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丸山浩路 氏より (心理カウンセラー)

このページは、本や講演、セミナーなどから、教え学んだこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ転載しています。
      

・人間にとって最高の栄誉ある喜びとは

 ひとりっきりで生まれ、
 ひとりっきりで死ぬ。
 ひとりっきりとひとりっきりの谷間、
 “ひとりぽっち”をうずめるために、
 ひとりひとりが一緒に生きていく。
      
   
・空気が動くと感動が生まれる

特急バスが発車して間もなく、前方座席でなにやらトラブルが起こりました。「なんとか峠の手前のホロ町で降ろしてもらえんかのう」とガイド嬢に声をかけているのは一人のおじいちゃん。ガイド嬢は困った表情でこう話しています。「お客様、特急バスは決められた所にしか、お停めできないことになっているんです。それ以外の所でお停めして、もし降りられたお客様に万一のことがありますと大変なことになります。ですから規則でお停めすることはできないことになっております。申し訳ございません」

おじいちゃんは座席つかまりながら立ち上がり、さらに頼み込みました。「このバスが特急バスと知らんで乗ってしもうたんじゃ。ホロ町にみんなが集まっとっての。時間までにワシが行かんとみんなが困るんじゃよ。なんとか停めてもらえませんかのう」ガイド嬢はすまなそうに言いました。

「おじいちゃん、ごめんなさい。安全な場所にお停めして降りていただくことはできるのですが、そうするとほかのお客様から『じゃあ、あそこに停めて』とか『私はここで降ろして』というご依頼があったときにお断りすることができなくなってしまうんです。本当にすみません」

おじいちゃんは途方に暮れて、独り言のようにつぶやきました。「峠を越えた所で降りたんじゃワシのこの足では歩けんし、ホロ町の手前で降ろされたんじゃ間に合わんし・・・困ったのう、困ったのう・・・」

社内の鉄棒につかまったまま、おじいちゃんは少し震えているようでした。そんな姿を見ていると、同じバスに乗っていた私ものんびりと車窓の風景を楽しんでいるわけにいかなくなりました。周りを見渡すと、ほかの乗客も心配そうにおじいちゃんを見つめています。

(なんとかできないものかなぁ。かといって窓から放り出すわけにもいかないし・・・。それにしてもガイドさんもガイドさんだ。おじいちゃんがあんなに困っているのに、運転手さんと話し込んだりして・・・。あっ、あそこに見えてきたのが峠かな。するとこの辺りがホロ町か)

そう思ったときでした。それまで運転手さんと話し込んでいたガイド嬢がひとつうなずいたかと思うと、客席に向かって姿勢を正し、こう話し始めたのです。 「お客様に申し上げます。当バスはこれより峠に差しかかりますので、念のためブレーキテストを行います。 ブレーキテスト、スタート!」  

特急バスは除々に速度を落とし、静かに停車しました。ガイド嬢はさらに言葉を続けましす。「ドアの開閉チェック!」乗降ドアがスーッと手前に開きました。するとガイド嬢はおじいちゃんに向かって目で合図し、右手を小さく前に差し出したのでした。

おじいちゃんはハッと気がついて、急いで荷物を持ち、乗降口に進みました。そしてステップの前でクルリと振り向くと、運転手さんとガイド嬢に手を合わせ、何度も何度も頭を下げました。おじいちゃんが降りると、ゆっくりとバスのドアは閉まり、ガイド嬢の明るい声が車内に響きました。
「ドアの開閉チェック完了。ブレーキテスト完了。発車オーライ!」

エンジン音とともにバスが再び走り始めました。と、期せずして車内には大きな拍手が沸き起こりました。ホッした表情でうれしそうに拍手を送っている人、なかには涙ぐんでうなずいている人もいます。走りだしたバスに向かって、両手を合わせ頭を下げているおじいちゃん。その姿は次第に遠ざかり、やがて視野から消えていきました。

この出会い。見事に空気が動いていました。空気が動くと出会いが生まれます。感動が生まれます。そして、そういう出会いに巡り会う人はやさしくなります。人生が豊かになります。

