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齋藤 泉 氏(書籍『またあなたから買いたい!』より)

このページは、書籍『またあなたから買いたい!(齋藤 泉 著)』から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・私たちの仕事は、乗車前のワゴンづくりから始まりますが、通勤途中に感じる天候や人の流れを見ながら、「だいぶ寒くなってきたな、ずいぶんコートを着ている人が増えたな。こんな日は温かい飲み物だな。よし、ホットコーヒーをいつもより多めに積もう」とか、「大きな荷物を抱えた家族連れが多いな。3連休は遠出する方が多いな。東京土産よりも、ファミリー向けに、車内で召し上げるアイスやお菓子、沿線のお弁当などの販売に力をいれよう」といったことを、自然に考えるようになりました。


・お客さまがいちばん欲しいタイミングに、欲しい商品をお渡しすることが、お客さまの満足につながる


・私の身分は時給で働くパートです。「毎日新幹線に乗れるなんて、楽しそう・・・・・・」。修学旅行以来、新幹線に乗ったことがなかった私は、実はこんな動機でこの仕事を始めました。


・「3時間半」「新幹線車内」などという限られた時間や空間の中で、いかにお客さまに「満足していただけるか」「心地よく過ごしていただけるか」。そのために、まだまだ改善できることや工夫できることがたくさんあるのです。


・初めて受けた研修で印象的に覚えていることは、「ワゴンは、1軒のお店。あなたはその店長です」という言葉です。


・私はお弁当の中身の写真が欲しいとずっと思っていました。何度も会社にも作ってほしいと訴えてきたのですが、その願いはなかなか届きませんでした。


・たしかに、たくさんお金をもらえたら、それに越したことはありません。お金をもらうために働いている側面もあるわけですから当然です。しかし問題は、その働いている時間が充実しているかどうか。

1日のうち8時間は働いています。1日の積み重ねが人生だとすれば、人生の膨大な時間が、そこに費やされます。

だったら、この時間。汗水垂らして大変でも、苦労した分、「ああ、やって良かった」「ちょっと。進歩したかな」と思えるような過ぎし方をしたい。働き甲斐とは、そういうことではないでしょうか。

まだまだより良くしていくためにチャレンジできることは、たくさんあると考えています。その手応えがある限り、この仕事を続けていきたい。それが今の私の気持ちです。


・今日のお客さまのイメージを思い描き、ニーズは何だろうかと考えるとき、私が大事にしているのは、五感です。たとえば寒いと感じれば温かい飲み物、暑いと感じれば冷たい飲み物を多く人は求めます。この仕事を続けていくうちに、刻々と変化する「今」を感じることが、その時々のお客さまが求めているものをとらえるのに、とても役立つことがわかってきました。

天候や気温など、TVやインターネットでいくらでも情報を得ることはできますが、そのときに感じる自分自身の肌感覚が実はとても重要です。ですから、通勤時には自分の目や体で天候や気温を確かめます。


・商品を売るためには、やはり店づくりの工夫が必要です。私たちのワゴンは、「小さなお店」ですから、その店づくりに、私は1時間ほどかけています。


・お客さまのニーズも日々変化していますから、それに合わせ創意工夫していれば、ワゴンの見せ方はどんどん変化していくものだと思うのです。


・「予測→確認→修正」の繰り返しが、ニーズ把握の精度を高める

予測  今日は寒いからコーヒーが売れるかな?
確認  寒いからすでにホームで缶コーヒーを買っているお客さまが多かったのね。
臨機応変に修正  逆に冷たいもののニーズもあるかも


・指定席のお客さまの中には計画的に旅行されている方も多く、どこの駅の駅弁がおいしいか、といったことを事前に調べていて、私が通ったときに帰りの列車の分のご注文をされる方もいらっしゃいます。


・いくら慎重に予測しても、「本当に追加20個もいけるんだろうか?」と迷うときももちろんあります。そこで思いついたのが、車内で駅弁の予約をとることでした。


・車窓が雪景色のときのアイスクリームは、お客さまにとても喜ばれます。


・お客さまのことを知るという点では、対面よりも背面のほうに軍配があがります。(中略)背面の場合はそのお客さまの顔が見えにくい分、そのほかの部分を幅広くしっかりと見ることができます。(中略)荷物1つとってもさまざまなことがわかります。(中略)このお客さまは遊園地帰りだな、お弁当をすでにお持ちだから飲みものをおすすめしてみよう、お休みのお客さまの横は静かに通ろう


・米沢の名湯・小野川温泉の温泉玉子がつきました車内販売限定『すきやき弁当』と山形産の銘柄米『どまん中』にそぼろとロースの牛肉煮を敷きつめました沿線名物『牛肉どまん中』でございます。


・車内の放送は、お客さまに気づいてもらい、欲しいという気持を引き出すのに、とてもおきな効果があります。(中略)

お客さまの耳へ伝える情報はとても重要です。私は、全部一律にするのは残念なことだと思いました。お客さまに呼びかける言葉だって、朝と夜では違うはずです。(中略)「ホットコーヒーやサンドイッチ、お弁当などをご用意しておじゃまいたしております」では、「それを食べてみたい」と言う気持ちにはなれません。

(※参考:通常は、会社で統一した文章をつくって、一律にそれを流すようになっている。)


