよくなるように、あらかじめ下ごしらえをしておくことで、後の操作がより効果的になるということはさまざまな現象で見られ、プライミング効果と呼ばれる。(中略)


対話において、プライミング操作はしばしば用いられる技法である。たとえば一番身近な例で言えば、「怒らないで聞いてくれる?」とか、「冷静に聞いてほしいことがあるんだ」といった言い回しである。(中略)

ショックなことを言われるということを予想し、冷静に受け止めることにつながりやすい。


・人はさまざまな「ねばならない」に縛られている。この縛りがその人を落胆させ、苦しめる。(中略)そうした「ねばならない」に対して、決してそんなことはない、どんな生き方も可能だし、期待通りにならなかったと言って、何一つあなたの価値が下がるわけではない。


・仕事がつらくなって辞めたい気持ちが兆している人に対して、「辞めたらダメだよ」と言って説得しようとすることは、辞めたい気持ちを逆に強めてしまうが、「嫌だったら辞めたらいいじゃない」とか「いつでも辞めたらいいよ」と言うと、辞めるのが惜しい気持ちや続けたい気持ちのほうが強化されて、案外仕事が長続きすることにつながる。


●電子書籍『人を動かす対話術~心の奇跡はなぜ起きるのか』より
岡田尊司 著
PHP研究所 (2012年1月初版)
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