 体を動かすと流れてくるのは、汗。
 心が動くと込み上げてくるのは、涙。
 空気が動くと生まれてくるのは、出会い。
   
        
・コギャルのひと声が出会いの輪を生んだ

ある日、東京の渋谷駅の改札で人を待っていると、「丸さーん、丸さーん」という女の子の声が聞こえてきました。びっくりして声のするほうを振り向くと、そこには5人の女子校生の姿。そう、いわゆるコギャルと呼ばれる女の子たちでした。

彼女たちはタッタッタッと私のほうに駆けてくると、こう話かけました。「手話ニュース、見てるよ。みんなは普通の手話やってるのに、丸さんだけは踊ってやってるの。あれ、面白いね。TBSの『愛していると言ってくれ』も、丸さんが手話の振り付け、やってるんだよね。ドラマの最後に名前が出てたよ。トヨエツもカッコイイけど、手話もとても素敵だった。手話って何だか面白そうだね」

最初は何事かと驚いた私も、コギャルたちの言葉についうれしくなりました。「そう、見てくれてるのか。ありがとう」 ここでドラマをご存知ない方のために、少し説明させていただと、TBSテレビのドラマ『愛してると言ってくれ』は、豊川悦司さん演ずる耳の聞こえない青年と、常盤貴子さん演ずる女優志願の女性との切なくも美しいラブストーリーでした。

人気グループ、DREAMS COME TRUE(ドリカム)が歌った主題歌『LOVE LOVE LOVE』も心に響く非常に素晴らしい曲で、大ヒットとなりました。このドラマや歌の人気もあって、広く一般の人にも手話の魅力が伝わり、かつてない手話ブームが巻き起こりました。

数年前のことです。あのとき、トヨエツさんや常盤貴子さんの手話のコーディネイトを担当させていただいたのが、この私だったのです。

さて、渋谷のコギャル5人組との出会いに戻しましょう。彼女たちは私に手話ニュースやドラマの感想を聞かせてくれた後、大胆にもこんなことを私に要求してきたのでした。「何かやって」「えっ、何かって・・・ここで手話を?」「うん、やって。何かやって。何か見せて」

渋谷の改札。たくさんの人が行き来している混雑のど真ん中。こんなところで手話を?しかし、コギャル5人組は真剣な眼差しで私をじっと見つめています。決してふざけているわけではないのです。(これも一つの出会いだな・・・)

そう思った私は、「よしっ」と心の中でひとつうなずき、渋谷駅での手話パフォーマンスライブに踏み切ることにしたのです。「じゃあ、やってみよう!」出し物は先ほどご紹介したドラマの主題歌、ドリカムの『LOVE LOVE LOVE』。私は歌詞に手話を振り付け、歌い始めました。

♪ねぇ どうして すっごくすごく好きなこと
 ただ 伝えたいだけなのに ルルルルル
 うまく 言えないんだろう・・・

驚いたことに、私が手話をつけ歌いだすと、コギャルたちも一緒に歌を歌い、そして見よう見まねで手話を振り付け始めたのです。すると、そこら辺にいた通りすがりの人が、なんだなんだと集まってきました。見る見る間に200人くらいの人が私たちの周囲を取り囲み、渋谷駅の改札には大きな人垣ができてしまったのです。

誰もが私たちの手話パフォーマンスを食い入るように見つめていました。茶化したり、ヤジを飛ばす人は一人もいません。そうして『LOVE LOVE LOVE』を歌い終わると、駅構内に響き渡るようなものすごい拍手が沸き起こったのでした。

通りすがりの見知らぬ人たちが、手話を通して確かな感動を共有できた。出会いの輪が生まれた。鳥肌が立つような素晴らしいステージでした。

顔を上気させ、興奮を隠しきれない様子のコギャルたち。と、その中の一人がまじめな表情でこんなことを言いました。「手話をすると、なんか体が熱くなってくるね。なんだか自分がやさしくなったみたい。手話って素敵だね。私たちも手話やりたい。ね、やろうよ」「うん、やろう!」「やろうよ!」

口々にそう言いながら彼女たちは全員でうなずき合っていました。そのとき彼女たちの目のなんと輝いていたこと。表情のなんとイキイキしていたことか。5人のコギャルとの出会い。その出会いが生んだ渋谷駅での感動の手話パフォーマンス。今でも思い出すと、心がジーンと熱くなってきます。
   