・一つだけ心残りがあります。それは、お弁当が一つ足りなかったことです。完売後、「私も欲しくなったわ。お弁当、ある?」とお尋ねになったお客さまが1人いらっしゃいましたが、「申し訳ありません」とお答えしなければならなかったことが、悔やまれてなりません。

記録的な売り上げを達成したことよりも、そのことのほうが、今でも強く心に残っています。


・潜在的なニーズを引き出す二言目を添える(中略)

たとえば、温泉旅行で米沢周辺に行かれた方は、きっと前夜の夕食に米沢牛をメインにしたお料理を召し上がっていることも多いはず。ですから、帰りの新幹線では、牛肉のお弁当を食べたいとは、あまり思わないでしょう。

そういう方へは、「幕の内弁当はいかがですか」とお勧めすると、「ああ、それなら食べたい」と喜ばれることもあります。


・山形新幹線米沢駅からは、「すき焼き弁当」「牛肉どまん中」「はらくっちゃ弁当」の3つの駅弁がメインで入ってきます。こうした名物弁当を、お土産で持ち帰りたいと思われる方もいます。でも、はじめから「名物弁当をお土産にしよう」と考えている方なら別ですが、通常、そこまで思い至っていないお客さまも多いのです。

たいていは、ご自身が車内で召し上げるためにお買い求めいただくわけですが、ここで「お弁当をお土産にする」ことに気づけば、お土産用としてもお買い求めいただけることにもつながります。ただし、こうした潜在的ニーズは、お客さまのほうから言ってくださるわけではないので、こちらでもなかなかわかりにくいものです。

もしその潜在的なニーズを引き出せれば、売るほうとしてはチャンスになりますし、お客さまにしても、後から「あのお弁当をお土産に買って帰りたかった」と思われることもなくなるでしょう。

そこで私は、お土産を必要とされているようなお客さまがお弁当をお買い求めいただく際には、こちらから「お土産でしょうか?」などと伺ってみます。(中略)

「お土産にいかがですか?」ではなく、「お土産ですか?」とお聞きするのは、そもそもこちらでは、お客さまがお買い求めになったのは、車内で食べるためなのか、お土産用なのかがわからないことと、押しつけがましくならないためです。


・嫌な思いをしたら、もう二度と新幹線の車内販売は利用しないかもしれません。目の前の売り上げよりも、お客さまの満足を高めたほうが、より大きな利益をもたらしてくれるのではないでしょうか。


・車内販売の大きな特徴は、品物を買っていただくお客さまだけが、お客さまではないということです。ご乗車されているお客さますべてが、私たちのお客さまでもあるのです。「いい思い」を持って帰っていただくためのもう一言。それを、私は大切にしたいと思っています。


・価値観の押し付けは本当のサービスとはいえない


・地域特性という点では、方言はお客さまとの距離を縮めるうえで有効な働きをします。


・お客さまの「買う気」をうながす方法

迷っている人がいるときは一度通りすぎる

時間差をつけて振り返ることで、お客さまの反応がわかる。目が合うことで買う決断をしてくれることも多い

横で待っているとお客さまにブレッシャーを与えてしまうのでNG


・お客さま1人ひとりの状況は異なりますから、何をしたらいちばん喜ばれるかは、人によって異なります。マニュアルにないものが必要であり、それがまたプラスアルファの価値なのでしょう。(中略)心がけているのは、自分だったらどうしてもらいたいかということです。絶えずお客さまのことを考えて、行動したり言葉をかけたりするのですが、原点にあるのは自分です。自分がやってもらえたらうれしいことを相手にもする。


・パートやアルバイトだからとか、正社員だからという問題ではなく、サービスの価値が生まれる現場にいる私たちだからこそ、言えることも当然あるのだと思うのです。


・お客さまに気づいてもらうためには、「おや?」と思わせるネーミングも必要です。


・地元の人にとってみれば、いつも食べている家庭料理の一つでしょうから、つまらないと思うかもしれませんが、東京の人にとってみれば新鮮なはずです。


・米沢の名物に、「峠の力餅」という大福餅のようなお餅があります。


・できるところから始めてみる
「こうしてほしい」と言う前に、まず実践してみるのも一つの方法でしょう。


・充実感を得るためには、やはり現場でしかわからないことは言うべきでしょうし、誰も動かないならば、まず自分が動くべきなのでしょう。


・後輩をやる気にさせる指導とは

悪いところよりも良いところを見る目が必要(中略)

オリジナリティをほめる(中略)

欠点もプラスの言葉に変えて言う(中略)
「お客さまをお一人ずつ、しっかり見ながら、適度な速度で回っているところがとてもいいね。あとは、2、3席先まで届くような声の大きさがあれば、もっとお客さまが気づいてくださるよ」といった具合です。とこんなふうに、まず良いところを具体的に言ってほめ、気になるところがあれば、そのあとにこうしたらもっと良くなるよとアドバイスをします。


・マニュアルのいちばんの問題は、ともするとその人らしさを封じ込めてしまうところにあるのではないでしょうか。


・一瞬の出会いだからこそ、もう二度と会わないかもしれないからこそ、できるだけ心をこめる。それが私も最も大事にしていることなのです。


・徳間書店 編集担当 明石直彦


●書籍『またあなたから買いたい! カリスマ新幹線アテンダントの一瞬で心をつかむ技術
』より
齋藤 泉 著
徳間書店 (2009年8月初版)
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