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江守 賢治 氏より(書籍『本の小事典』より)

このページは、書籍『本の小事典(江守 賢治 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・ノンブルとページ数とは混同され易い。ノンブルは各ページ数の順序を示す数字(ページづけ数字)をいい、ページ数は単にページの数量である。


・一般では、「本のいうものはジャーナリストに騒ぎたててもらえれば必ず売れる」という一つの信仰をもっている


・≪わが国における出版業の歴史≫

わが国では、平安末期ごろから本格的な印刷が起り、出版が行われ始めたが、それらは、すべて京都・奈良・高野山などにある寺院が中心となっていた。


・出版商の数

江戸では、幕府御用の出版商を御書物所といって、これは四十五軒あった。また、正徳以前に出版商として認められていたものは、江戸に一二五軒、京都に一六〇軒、大阪に六九軒あった。なお、これら公認の出版商のほかにも三百軒ぐらいあったらしい。


・≪本の取扱い上の注意≫

常時の注意

一、湿気を避ける。
二、過度の乾燥を避ける。
三、乱暴な扱いをしない。
四、悪いくせをつけない。
五、本をよごさない。
六、色あせをふせぐ。
七、手入れを怠らない。


・≪本の修理法≫

本の修理を必要とする場合には、その破損の程度によっていろいろある。たとえば、本をそのままで破損した部分だけを簡単に修理する場合、表紙と中身とを離して修理する場合、離した中身のとじを解いて改めてとじなおす場合等がある。


一、本文のページが抜けた場合(A図)

(1) 抜けたページのところののどを開き、さらにへら様のものでとじ、目まで十分に開く。
(2) 抜けたとじ目の方に、普通ののりまたはビニールのりを、できるだけ平の部分に付かないようにして付けて差し込み、本をそっと閉じて、そのままにしておく。


二、本文のページが破れた場合(B図)
 ○ 破れた部分をもとどおりに合わせ、その破れ目に工作用のセロハンテープを当てる。
 ○ 破れたページの下にろう紙をはさみ、両方の破れ目の小口にビニールのりをつけ、なま乾きになったころをみて両端を合わせて指さきで軽く上から押さえる。なお、ろう紙はページに密着せずに、後で軽く取れる。


三、表紙の角が破損した場合(C図)
 表紙の角に、図のようにクロスの小片を当ててはり付け、折りまげやすいように角を切り落としてから、表紙の裏側にはり付ける。


四、表紙の背が破損した場合(D図)

(1) 背に当てるクロス(なるべく布クロスがよい)を、天地は背の長さよりもやや長めに、左右(幅)は耳から二ー三センチメートル出るぐらいに切ったものを用意する。
(2) このクロスの内側・中央・に、背の部分と同じ長さの厚紙をのり付けする。
(3) 厚紙を背に合わせてのり付けし、右のクロスを表紙のひらにはり付ける。
(4) 背の上下両端を、折り返せるだけ残して切り取り、かつ、切れ目を入れて、端を折り込んではり付ける。


五、背が割れた場合

(1) 表紙と中身とを離し、表紙裏にはってある古い見返しをできるだけきれいに取り除く。
(2) 中身を整え、きれいにそろえてから、縦の帯をかけて強くしめておく。
(3) 中身の背の古いにかわを、熱湯でひらや小口が濡れないように、洗い落す。
(4) 乾いてから、別に用意しておいた見返し(一六ページ参照)を、中身の表と裏の両方にそれぞれはり付け、改めてその上から紙帯でしめておく。
(5) 背にハトロン紙を三枚ほど、一枚一枚ビニールのりではり固める。
(6) 取りはずした表紙で中身をくるみ、見返しのきき紙のほうにのりを付けて、表紙をそっと閉じる。
(7) 本を閉じてしばらくそのままにしておき、重い本を数冊その上に載せておく。


六、中身のとじがゆるんだ場合(E図)

(1) 前項のように、表紙と中身を離す。
(2) 中身の背の部分に、力紙としてハトロン紙を図のようにはり付ける。
(3) 中身の表と裏の方から、三か所または四か所、斜めに穴をあけて、麻緒をとおし、その端を外側の方へ強く引っぱっておく。
(4) 見返しを付ける作業から後は前項に同じである。


七、中身のとじが切れた場合(F図)

(1) 五項のように、中身と表紙を離す。
(2) 中身を整えてから、背や小口をよくそろえ、紙帯をかける。
(3) 中身の背に近い部分に、三か所または四か所、穴をあけ、麻緒を三つ目とじの要領でとじる。
(4) 見返しをつける作業から後は五項に同じである。

一、見返しのつくり方と付け方

(1) 耐折度(四一ページ参照)の大きい厚手の上質紙を二つ折りにし、中身よりは少し大きめに切っておく。
(2) かんれいしゃの裏ばり紙の方にのりを付けて、見返し紙の背の方にはり付ける。この場合、一方は五ミリメートルほど出してはるのがよい。
(3) 見返し紙の、かんれいしゃが五ミリメートルほど出ている方に、のりを一センチメートルほど の幅に付ける。
(4) 背のほうをそろえてはり付け、乾いてから三方の小口に合わせて、出ている分を切り取る。