     
・人生はライブ、演出するのは自分

心の弁当

その日の電車はさほど混んでいませんせした。「私」リハビリセンターに向かって、乗り慣れたいつもの車両、いつものドアから車内に乗り込みました。

しばらくすると「一部の車両の扉が故障して開閉できません。恐れ入りますが、ほかの扉をご利用ください」との車両放送。しかし、「私」にはそれがどの車両なのかわかりませんでした。いくつかの駅を通り過ぎ、降りる駅が近づいてきました。そして、座席から立ち上がろうとしたときです。

「よろしかったら私の肩におつかまりになりませんか」「エッ!?」「いえ、差し出がましいとは思ったのですが、先ほどから車内放送されている故障したドアというのは、この車両のことなんですよ。おそらくいつも決まったドアから降りられているのだろうと思いましてね。そのドアが今日は開かないんです。よろしかったら肩におつかまりください。故障していないドアのほうにご案内しますから」「あぁ、それはどうも」その言葉に甘えて肩をお借りしました。

やがて電車はスピードを緩め、ゆっくり止まりました。「私」はその男性に導かれ、いつもとは違ったドアのからプラットホームに足を踏み出しました。「本当にありがとうございました。助かりました」そうお礼を言って歩き始めようとすると、今、降りたばかりの電車からかわいい女の子の声が聞こえてきました。

「あの人、お父さんのお友達なの?」「そうだよ、あの人はお父さんのお友達だよ」肩を貸してくれた男性の声でした。出発を告げるチャイムが鳴ってドアが閉まり、少しばかりの風を巻き起こして電車が次の駅へと去っていきました。

私は心の中で、さっき耳にした言葉を繰り返しました。「あの人、お父さんのお友達なの?」「そうだよ、あの人はお父さんのお友達だよ」お父さんのお友達、友達・・・・・。なんだかくすぐったいような、温かい響きが残っていました。「私」はこのとき、初めて駅の階段を一歩一歩踏み締めて上がっていくことができました。

そんな母親を見て、子供があるとき、聞いてきたそうです。『お父さんにそのお弁当の色は見えるの?』と。そのとき、女房はこんなふうに息子に答えたそうです。『お父さんには形のあるものは見えないけど、私たちに見えないもので、お父さんに見えるものがあるのよ。心とか空気とか・・・・。

そして女房の『お父さんには心が見える』という言葉に支えられて、なんとかやってこれたんです。そして、初めて気づいたんですよ。見えなくなって見えてくるものがあるんだな、と言うことに。そう、見えなくなって見えてくるものが確かにあるんですねぇ」

電車の男性の心温まるやさしさ、そして彼の奥さんの深い愛に根ざした心遣い。なにより、奥さんの作られる弁当は、これ以上ない素敵な「演出」と思いませんか。
        
            
・生きることは変わること

 心が変わると人生が変わる

 そう念じ続けた私はひとつ大きく深呼吸して手話を振付けて、『ニ度とない人生だから』(坂村真民・作)の詩を語り始めました。

 ニ度とない人生だから
 一輪の花にも
 無限の愛を
 そそいでゆこう
 一羽の鳥の声にも
 無心の耳を
 かたむけてゆこう

 二度とない人生だから
 一匹のこおろぎでも
 ふみころさないように
 こころしてゆこう
 どんなにか
 よろこぶことだろう
 
 二度とない人生だから
 一ぺんでも多く
 便りをしよう
 返事は必ず
 書くことにしよう

朗読が進むにつれて、若者たちに確かな変化が現れ始めました。講堂の空気が動き始めたのです。拳をギュッと握り締める若者、伏せていた眼差しを上げてキッと見つめる若者、落としていた肩を張って背筋をピンと伸ばす若者・・・・・空気がどんどん私に集中してきます。

 二度とない人生だから
 まず一番身近な者たちに
 できるだけのことをしよう
 貧しいけれど
 こころ豊かに接してゆこう

 二度とない人生だから
 つゆくさのつゆにも
 めぐりあいのふしぎを思い
 足をとどめてみつめてゆこう
 
 二度とない人生だから
 のぼる日しずむ日
 まるい月かけてゆく月
 四季をそれぞれの
 星々の光にふれて
 わがこころを
 あらいきよめてゆこう

 一週間『おはよう』を言い続けてみろ。おふくろさんの肩をもみ続けてみろ。それがお前の習慣になるんだよ。そして、習慣が変わると人生が変わるんだ。どうしてかと言うと、習慣が身につくと、そうゆう人格の持ち主に見られてくる、思われてくるからだ。

