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塩沢実信 氏より (編集者研究の第一人者)

このページは、書籍「定本ベストセラー昭和史」から、教え学んだこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ転載しています。


・ベストセラーとは、通常、短い期間に勢いよく売れ、はなやかな話題となった本を指す。


・昭和初年~ 当時、単行本は一冊二円から二円五十銭はしていた。その三、四冊分の分量が収まった本が、十分の一近い一円で買えるというわけである。(現代日本文学全集 改造社刊)東京市内のタクシーが、メーター制ではなく、どこへ行くにも一円で行けた時代であった。


・【昭和17年】軍法道部、情報局の指示以外は刊行の許されない時代


・一七年から二十年に至るベストセラー本のリストは、戦時下という特殊な事情もあって、ほとんど明らかになっておらず、部数も定かではない。


・「窓ぎわのトットちゃん」出現まで、戦後最大のベストセラーだった「日米會話手帳」は、日本の敗戦という現実を背景に誕生した。


その企画立案から、誕生までのいきさつは、いまや神話化されているが、生みの親、誠文堂新光社の創業社長・小川菊松


・昭和二十五年当時、講談社の子会社・光文社を知る者は少なく、まして神吉晴夫(カンキハルオ)という名前を正しく読める人は、出版関係者にも少なかった。


・「昭和29年」デグレ政策から資金繰りにあえぐ出版界を圧巻し、“新書ブーム”に火をつける
伊藤整「女性の関する十二章」


・「昭和35年」アッと驚くアイデア!熊位のパターンを人形に。三割が女性読者 謝国権「性生活の知恵」


・戦後、性に関する本は、おびただしく出版されていたが、そのほとんどは興味本位の欲情を煽る赤本のたぐいであった。(中略)絵とか写真をつければ、すぐに発禁になるため、活字だけの解説をこころみていた。この方法だと、性交熊位をわかりやすく説くことは、難しかった。(中略)アルファベットのついた人形の組み合わせによる「性交熊位分類表」を掲載していることだった。


・岩田一男「英語に強くなる本」
「教室では学べない秘法の公開」とあり、英語が強くなるではなく、英語に強くなる本であったところに、パンのように売れる要因の第一の条件はあった。


・神吉が編み出したメソッドは、「まず自分で企画を立てて、適切な著者を発見し、原稿の完成まで著者と苦労をともにする。そして宣伝によって、できた本の読書人口を開発してゆく」という“創作出版”だった。


・青春出版社の小澤和一(中略)「編集者の心得十カ条」

青春出版社の小澤和一は、これ以後つぎつぎとベストセラーを生み出していくが、彼がベストセラーを生み出す基本姿勢としてあげる「編集者の心得十カ条」は次の通りだった。


1、著者に依頼する前に“結論”をつけるな。理由は、著者自信の持っている創造性を、引き出す前に殺してしまうからだ。

2、純粋性を失った編集者は問題をつかむ気力はない。つまり既成概念にとらわれない純粋な見方をつねに持つことだ。

3、読者(消費者)の立場でものを見ること。これは、いつも白紙の状態でものを見、聞く“謙虚”な姿勢から生まれる。

4、本をつくるとき、最初に読者の顔が見えているか。その顔も、本を書店で手に取るときの読者の顔、財布からお金を出して買うときの顔である。

5、編集者として、自分の存在、自分の座を把握していること。これは、会社の中で、さらに出版界全体の編集者の中で、どういう存在なのか考えよということである。

6、知識の裏づけのある知恵を身につけよ。

7、前項につながるが、裏づけのない観念ほど危険なものはない。

8、目の前のすべてが素材である。これは読者のニーズをつかむ姿勢のことであり、例えば、人物はもちろん、茶わん、テーブル、名刺とそこに刷られた文字でも素材になるという考えである。非常にどん欲な考えだが、これがないことには感受性は育たない。

9、マスコミの評価より、読者の評価を優先させよ。

10、編集者は“時価”であり、その価格は時とともに変化するということ。

・ドル・ショック→オイル・ショック→用紙ショック 新刊点数の減少、火を噴く“文庫戦争”
新刊が(中略)が少なくなり、逆に減少を続けていた重版が、(中略)十二%も増える珍現象を生むところになった。


・昭和四十五年「日本人とユダヤ人」訳者 山本七平

「日本人とユダヤ人」は四十六年にかけて七十万部のベストセラーとなった。(中略)しかし、山本七平は、倉庫を兼ねたような、日当たりの悪いその一室から他へ社屋を移さなかったばかりか、まだ売れ筋にある「日本人とユダヤ人」の版権を、惜しげもなく角川書店の文庫へ譲渡してしまったのである。


・ベストセラー化を生む八つのパターン

 ここまで、昭和の半世紀にわたる各年度のベストセラーをとりあげてきて、明らかになったことは、ベストセラーには、何種類かの型がある・・・ あるいは、ベストセラー化しやすい内容があるということである。ベスト10の記録が残る戦後から、小説には触れないで、その型を抽出してみると、およそ次のようになるだろう。


(一)
「真相はこうだ!」もの。森正蔵の『旋風二十年』や、マーク・ゲインの『ニッポン日記』に見られる隠蔽された過去を暴いた内容。

(二)
セックスもの。V・D・ヴェルデの『完全なる結婚』、謝国権の『性生活の知恵』など、性生活のノウハウに切り込んだ医学書や告白もの。

(三)
人間の邂逅と別離ー愛と死に関するもの。永井隆の『この子を残して』、河野實・大島みち子の『愛と死をみつめて』など。

(四)
人生洞察もの。三木清の『人生論ノート』、大松博文の『おれについてこい!』、扇谷正造編の『私をささえた一言』など。

(五)
宗教もの。池田大作の『人間革命』、御木徳近の『愛』、高田好胤『心』など、巨大宗教団体の教祖、指導者の心の救いとなる著書。

(六)
実用もの。『日米會話手帳』、岩田一男の『英語に強くなる本』、林髞の『頭のよくなる本』、塩月弥栄子の『冠婚葬祭入門』など、日常生活の方便となるノウハウを説いた本。

(七)
占い、予言もの。黄小娥『易入門』、和泉宗章『算命占星学入門』、五島勉『ノストラダムスの大予言』、細木数子の『六占星術による運命の読み方』など。

(八)
タレントもの。森赫子『女優』、山口百恵の『蒼い時』、黒柳徹子の『窓ぎわのトットちゃん』、和田アキ子の『和田アキ子に文句あっか!』に代表される芸能タレントの内輪話。

・山口百恵「蒼い時」
出版仕掛人は、残間里江子であった。(中略)甘い言葉も、お世辞も一つも言わず、あくまで百恵自身で書くことをすすめる正攻法をかけていった。
      
     
             
●書籍「定本ベストセラー昭和史」より
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