FaxDMトップ > 会社案内 > 成功者の知恵 > 小林 一博 氏より(書籍『本とは何か』より)

小林 一博 氏より(書籍『本とは何か』より)

このページは、書籍『本とは何か~豊かな読書生活のために(小林 一博 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・出版物の特性

①独自の価値をもつ創作物であること。(中略)
②価値評価が多様である。(中略)
③影響力の測定がしにくい。(中略)
④量より質(内容)が尊重される。(中略)
⑤多品種・少量生産物である。(中略)
⑥同一商品を反復購入する例はほとんどない。(中略)
⑦出版物は文化性と商品性をもつ。(中略)
⑧マスメディアとパーソナルメディアの両面性がある。(中略)


・他のメディアとの比較

①小規模・小資本での参加が可能である。(中略)
②委託生産、委託販売である。(中略)
③時間性・空間的な制約が少ない。(中略)
④記録性・選択性に富む(中略)
⑤伝達がより正確である。(中略)
⑥免許事業ではない。(中略)
⑦公共的である必要はない。(中略)


・世界一のベストセラーは「聖書」であろう。千以上の言語に翻訳され、一五〇年間に少なくとも一五億冊に達しているとか。日本でも、一〇〇年間に五〇〇〇万冊は売れているだろうとの推定である。


・ベストセラーのパターン

①短期間に爆発的に売れて姿を消していくもの(消えてはしまわないが、同然のものも含めて)。(中略)
②当初からある程度売れて、映画やテレビなどの放映で、相乗効果を発揮して再び売れつづけるもの。(中略)
③数年つづけて売れるもの。(中略)
④ロングセラー化するもの。


・ベストセラーの型

①自然発生型(中略)
②企画・演出型(中略)
③相互利用型(中略)
④便乗型(中略)
⑤市場操作型(中略)
⑥その他


・出版が社会的に意義あるものとして発展していくための条件は、
一、著作者の自由な創作(造)活動を保証すること、
二、読者の心の中に内在する多面的な欲求に応えていくこと、


・十キロ入り段ボール箱一箱は平均三十冊詰めることができる。


・定価の内訳

編集企画費 一般管理費 商品管理費 純利益   14% 版元
一般管理費 物流費 商品管理費 純利益     8% 取次
販売管理費 一般管理費 商品管理費 純利益   22% 小売
用紙                      15~17% 用紙店
印刷・製版                   12~14% 印刷所他
製本                      5~6% 製本所
印税                      10% 著作者
広告宣伝費                   8% 広告


・A・C・スペクトルスキーは、“雑誌を成功させるには十三のカギ”があるといっている。

①読者が第一。読者を第一にしていれば、すすめべき道は自明。
②統計・調査・コンピューターの情勢分析は、確認のために用いられるべきで、それ自体すべてではない。
③発行人の姿勢・役割は、開発ではなく耕すことである。
④成功する雑誌は読者に従うのでなく、常に読者の見える一歩前をすすむこと。
⑤発行者は、自分の判断で決定すること。読者と話し合うのでない。
⑥新しい読者を“全人間的に”把えること。
⑦雑誌出版には柔軟性は必要だが、個性を犠牲にしてはならない。読者の忠誠心はあてにしないこと。
⑧(読者を怖れず)大胆不敵であること。
⑨雑誌は民主的・合議制ではつくられない。
⑩読者側に立って党派性を打ち出すこと。
⑪雑誌成功の秘訣は、編集にお金をかけること、編集スタッフや執筆者を優遇すること。
⑫自分で楽しめる雑誌にすること
⑬雑誌が成功している時は、一大危機の訪れる前である。


・雑誌の健康診断法

ジムマンは、雑誌発行を“火”にたとえている。雑誌がホットな時は、読者は入手に熱心で、広告主も競って広告を出してくれる。雑誌経営で難しいのは、冷却しつつあるのを正しく把むこと。

大部数の雑誌の場合は、冷却に向かっているときも時間がかかるから病状が正しく把めない。病状に気づいたときは手遅れで、いったん手遅れになると取返しがつかない、と。そして、雑誌の発行者や、編集者に対して次のようなテストを試みることをすすめている。

①あなたの雑誌のスタイルとかパーソナリティは、はっきりとまちがいなく認識できるか。
ホットな雑誌はユニークだが、表紙をはがすと他の雑誌と見分けのつかない雑誌がある。
②雑誌の内容が最近話題になりましたか。
話題になってなければ、雑誌は冷却期にある。
③雑誌編集上の意図を手短かにまとめられるか。
スタッフが編集意図を正確にまとめられないようでは、チームとしての仕事をしていない証拠である。雑誌が冷却しつつある証拠。
④最新号の記事で、ライバル誌が扱っていない記事はいくつか。
企画力が低下してくると、他誌と同じような記事となり特徴をなくしてしまう。
⑤ニュース記事は別として、最近号は二年前の号と似ていないか。
うっかりしていると、一年前、二年前と同じ目次になってしまう。よくあることである。
⑥有料部数の伸び率が、雑誌市場の人口の伸び率を下回っていないか。
市場人口が増大しているのに雑誌部数が増えないのはどこかに欠陥がある。
⑦一部売り販売部数が大幅な上下をしていないか。
上下しているならば、雑誌が、“健康”を害しはじめた徴候である。
⑧本文と無関係な広告を獲得するのに、広告スタッフが多くの時間を費やしていないか。
広告も記事である。広告の内容・コピーは雑誌の読者を意識したものでなければならないのに、関係ない広告が入っていないか。
⑨正規の予約料金を割引して予約読者を獲得していないか。
⑩最近号を受けとって一週間後にもその号を読んでいない読者の比率が高くなってはいないか。定期購読している雑誌を、一週間も読まずに放っておくようになったら、購読は中止したも同然である。


・日本の出版の歴史は古く、さかのぼっていくと、現存する世界最古の印刷物と称されている『百万塔陀羅尼経』(ひゃくまんとうだらにきょう)(七六四~七七〇年)にたどりつく。


・いわゆる出版界における企業格差の拡大は、一九五五年ごろから一九六〇年ごろにかけて萌芽するのである。また、取次会社→書店ルートのシェアの低落もここからはじまる。そして、返品の増大が問題になり、取次が新規出版社と容易に取引口座を開かなくなり、取引条件をきびしくしていくのも、このあたりからである。書店の売場拡大がはじまるのは一九六四年ごろからだ。
     
             
●書籍『本とは何か~豊かな読書生活のために』より
小林 一博 著
講談社 (1979年10月初版)
※amazonで詳細を見る