友達は言うだろう。『アイツ、変わったぜ。自分から挨拶するようになったぜ』って。おふくろさんも言うだろう。『あの子は変わりました。以前は私に手を上げていたのに、今では肩をもんでくれます。やさしい子です』と。つまり、お前は習慣にふさわしい人格の持ち主に思われてくるんだ。そして、人格が変わると出会いが変わるんだよ。

  
 心が変わると態度が変わる
 態度が変わると行動がかわる
 行動が変わると習慣が変わる
 習慣が変わると人格が変わる
 人格が変わると出会いが変わる
 出会いが変わると運命が変わる
 運命が変わると人生が変わる
      
       
・「私、こっちの耳は聞こえるんです」

「丸山先生のお話、とても感動しました。勇気が出てきました。ありがとうございました」ある日の講演が終わった後のこと。一人のご婦人が高校生くらいのお嬢さんを連れて、楽屋にお見えになりました。ご婦人はは少し顔を紅潮させて、私にそうおっしゃると、意外にも次のようなこと切りだしました。

「先生、私、こっちの耳聞こえないんです」私はそれを聞いて、ちょっと憤然とした気持ちになりました。そして、厳しい言葉だとは承知の上で、彼女にこう言ったのでした。「お引き取りいただけますか」ご婦人はエッと驚いた表情で私を見つめていました。

まさかそんな言葉を投げかけられるとは思ってもいなかった・・・・・。心の動揺がこちらにも伝わってくるようでした。数秒ほどの間があったでしょうか、ご婦人は再び話始めました。「先生はあれだけの講演をなさる方ですから、このようなハンデを持っている者にもっとご理解があると思いました。耳の聞こえない人の立場をわかってくれていると思いました。だから、先生には人には言えないことも申し上げたのです。それなのに『お引取りください』とは・・・・・。あまりにひどいではありませんか」

私はご婦人の言葉に対し、少々強い口調でこう答えました。「ひどいのはあなたのほうですよ。なぜそんな言い方をするのですか」「だって、こっちの耳は聞こえないんですから・・・・・」私は聞き返しました。「そっちの耳は聞こえない?じゃあ、もう片方の耳はどうなのですか?」「聞こえます」

「では、なぜそれを先におっしゃらないのですか?『こっちの耳が聞こえない』とおっしゃったときのあなたの暗い表情。沈んだ眼差し。そのマイナスの気持ちを初対面の私にぶつけて、あなたはうれしいですか」
「・・・・・」「なぜ失ったものを数えるのですか。どうして残ったものを素敵だとお思いにならないんですか。

『こっちの耳が聞こえない』。そうあなたに言われて、私はどう答えればよいのでしょうか。かわいそうですね、お気の毒ですね、大変ですね・・・・・。そうお答えすればいいのですか」ご婦人はやっと口を開き、「じゃあ、私は何と言えばよかったのでしょうか」

私はご婦人の目をまっすぐ見つめながら、言いました。「『私、こっちの耳は聞こえるんです』。そうおっしゃってください。そうすれば、私だってこう答えられるじゃないですか。『ああ、それはよかったですね。どちらかの耳が聞こえれば十分ですよ。そっちの耳が聞こえて本当によかったですね』と。

そう言うことができれば、私だってハッピーな気持ちになれます。あなたと笑ってお話ができるじゃありませんか。あなたはこっちの耳が聞こえないのではない。こっちの耳は聞こえるんですよ」 私がそう話すと、それまで私たちの会話を黙って聞いていたお嬢さんが、突然、ご婦人に向かって、声を上げました。
「そうよ、ママ。こっちの耳は聞こえるのよ!」

何か新しいことを発見したかのように目を輝かせているお嬢さん。その言葉を噛み締めるように目を閉じていたご婦人。やがて、唇を震わせて小さい声でつぶやきました。「丸山先生、こっちの耳は聞こえるんです・・・。こっちの耳は聞こえるんです・・・」

