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神吉 晴夫 氏より (書籍「カッパ軍団をひきいて」より)

このページは、書籍「カッパ軍団をひきいて」から、教え学んだこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ転載しています。


・連日連夜、推薦者を酒宴に招いているという、もっぱらの噂だった。ところが、あいにく本人の私は下戸で、一滴もたしめなかったのだから笑わせる。


・日本全国で、小学校の教師は何十万人、いや百何万人といるだろう。自分たちの新教育のタネ本が出てさえせいぜい二万部しか買う人がいない。私はこの時、小学校の先生ほど本を買わない種族はないと思った。


・日販の業務日誌が記録していた。これを記録していたのは、松本昇平という人だった。(中略)「三十年も書籍の取次、販売をやってきたが、出版社の編集部から直接やってきて、出版される本について説明を聞いたのは、はじめてである。


・岩波新書は、日本における新書判シリーズの元祖である。それに、この“新書”というネームは岩波茂男の独創(オリジナル)である。断じて岩波新書の真似をしてはならない。


・人間の欲望をテーマにして、一冊のカッパ・ブックスはできないだろうか。われわれ現代人は欲望の渦の中に巻き込まれて、日夜泣き笑いのドラマを演じている。


・昭和三十年四月、日本経済新聞社の「日経広告手帳」という雑誌から依頼を受けて、私は「ベストセラー作法十か条」なるものを執筆した。(中略)

 1、読者層の核心を二十歳前後に置く。
 2、読者の心理や感情のどういう面を刺激するか。
 3、テーマが時宜(じぎ)を得ているということ。
 4、作品とテーマが、はっきりしていること。
 5、作品が新鮮であること。テーマはもちろん、文体、造本にいたるまで、「この世でははじめてお目にかかった」という新鮮な驚きや感動を読書に与えるものでなくてはならない。
 6、文章が、“読者の言葉”であること。
 7、芸術よりもモラルが大切であること。
 8、ベストセラー読者は正義を好むということ。
 9、著者は、読者より一段高い人間ではないということ。
10、ベストセラーの出版に当たっては、編集者はあくまでプロデューサー(企画、製作者)の立場に立たなければいけない。“先生”の原稿を押し頂いてくるだけではダメである。


・カッパ・ブックスが誕生したころ、野村證券という会社の宣伝部長遠藤健一なる人から、社の広告部を通じて、私に原稿を見てくれと頼んできた。

(中略)その原稿は、はじめからしまいまで、「アメリカでは・・・・・」「アメリカでは・・・・・」と、あちらの国の経済ばかりであった。(中略)

私は、遠藤さんにいった。
「あなたは、野村證券で、十年も二十年も実務で苦労なさったのでしょう。成功した経験、失敗した経験がいっぱいあるはずだ。自分自身を語ったら、どうですか。こんなアメリカの話ばかり書いていたら、あなたの教養の広さは分かっても、読者は感動しませんよ。」と、まあ、ザックばらんにいってのけた。


・私は、本を読む人口をふやしたい。読書は楽しいものだということにしたい。


・百万部を売り上げる本は、できないだろうか。そういうことを編集会議はもちろん、部外の会合でも、しゃべった。公言しているうちに、だんだん夢が実現するようになる。公言すると、自然、いろいろと作戦をこらす。例の私の癖である。


・毎朝、新聞を開いてみて、眼につく広告の順序は、まず第一面、それから第三面、第二面、ついで第五面、第四面の順であろう。これは読者に訴える印象の強烈さの順ともいえよう。


・「ローゼンバーグの手紙」の出版のさい、篠岡昭雄が新聞広告のキャッチ・フレーズに-----「愛は美わし、愛は哀し、されど愛はかくも強し」といい、とくに「出版の印税は二人の遺児の養育資金に当てられます」と書いたひと言は、セールス・プロモーションの面において、すばらしい効果をあげた。


・いわゆる読書人は、毎朝、インキの匂いのプンプンする新聞をひろげて、第一ページの三八広告に目を走らせていた。


・本の広告費は、常識として、定価の一割にかける発行部数、たろえば、百円の定価なら、その一割の、十円に掛ける発行部数一万部、つまり、十万円が宣伝費になる。だが、これでは、せいぜい、三八広告、一紙一回の宣伝費しか出ない。(中略)