二、穴のあけ方

(1) 中身を整え、背や小口をよくそろえる。
(2) 穴をあけるとき、中身がゆるまないようにするため、F図のような要領で紙帯をかける。紙帯は三センチメートルほどの幅のものがよい。
(3) 穴は目打またはドリルを用い、背の端から五ミリメートルほどはいった処にあける。目打を用いると仕事は早いが穴は弱く、ドリルを用いるときれいに、かつ強い穴をあけることができる。なお、穴は背の線に平行にあけることが大切である。

三、とじ方(G図)
 ○ とじ方には、三つ穴、四つ穴、五つ穴などがあり、糸のとおし方は図のとおりである。
 ○ とじ終ってから、木づちでとじ目と結び目の部分をよくたたいて、つぶしておく必要がある。

四、表紙のはり方
(1) 中身にはり付けてある見返しの、背から五ミリメートルの幅の部分(みぞになる部分)に濃いのりを付け、表紙を閉じ、三方(小口・天・地)のちりをよく合わせる。
(2) 火鉢かこんろで焼いた銀杏鏝(いちょうごて)で、みぞをつける。この場合、あらかじめ、焼いたこてにろうを付け、みぞを軽くなで、それから強くしっかりこすって焼き付ける。

五、雑誌などを合綴する場合は、普通、とじなおし(一九一ページの七)と同じ方法で製本すればよい。

六、それほどは利用せず、しかも保存しておきたいものを合冊製本する場合は、背を化粧断ちして、ビニールのりを塗布し、表紙を付けておけばよい(無線とじ)。

 本を修理したり、合冊する場合、身のまわりにある道具を用いても一応はできるが、普通には次のような道具がよういされる。


 さい断道具

  中身の小口の化粧断ちをされいにするのは、なかなかむずかしい作業である。小型の断裁機を使
用すれば容易であるが、普通には庖丁(ほうちょう)、截板(たちばん)、定規を用いる。


 とじ用具

  穴をあけるもののために、まず目打・樫矢(かしや)・打抜台がある。目打は全体が金属製で、樫矢でたたき込むようにできている。なお、ドリルは、この目打・樫矢・打抜台を兼ね、しかも容易に、美しく強い穴をあけることができる。糸をとおすためのものには、太めの針がよい。


 接着用具 

  のりを付けるためには糊刷毛(のりばけ)を用いる刷毛は、幅が10-12センチメートルで、馬の毛がよく、先がうすく根元が厚く、かつ腰の強いのがよい。のりを入れるための盆には、ホーロー引きのものがよい。にかわを用いる場合は、にかわを煮る二重底のなべや、にかわ用の刷毛が必要であるが、ビニールのりを用いれば、ビニール刷毛だけでよい。ビニールのり刷毛は、幅が二センチメートルで、毛のこわいものがよい。
  また、背固めなどのときに、カルカヤ植物の根でつくった、カルカヤを使い、みぞをつけるためのものに銀杏鏝(いちょうごて)がある。
  なお、作業の途中に本をしめしておくと、仕上りがきれいになる。しめ用具には、しめ機械やしめ板・山出ししめ板がある。接着材料には、のり・にかわ・特殊のり等が用いられる。のりは、ひめのり・しょうぶのり・メリケン粉等がよい。にかわは、これを煮るのがめんどうであるので、一般にはビニールのりが便利でよい。
  とじ材料には糸が用いられる。かがるには木綿糸(もめんいと)がよく、三つ目とじには麻糸がよい。糸は弱いと切れ、かたすぎると逆に紙が切れる。


・≪世界の有名な図書館≫

アメリカ議院図書館
ニューヨーク図書館
大英博物館図書館
フランス図書館
プロシア国立図書館
フローレンス国立中央図書館
ヴィチカン図書館
ケンブリッジ大学図書館
ハーバード大学図書館
アメリカ考古学図書館
アメリカ陸軍医学図書館


・≪わが国における代表的な図書館≫

上野図書館
静嘉堂文庫
東洋文庫


・大正時代にはすでに立川文庫・アカギ文庫などあったが、現在のようなわが国文庫本の先駆は、昭和二年にはじめて発行された岩波文庫である。


・≪本に関する故事成語≫

事を以て御する者は馬の情を尽さず・・・・書物を読んだだけで馬のことを研究しても、その情まで理解することはできない

尽く書を信ぜば書なきに如かず(ことごとくしょをしんぜば、しょなきにしかず)・・・・書物を読んでも、字句の表面だけを信じて、その真実の意味を研究しないならば、かえってまちがいをおこしやすいことがあるから、むしろ本を読まない方がまじであるという意味である。


・≪本に関係ある金言、詩歌≫


・≪本に関係ある専門学≫

印刷学
書誌学
図書館学
文献学
考証学


・事典と辞典

事典という語は、昭和六年、平凡社が「大百科事典」の刊行に当って用いたのが最初で、それ以前には、事彙という語はあったが、事典という文字はなかった。すなわち、日本百科大事典(三省堂)や国民百科辞典などは、みな現在の事典にはいるものであるが、辞典の文字を用いて事典とはしていない。
現在では、事典と辞典とを一応区別している。すなわち、事典はエンサイクロペーディアをいい、ことがらを説明するものであり、辞典はディクショナリをいい、ことばを説明するものである。したがって、両者を区別して呼ぶときは、事典はこれを「ことてん」(subject book)といい、辞典はこれを「ことばてん」(word book)といっている。

             
●書籍『本の小事典』より
江守 賢治 著
明治図書出版 刊(昭和30年6月初版)