そうおっしゃったときのご婦人のなんとすばらしい表情。キラキラした瞳。「私、こっちの耳が聞こえないんです」そう言ったときの暗い沈んだ表情はすっかり消え去り、明るい光に満ちた顔に変わっていたのです。

「ママ!今のママの表情、これまでの中で一番素敵!」そう言ってご婦人に抱きついたお嬢さん。頬に涙をこぼし、顔をくしゃくしゃにして抱き合う二人。しかし、母と娘は声をあげて泣きながらも、笑顔にも似た実にさわやかな表情をしていました。

私の胸にも熱いものがジンと込み上げてきました。そして、心の中で思わずこう繰り返していました。
「よかったね。本当によかったね、お母さん。こっちの耳は聞こえるんだよ、聞こえるんだよ・・・」

「こっちの耳が聞こえない」と言い続ければ、「聞こえない」というマイナスの影に包まれた表情になってしまいます。「こっちの耳が聞こえる」と言い続ければ、「聞こえる」というプラスの光に包まれた表情になってきます。

だからこそ、失ったものより、残されたものを大切にしようじゃありませんか。自分に与えられた″波の形″を受け止めようじゃありませんか。そうすれば、マイナスもプラスに変えていくことができます。自分自身を変えることができるのです。いえ、自分自身だけでなく、周りの人間の心までも変えていくことができるんです。 
   
   
・43歳で人生を生き直す

私は従兄弟に何度も心の中で語りかけました。そして、ふいに思ったのです。そう言う自分はどうなのだ?お前は今、死んでも悔いの残らない生き方をしているのか?本当にやりたいことをやっているのか?

亡くなった従兄弟への問いかけが、そのまま自分自身の心へと跳ね返ってきたのでした。私は本気で生きているのだろうか。私は生きていて、いったい何を残せるのだろうか。

そう自問自答したとき、愕然としました。いつの間にか、本音と建て前を使い分けて生きていた自分にハタと気づいたからです。
    
    
・生きていること自体が奇跡なんだ

ご両親は楽器店やデパートをくまなく歩きました。唇だけで演奏できる楽器を探し回りました。しかし、フルートや縦笛は手や指を使わなければなりません。手も指も使わず、唇だけで吹ける楽器はどこにもなかったのです。

そこで、ご両親は決心しました。「ないなら、自分たちで作ろう」と。そして、何十回、いえ何百回も失敗を重ねながら、ようやく作り上げた楽器、そうれかワンダーリードだったのです。

ワンダーリードはまさに唇ひとつで演奏ができます。噛み締める強さ、弱さで音の高低を調節できる仕組みになっているのです。
 
卓也君はワンダーリードに私たちへの一番大切なメッセージを残していったのでした。そう、彼は私にこう言ったことがあるのです-。

「丸山先生、手が動く、足が動く、目が見える、耳が聞こえる、自分の頭で考えることができる・・・。当たり前じゃないよね。奇跡だよね。自転車に乗ったり、かけっこしたり、ボールを蹴ったり、バットを振ったり、泳げたり、ピアノを弾けたり、綱引きできたり・・・。すごいことだよね。それができるなんて、すごいことだよね。

でも、みんな、そんなこと当たり前だと思っているよ。当たり前だと思っちゃうから、欲張りになっちゃうんだ。欲張りになっちゃうから、やさしくなくなっちゃうんだ。丸山先生、全国、回っているでしょ。みんなに言って。手が動く、足が動く、目が見える、耳が聞こえる、自分の頭で考えることができる・・・。それだけでもすごいぞって。それで十分じゃないか、みんなに 言って。

生きている。それだけでどんなに素晴らしいことか。それをみんなに伝えて・・・」

卓也くんがくれたワンダーリードには、彼のそんな深い思いが込められていたのです。生きている、ただそれだけですごいこと、奇跡なんだと。全国各地を回るとき、皆さんの前でお話するとき、卓也君がくれたワンダーリードはいつも私と一緒です。

小さな小さなワンダーリードが教えてくれた卓也君の深いメッセージ。ワンダーリードと彼のメッセージは、私にとってもかけがえのない宝物です。
    
    
    


●本気で生きよう!なにかが変わる
丸山浩路 著
大和書房(1999/10)
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