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中野 晴行 氏 書籍『マンガ産業論』より

このページは、書籍『マンガ産業論』(中野 晴行 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・マンガ市場では雑誌に載ったマンガが、単行本、アニメ、キャクラター商品へと展開されていく。マンガがワンコンテンツ・マルチユース型という珍しい特性を持った商品であることがわかわると思う。


・「鉄腕アトム」のマーチャダイジング例

 おもちゃ(中略)
 文房具(中略)
 生活雑貨(中略)
 衣料品(中略)
 食品(中略)
 その他(中略)
 アトム積み立て定期 大和銀行
 サントラ盤 クラウン


・プロダクション方式には大きく分けて四つのタイプがある。

(一)は、まんが家を中心に作画をサポートするアシスタントたちがいるタイプ。今でもこのタイプが主流になっている。(中略)

(二)は、複数のマンガ家が集まって、制作やマネジメントをある程度まで統合するタイプ。もともとは、仲間同士が自然に力を貸し合っていたところからスタートしている場合が多い。(中略)

(三)は、原作者を中心に、その原作に基づいて作品を仕上げるマンガ家たちが集まりプロダクションを形成するタイプ。(二)の変形だが、原作者とマンガ家ということで密接なつながりができやすい。また、作品を作る上での意志の疎通も密になるので、良質な作品を生み出しやすい環境につながる。

(四)は、映画のプロダクションのように、内部にシナリオライター、マンガ家、アシスタントなどを揃え、完全な分業制によっってマンガを作っていくタイプ。


・マンガ家の手元には、アシスタントの月給より多少マシな二十数万円しか残らない。これをなんとかするためには、三つの方法しかない。連載を増やすか、アシスタントをクビにしてひとりで描くか、連載を単行本化してもらって印税を得るか、である。


・マンガ単行本の多くは雑誌扱いである。豪華本や文庫は書籍コードだけだが、新書判やB6判単行本のカバー裏には「雑誌 ○○○○○-○○」という記号があるはずだ。つまり、マンガ単行本は一見単行本でも、取次の扱い上は雑誌なのである。

わざわざ雑誌扱いにしているのは、かつては雑誌と単行本を扱う書店よりも、主に雑誌だけを扱う書店のほうが多かったからである。地方の小さな町や村では特にこのタイプの店が多く、薄利多売型のマンガ単行本を全国津々浦々まで浸透させるには雑誌扱いのほうが有利だったのである。


・読者は、雑誌→単行本ではなく、テレビ→単行本という行動をとることがはっきりしてきた。


・雑誌の内訳は少年誌が二十一誌、少女誌が四十三誌、青年コミック誌が五十四誌、レディスコミック誌は五十九誌、四コママンガ誌が十七誌、パチンコ・パチスロ系が二十二誌、耽美系が十一誌、その他が五十四誌である。


・若者の中にはマンガやイラスト、アニメ(CGを含む)などの専門学校で学ぶ人も多い。二〇〇三年現在、こられを指導する学部・学科・コースを持つ学校は、大学・短大が一九校、専門学校が八十五校ある。


・「キズにならない。半永久的」という売り文句に至っては、今ではまともに信じる人もいないはずだ。キズがつけば音飛びもするし、それはアナログに比べて致命的である。素材のプラスチックは経年変化し、それは音に影響し、最悪の場合は記録層との間にスキ間を生じ、記録層をサビさせることもある。
※CDのこと


・聞こえないものを聞こえるように感じさせるのが、マンガ家の才能であり、テクニックだったのである。(中略)

速い動きは流線で表し、音を表現するためにオノマトペを入れる。野球マンガのスタンドに「ワー ワー」という文字を容れて、観客のどよめきを表すなんぞは大発明であった。


・一九五四年の『サンデー毎日』一〇月三一日号に「読書界のかげの声 ベストセラーはつくられる」という特集があって、ここにおもしろい記事があった。当時はデフレ下で出版不況。そんな中、貸本屋や回覧雑誌屋が盛業で、特に回覧雑誌屋は新本屋を脅かしている、という内容だ。回覧雑誌屋というのは、会員を募って文字通り雑誌を回覧させる商売で、アルバイトの配本係が七十、八十軒をまわって配本、回収を繰り返すのだ。値段は、新しい雑誌の一〇分の一。一冊分で十冊読める計算だ、という。

京都では、小売商組合が卸商に回覧雑誌屋に本を売らないように申し入れたが、法的な根拠がない上に、卸によって回覧雑誌屋は上得意だったので沙汰やみになった、とある。

五十年前にも同じような騒ぎはあったのだ。


●書籍『マンガ産業論』より
中野 晴行 著
筑摩書房 (2004年7月初版)
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