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伊藤 正視 氏 書籍『人が集まるテーマパークの秘密』より

このページは、書籍『人が集まるテーマパークの秘密』(伊藤 正視 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・テーマパークはコンセプトが生命であり、多く人の心に響き、心の中にしみ込んでいくパワーも必要である。それには人間の本質をとらえ、人間の普遍性をしっかり把握しなければならない。理性と感情、不易と流行、ノスタルジーとエンターテインメント。


・日本人の心の三つの特徴

強い集団帰属意識(中略)

四方を海に囲まれた国土、四季に恵まれた気候風土、さらに農耕民族としての労働に対する考え方などが、日本の性格を決定づけたのだろう。


好奇心と優れた消化能力(中略)

外来文化に対する好奇心の強さの取り入れ方、吸収の仕方にある。(中略)日本人は巧みに外国の文化、技術、芸術、宗教を貧欲なまでに取り込み、時には自分自身に合うように加工し直し、消化、吸収してきた。


稲作文化がもたらした「こだわり」(中略)

一つのことを掘り下げ、探求し、それを人間形成、人生の修行の手段として道を究めようとする伝統的な精神文化を持っている。外に向かって自己表現をしようとすることよりも内面、つまり精神を重視する文化を言えよう。


・よくよく顔を見ないうちに名刺のやりとりが行われている。名刺がその人のすべてであり、名刺に書かれている社名は社会的信用の証しであり、その役職はその人の人格をも証明しているかのようである。それだけに日本人は名刺にこだわる。


・ディズニーランドは一日たっぷり八時間過ごして約一万二〇〇〇~一万五〇〇〇歩、距離にして約七~九キロメートルである。これはゴルフの一ラウンドとほぼ同じで、心地よい疲労感と充実感を感じる導線距離でもある。


・ミッキーマウスは二人の偉大な人物を掛け合わせて作られた。一人はウオルト本人である。ミッキーマウスの声が、ウオルトのうら声であることが有名な話だ。そしてもう一人は、ウオルトが最も尊敬するチャールズ・チャップリンである。


・お客を楽しませることなら何をやってもよいというわけではない。コンセプトを貫き通すことが何よりも大切なのである。


・ディズニーランドのコンセプトは「ファミリー・エンターテインメント」(中略)

三つの隠し味があると考えられる。それは「エデュケーション(教育)」、「愛国心(偉大なるアメリカ)」、強烈なまでの自信と信念に裏打ちされた「自分自身の趣味(機関車)」である。


・エデュケーションの語源はラテン語でEducat、「その人の持っている能力を引きだす」という意味である。


・TDLでは、結婚式を「シンデレラ城」の前で挙げたいというニーズがあることは設計段階から予想された。現に毎年六〇〇組以上のカップルの申し入れがあるが、すべて丁重に断っているそうだ。コンセプトに合わないし、酒も出せないからである。


・TDLの場合、レストランはすべてバックヤードと地下道でつながっており、必要に応じて随時、食材の供給が受けられる。地下道は四・五メートル幅と三・七メートル幅の二種類あり、延べ六〇〇メートルに達する。(中略)


ただ、残念なことに、約二〇億円の建設費削減により「ワールドバザール」から「シンデレラ城」までの地下道は実現しなかった。


・TDLのリピーター力の強さ(日本は九〇%、LAは七五%)は、キャストの礼儀正しさにある


・TDLの例だが、オペレーションキャスト用コスチューム数は約二三〇種類、ワイシャツ、スラックス、その他三~四点をコスチュームを組み合わせたセットアイテム六点で二万九〇〇〇点にも及ぶ。(中略)


種類別に見た場合、意外に多いのがミッキーマウスなどのキャラクターコスチュームで全部で三四一種類、夏冬物などを加えると一つのキャラクターに五種類のコスチュームが必要で、全部で二〇〇〇近いアイテムになる。