そうこう考えてくると、まず出版の企画としては、部数の多く出る可能性のあるもの。つまり、テーマのはっきりした、読者の欲求をつかんだもの、いいかえれば、宣伝する前に宣伝文句のすらすら出てくるような、セリング・ポイントのはっきりした本にしたい。すくなくても五万人の読者、できれば十万人の読書をつかめそうな企画を立てなくてはならない。


・宣伝部員、竹田吉郎のことばである。毎日のように神吉氏にぶつかり、どなられ、叱咤激励されていた。「広告は社の顔である」「スリーピング・コンシューマー(眠れる消費者)をたたき起こすのが宣伝だ。宣伝のやり方ひとつによって、ベストセラーにもなるし、売れる本をダメにもする」「自信を持って作り上げた商品(本)は、宣伝をして可能なかぎり大勢の人に知らすべきだ」神吉氏の広告・宣伝への力の入れ方は、すごかった。


・新刊後の社会の情勢やら、その本に対する世間の評判やらを宣伝広告に反映させる。つまり、宣伝広告も、一種のニュースであるという考えだ。


・新宿の紀伊国屋書店か大阪駅前の旭屋書店で、それぞれ一万部売れたら、その本は全国で百万部売れたことになるいう事実を、やがて発見することができた。


・一冊で百万部をこえた本の名前だけを列挙してみよう。なかには一冊で二百万部を突破したものも二、三冊ある。

 英語に強くなる本 岩田一男 (カッパ・ブックス)
 頭の体操 一・二各冊 多湖輝 (カッパ・ブックス)
 冠婚葬祭入門 正・続各冊 塩月弥栄子 (カッパ・ホームス)
 にんにく健康法 渡辺正 (カッパ・ホームス)
 点と線 松本清張 (カッパ・ノベルス)
 砂の器 松本清張 (カッパ・ノベルス)
 日本沈没 上・下各冊 小松左京 (カッパ・ノベルス)
 民法入門 佐賀潜 (カッパ・ビジネス)


・たとえば小説作家として、広く名前を知られている人に、じつは、もう一つ、ほかの面でもすぐれていることを見落としているのが多いということだ。それを発見して、大いに活用すべきである。


・(講談社)入試して、おどろいたことに、社長の野間清治は、一年中一度も出社してこない。毎日、自宅からデンワや手紙で、幹部を指揮している。ただ年に一度、暑い八月の一日、朝から夜中まで、音羽の邸宅に、のちに目白の邸宅になったが、編集長以上の幹部を集めて、九大月刊雑誌の新年号編集大会議を開く。


・いつも、受け手の読者が、私の提供する事実を、いや、その物語を“感銘して”読んでくれることを望んだ。つまり、いつも読者に“魅力”を売っているという意識をもっていた。


・消費者というものが、ますます新しいものを要求している。それに即応し、こたえるものを、われわれメーカーは提供しなければならない。それを、自分のところの商品を買わないのは目がないんだとか、趣味が低劣であるとかいっていても始まらない。お客さんの目も口も肥えてきている。


・たった一つ、私自身が感動したものを、他人に訴えて、共感共鳴を得るか、どうか。これしか私の突破口はなかった。


・はじめが大切だ。はじめが将来を決定する。だから、はじめに出す本は、ぜひ大成功へもっていきたい。


・批判するなら代案をだせ


・理づめで考え、計算してかかる。しかし、さいごはその理づめ、計算を一切忘れて、行動する。


・読者の心に灯をともす本。おれでもやっていけると、読者に自信の沸く本。


・原稿には、「あなたがた」、「諸君」でなしに、「あなた」というふうに呼びかけてもらったほうがよい。


・あとがきインタビューより

-----カッパの本のなかで、もっとも会心の作品は何でしょうか?

神吉:
やっぱり、「英語に強くなる本」でしょうな。(中略)本文の中でも触れているが、企画と宣伝と販売の三者が、ベストセラーを生み出すために、緻密な計算にしたがって最高の調和を示し、売れ行きを育てて行った。あれだけ、飛ぶように売れて、しかも返品がほとんど皆無にひとしかった本は、日本の出版史上滅多にないでしょう。


・いつでもどこでも、自分というものを大切して、時代の変化をよく見きわめ、“時代に流されず、流れて行く”ようにしたら、それぞれの身に応じて。何かができるにちがいないということです。
      
     
             
●書籍「カッパ軍団をひきいて」より
神吉 晴夫 著
学陽書房 (1976年5月初版)
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