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川上 隆志 氏より (書籍「編集者」より)

このページは、書籍「編集者(川上 隆志 著)」から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・編集者の重要な役割として、まずは次のことを強調しておきたい。
一、編集者とは黒子として著者の仕事を支える存在である。
二、著者との共同作業を通じて、新しい価値観を社会に提示する。
三、現代文化の推進者として、総合的なプロデュースをする。


・近年、出版をめぐる「出版学」が確立してきた。二〇〇四年には上智大学で文 女燕珠(ムンヨンジュ)氏が学位を取得している。その論文は、留学生の視点で日本の出版界を捉えたユニークなものである。


・ユネスコの調査によれば、日本はイギリス、ドイツに続く出版の盛んな国


・『編集狂時代(※松田 哲夫 著)』という半自伝的な本だが、その最後に「編集者ってどういう仕事?」というまとめをしている。それを簡単に紹介してみたい。

1、「編集者は読者である」。(中略)

2、「編集者はコレクターである」。(中略)

3、「編集者は雑用係である」。(中略)

4、「編集者はサービス業である」。(中略)

5、「編集者は校正者である」。(中略)

6、「編集者は制作担当者である」。(中略)

7、「編集者はデザイナーである」。(中略)

8、「編集者は営業担当者である」。(中略)

9、「編集者は批評家である」。(中略)

10、「編集者はライター(作家)である」。(中略)

11、「編集者は学者である」。(中略)

12、「編集者は企画者である」。(中略)

13、「編集者はプロデューサーである」。(中略)


・岩波書店のような書籍系の出版では、三〇〇〇部から五〇〇〇部の堅実な本が非常に売れなくなってきている、というのが実感としてある。


・東京都文京区の本駒込に「東洋文庫」という図書館がある。これは東洋関係の貴重な書物を集めていて、三菱財閥を創った岩崎家が集めた蔵書を基に図書館にしたものだ。


・明治を代表する編集者の名前を挙げておこう。「萬朝報(よろずちょうほう)」を創刊した黒岩涙香(るいこう)、『国民之友』を創刊した徳富蘇峰、反骨のジャーナリスト、社会主義者・堺利彦などがいる。


・戦後になるといろいろな意味で大編集者の時代を迎える。名前だけ列挙すると、初代『世界』編集長・吉野源三郎、『世界大百科事典』の林達夫、ジャーナリスト・大宅壮一、雑誌記者・池島信平、フォトジャーナリスト・名取洋之助、『暮らしの手帖』の花森安治、文芸編集者・坂本一亀などなど多士済々である。


・企画というのは今の著者の関心にとらわれるのでなくて、ちょうど高射砲が飛行機の進路に狙いを定めるように、現在の関心の、その先を狙う。


・企画の三角形

 価値・意味・インパクト
 実現性
 採算・売れ行き

三角形が大きければ大きいほど、きれいな正三角形であればあるほど、良い企画になる。


・これは元NHKプロデューサーの荻野靖之武蔵野大学客員教授から聞いた話である。荻野さんによると、番組企画のポイントは「あっ、へぇ、ほぅ」の三つの言葉にあると言う。


・今の本の媒体の形式として考えると、単行本、新書、文庫という三つの類型に分けられる。


・重要な問題をEメールでやりとりするのは大変危険である。


・組み方でいうと、本には、頭から最後まで読み通すような本と、ところどころを拾い読みする、極端な例を挙げると辞書などがそうであるが、そういうどこから読んでもいいような本があるが、どちらにするかによってかなりレイアウトが変わってくる。


・装丁の役割について、コンパクトに書いてある。※臼田 捷治氏の『装丁時代』


・菊池信義というのは、現代を代表するブックデザイナーで、詩集から始まって、文芸書を中心に非常に洗練された作品を作っている。


・岩波新書はすでに歴史を背負ってきた一つのメディアとして存在している。戦前に出たいわゆる「旧赤版』と言われるものは約一〇〇点ある。戦後には「青版」新書というものができて、それは一〇〇〇点ある。その後「青版」が一〇〇〇点になったのを期に、「黄版」は、ちょっと中途半端な数字だが三九六点、一一年間出た。そして、その後一九八八年からは「新赤版」になり、それが二〇〇六年四月に一〇〇〇点を迎えたのを期に、新装赤版としてリニューアルをした。


・私も新書編集部にいたのでよく憶えているのだが、著者の永六輔氏から、新書をいろいろ見ていると、漢字二文字の本とか、もっと長い書名などはあるけれど、漢字三文字の本というのがない、三文字というのはいんじゃないかと言われた。『大往生』というのは漢字三文字で、「これがいいんだ、漢字三文字がいいんだ」ということを、そのころ永さんがしきりに言っていて、事実大ヒットになった。最近では「力」というのを付けて、「○○力」というのが流行っている。


・憲法二一条と一三条

表現の自由を考える上で原点となるのが、憲法二一条である。あらためて憲法二一条を読んでみよう。
「第二一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保証する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」


・現場の編集者でも十分に理解していない人が多いように思われる。その要件は六つある。
1、カギ括弧などにより、「引用部分」が明確。
2、「自分が書いた部分(主たる著作物)」と「他人のものを引用した自分(従たる著者物)」の間に「主従関係」がある。(「他人のもの」のみで構成するというのは「引用」ではない。
3、「批評対象」「研究対象」「自分の主張の根拠」などの「正当な目的」の範囲内。
4、引用を行なう「必然性」がある。(「俳句や絵画の批評」など、必然性があれば「全体の引用」も例外の対象。カラー、白黒、大きさなど、すべて「必然性」の有無の問題。アニメのキャラクターを「装飾」として使うのは必然性なし。キャラクターを引用できるのは、たとえば「日本のアニメキャクターの歴史」などという「主たる著者物」の中で批評・評論対象とする場合)
5、「公正な慣行」の範囲内。
6、「出所の明示」がされている。
以上の要件を満たせば、基本的に引用は自由である。      
     
             
●書籍「編集者」より
川上 隆志 著
千倉書房 (2006年9月初版)
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