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書籍『秋元康の仕事学』(NHK「仕事学のすすめ」制作班 編集、NHK出版 刊)より

このページは、書籍『秋元康の仕事学』(NHK「仕事学のすすめ」制作班 編集、NHK出版 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・企画の入り口(中略)

僕のやっている企画とは、「あるある話」をすることと似ています。例えば僕が、「本屋さんで、なぜ人は、読んだらすぐに捨ててしまう雑誌なのに、一番上からではなく、真ん中辺の雑誌を手に取るんだろう」と言います。すると、みんなが「ああ、あるある」と頷く。こうした「あるある話」をするには、面白いネタに気づくという“視点”が一番大切なのです。つまり、企画の入り口というものは気づくことから始まるのです。


・想像力を膨らませる(中略)

作詞をするにあたって、僕がジェロを素材として魅力的に感じたのは、彼は黒人の青年で、ラップやR&Bを歌いそうなイメージなのに、演歌を歌うという、このギャップがまずありました。ですから、その魅力を引き出すには、詩の中でも、もっとこのギャップを広げて見せたほうがいいと考えたのです。


・僕は日常的にさまざまな気づきをリュックサックにどんどん入れて、必要なときに取り出すという作業を行っているのです。重要のは、リュックサックに入れるときや、あるいは取り出すときに、その素材に対してどれだけ想像力を働かせて拡大できるということ。そこにこそ、企画を生む秘訣があるのです。


・いわゆるネタ帳というものは持つ必要はありません。なぜなら、メモをしなければ記憶からこぼれ落ちてしまうようなことは、後日考えれば、たいして面白くないからです。(中略)


まさにプロはみんなが「なるほど。そういう言い方はあるよね」ということを言えるかどうかなんですね。


・僕がなぜ分析をしないかというと、結局、今、われわれの目の前にあるものは、すべて、過去のものですよね。映画であれば1年前、2年前、3年前につくられたものですし、ヒット曲でも、半年前、1年前につくられたものが、世の中でヒットしているので、そこにディレイがあるわけじゃないですか。ですから、それを、今リサーチしても意味がない。


・企画(中略)どうやって出せばいい(中略)?(中略)


日常の中で何を見ているかです。つまり、企画というのは、生み出すものではなくて、気づくことだと思うんですよ。


・ヒット(中略)

記憶に残る「幕の内弁当」はないんですよね。いろいろなおかずがあると記憶に残らないんです。「あの幕の内弁当は美味しかったな」とはならないけれど、「あのうなぎ弁当美味しかったな」とか「あの麻婆豆腐弁当は美味しかったな」っていうのは覚えているんですよ。(中略)


だんだん中庸なものができてしまう。やっぱりヒットを生み出そうと思ったら、虫眼鏡で太陽光線を集めるように、ぎゅっとそのターゲットなりを絞り込まないと、発火しない


・最初からメディアが決まっていて、そこに食材を集め、料理をつくろうとすると、どうしてもつくられる企画も限られてしまいます。(中略)つくりたいものによって、テレビなのか、映画なのか、あるいは小説なのかを決めていくというやり方が理想といえます。


・劇場も、当初は渋谷や青山あたりを探していました。何も決めていなかったんですね。そんなときに、たまたま秋葉原に空いているところがみつかって、そこをAKB48の専用劇場とすることにしました。


・予定調和を壊す(中略)

「たぶん、こうなるだろうな」というものを、誰もわざわざ見ようと思いません。反対に言えば、その予定調和が裏切られたときに、人は面白いと思うのです。つまり、自分が見たことがないものだから、ハッとするわけですね。


・エンターテインメントの基本というのは、全体像を見えにくくすることなのだと思います。つまり、「見てみなければわからない」と思ってもらえるものを提供できるのが一番いいということになります。


・人の興味を持ってもらうには、どこまで意外性が持続するかが肝なのです。ヒントが出たときに、あえて壊していくのは、「もっと知りたい」と思ってもらえるような魅了を出していくためです。


・映画の監督をやらせて頂いたときの話です。(中略)お洒落な部屋の真ん中にとてつもなく邪魔な柱をつくってもらったんです。さらに、もうひとつ予定調和は壊したくて。「できるだけ部屋に似合わないような、赤い椅子を持ってきてほしい」とも頼みました。(中略)


