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津嘉山 朝裕 氏より(書籍「出版経営入門」より)

このページは、書籍「出版経営入門 エディター講座(津嘉山 朝裕 著)」から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


※津嘉山 朝裕(つかやま ともひろ)
1923年ペルー国リマ市に生まれる。1946年福音館書店入社、営業部長、取締役総務部長、常務取締役を歴任。1977年同社退社。


・出版界では、“出版年鑑”や出版科学研究所のデータを、あたかも業界の動向すべて反映しているかのように扱いますが、これらの統計数字には限界があるのです。というのは、取次ルートに沿って推定され、決して出版物全体を表現するものではないからです。


・1点1点が固有の内容を持ち、かつその目指す対象が限定される出版物は、少数の限られた製品を継続的に生産する他の産業製品とは異なって、比較的に少量生産にならざるを得ない性格を持っているといえましょう。


・出版社にとって何よりも大切なことは、あの出版社が出すものなら良い本に違わない、という信用を得ることです。その信用の高さは、信者の多少で決まります。そして、儲という字を分解すると明らかのように、信者が多くなるほど、自然に儲かることになります。


・本を作ることが目的ではなく、普及されることが目的ですから、いかに売るかが問題なのです。


・出版業が他業種と大きく異なる生産上の特徴は、多品目少量生産であるということです。


・出版物の販売ルートは、かなり入り組んでいますが、おおよそ次のように集約できましょう。()内は、主たる販売店または販売方法を示しました。
(a)出版社→取次店→販売店→読者(書店・月販会社・駅売店・生協・スタンド等)
(b)出版社→販売店→学園→・職域→読者(専属販売店・特約店・月販会社等)
(c)出版社→読者(訪問販売・通信販売等)


・出版社として成功するためには、ある限られた分野を知りつくすこと、その領域を専門とする著者との関係を良好に維持すること、その分野では良い出版社であるという評判を読者から勝ち取ることに尽きましょう。


・出版事業における経営悪化は、回収遅延よりも、売行不振による滞貨と返品の増大による在庫増、つまり不良在庫の発生に起因する例が多いと思われます。そして、業況の不振をカバーするために、新刊発行依存度を高め、更に不良在庫を誘発するという悪循環に陥りやすいのです。これは、在庫回転率の悪化にてき面に現れます。


・資本構成のモデル
流動資産 80
固定資産 20

流動負債 50
引当金 10
自己資本 40


・年間必要経費を600万円、目標粗利益率を40%、借入返済予定額を年間60万円、必要保留利益を50万円、税率を45%とすると、必要売上高は次のようになります。


                  600+{(60+50)÷(1-0.45)}
必要売上高  =   __________________   = 2000万円

                         0.4


・現在の粗利益率では、年間6回の商品回転率が標準値として考えられるべきでしょう。


・新刊の売上げで経営を成り立たせるのではなく、新刊は重版の補給源の役割しか持たないものという考え方に徹することが、書籍出版経営では極めて重要なことに思われます。


・印税を発行部数に応じて支払う方法を発行印税方式といい、売上部数に応じて支払う方法を売上印税方式といいます。


・書籍最適発行部数の算定式

N 発行部数(Nは the number of copies“部数”の頭文字)
B 1点当り発注費(Bは buy“購入する”の頭文字)
P 1部当り製作比例費(Pは proportoin“比例”の頭文字)
F 制作固定費(Fは fixed“固定した”の頭文字)
c 年間在庫保管費率(cは cost“コスト”の頭文字)
S 年間予測販売部数(Sは sale“販売”の頭文字)

最適発行部数

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この式が、とりもなおさず書籍最適発行部数の公式なのです。


・製造原価の管理

出版物は、生産のすべてを外注に依存する形態をとっています、したがって、製造原価の引下げについては、1つは仕入れコストそのものを切り下げること、2つには製造上の節減を図ること、3つには制作部数を増やして原価の低減を図ること、などが考えられます。


・発行部数の採算


・私が一貫して考え続けてきたことは、出版経営を何とかして計数的に合理的に捉えられないかということでした。また、日常の仕事はとかく惰性に流れやすいものですが、どんな仕事でも必ず改善する余地が残されているに違いない、といつも考えてきました。

             
●書籍「出版経営入門 エディター講座」より
津嘉山 朝裕 著
日本エディタースクール出版部 刊(1980年2月初版)
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