実際の生活では、完璧なものというのはないと思うんですね。それがリアリティということ。だからこそ、そういったところに、人間的な魅力が垣間見れたりするわけです。


このように、予定調和を壊すということは、単に、奇をてらうということではありません。大切なのは、今まで普通だと思われてきたものを根本から疑い、結果的に、人々の心に響くものをつくっていくことなのだと思います。


・勝間和代

いい企画やヒット商品をつくるときに、マーケティングは役に立たないというのは、なぜなんでしょうか。


秋元康(中略)

マーケティングをすればするほど、みんなが望むものを、望むようにつくろうとするので、予定調和が生まれてくるわけじゃないですか。(中略)


例えば学校の校歌を一般公募すれば、多くの人が書いてくるのは、「清く正しく」とか、「季節の風が」とか、「希望の光」とか、校歌にふさわしいようなキーワードばかり出てくると思うんです。たぶん1000通の応募があったときに750通くらいはこれが並んでいるんですね。ですから、僕が応募するとしたら、まずはそれらを外します。


・勝間和代(中略)

アイドルのポスターをレントゲンにしようという発想は、どうやって登場したんですか?


秋元康


まず当時、「アイドルのコンサートのポスターは、なぜ顔写真ばかりなんだろう」ということに付箋が貼ってあった。(中略)

あとは、その頃たぶん、たまたまお医者さんに行って、レントゲン写真をライトボックスに貼りつけて、見せられるわけじゃないですか。レントゲン写真の左下に、患者さんの名前が入っているけれど、「これ、名前が入ってないと、誰か誰だかわからなくなるだろうな」と、そこに付箋が貼ってあったと思うんです。(中略)それが組み合わさって、顔ではなく、レントゲン写真という発想になった(中略)


すごく盛り上がりましたよね。ポスターを盗られるくらい。


・人の信頼を得るには、コツコツと地道に実績を積まなければいけません。企画を通そうと思ったら、相手を無理強いして説得しようと思うのではなく、実績を少しずつ積み上げて信頼を得たほうがいいのです。


・短所を隠さない(中略)

マイナス面というのは、それを+に変えることもできるんです。(中略)僕がプロデュースした請求書がのドリームキャストのCMは、新製品を売り出すタイミングだったのですが、CMの中で、子どもたちに「セガなんてだっせ~よな、プレステのほうが面白いよな」という台詞を言わせました。ソニーのプレイステーションが大旋風を巻き起こしていた当時の世間の気持ちを素直に表現したのです。(中略)


子どもたちに言われることによって、「わざわざライバル会社のものを誉めるくらいだから、次は相当自信があるんだろうね」という風に受け取る側は思う。それはお汁粉にひとつまみの塩を入れれば甘味が引き立つのと同じで、マイナス部分が入ることによってプラスの部分が出てくるのです。


・自分の色を持つ(中略)

多くの人はそのときに正解を他人に求めてしまいがち(中略)

本当は10人いれば10人の得意料理があるんですよ。自分が得意なのはインド料理なのに、隣のイタリアンた日本食を見て、「ああいう風にやらないとだめなのか・・・・・・」と落ち込む必要は全くないんです。


・みんがが「いいんじゃないの?」という平均点の企画ほどつまらないものはない


・ぶれない軸が信用につながる(中略)

例えば薬にしても、「こういう効能があります」「こういう副作用があります」と言うから、効くんだと思いますけど、これが「万能で何でも効きますよ」と言われると、「本当ですか?」と思いませんか?


・自然体で生きる(中略)

10代から放送作家をやってきたときに、たまたま「詩、書いてみないか?」と誘われたことがきっかけとなっている。目の前のことを出てきたことを面白いからやってみようと、それを続けてきて、気づいてみたら今の自分があったんですね。「こういう自分になりたい」というのが、僕にはありません。


・立ち止まらない(中略)例えば僕が小説で行き詰まったとしても、うーん、と考えたまま1週間過ごすことはありません。この途中までできた小説を捨てて、全然違うものを書き始めるんです。あるいはこの仕事をいったんやめて、全く違うことをやり始めます。逃げてもいいんですよ。そのときに、人生において大事なのは「戻ってくる力」なのです。


●書籍『秋元康の仕事学』より
NHK「仕事学のすすめ」制作班 編集
NHK出版 (2011年5月初版)
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