このため縫製の専門職が常時一二人勤務し、修繕に追われている。一日に平均二〇〇点からの修繕を四人で担当している。


・TDLの(中略)商品開発はアメリカの許可のもとに行われ毎年二二〇〇にものぼるが、そのうち「ぬいぐるみ」は平均五〇アイテムで、それほど多くないが最も重要である。


・あのミッキーマウスの顔だちや表情のつくりが同じように見えていても、毎年、変わっていることはあまり知られていない。専門家が見れば、このミッキーのぬいぐるみは何年のものとわかる。


・パリのユーロ・ディズニーの正式名は「ユーロ・ディズニーリゾート・パリ」。(中略)酒の問題にも思い切って手を打った。開園二年目の六月一二日をもって、園内三二カ所のレストランのうち、テーブルサービスの業態を行っている五カ所で、ビールとワインに限るとはいえアルコールのサービスを始めた。ディズニーランドが三八年目にして初めて、その掟を破ったのだ。


・集客の歴史は文明の歴史

都市の集客力はその都市の活力に比例する。このことは古今東西変わらない。人が集うところに情報があり、経済活動が行われ、文化交流もさなれる。集客の歴史は文明の歴史でもある。


・一つの名物が評判を呼び口コミで人が集まるようになり、テーマパーク化しつつある例は日本にもいくつかある。例えば、長野県南安曇野穂高は、日本でも有数の“わざび”の名産地で、全国の一〇%を一カ所(大王農場)で供給している。(中略)大王農場だけで年間一〇〇万人の集客を誇っている。


・人間だけが特別な存在ではない(中略)

カナダの北西部(特にマンダート島)に住み着いているヒメコバシガラスは、しばしば海岸でアイキガイを探す。(中略)貝をくわえて上空に舞い上がり、そこから貝を落下させて岩場にたたきつけて割るのである。この時の高さがほぼ五・二三メートルで、最小エネルギーで最大効果を狙っている。しかも小さな貝は割れにくいので、大きいものしか拾わない。


最近、北海道のカラスにはもっと頭のよいものがいるとのことである。大きな貝を見つけると道路に並べ、自分はガードレールの上にとまり、自動車がその貝をひいて割るのをじいっと見守っているのである。


・赤ちゃんが最初に反応する色は赤(中略)

それは人類の採取時代の赤い木の実であり、熟したおいしい食べ物のイメージがすり込まれているかもしれない。あるいは、お母さんのおっぱいとも重なり合うことから起こることかもしれない。このように人間の感覚は、気が付かない生理的な反応がベースになっていることが多い。


・夜になって、バーに足が向くのは、太古の時代の洞穴回帰、暖炉の火やバーベキューが懐かしいもの同じ。


・あらゆるスポーツには起源があり、ルールがある。その根源はすべて大昔の狩猟や採集行為や生活体験によるものか、あるいは部族間(集団)の争いで培われた絶え間ない闘争である。(中略)


Jリーグにわくサッカーを例に取り上げてみよう。選手は狩猟者、ボールは獲物、ゴールは仕留めた証しである。


・人類の三大発明は「火の使用」と、「農耕牧畜による定住社会」、そして「輪転機」とされている。大量に印刷できる機械の発明により、マスメディア、マスコミニュニケーションが発達し、今日の文明を築く礎になったという考え方が一般的かもしれない。しかし、私はむしろ前記の三つの画期的なことが複合化し、イマジネーションが発達したことにより、今日の人間社会を作り上げてきたと思う。


・テーマパークが成功するための六カ条(中略)

第一に、事業目的が何よりも大切である。「わざわざパーク」か「ついでパーク」かは、事業目的によって明確にできる。

第二に、事業目的に合ったコンセプトとテーマを開発する。

第三に、後背人口など優れた経済的条件を満たし、かつ事業目的やコンセプトにふさわしい土地面積で、便利なアクセスを含めたインフラストラクチャーを確保する。そして土地にかかる総コストを、事業の採算性の中でどこまで負担できるかをよく見極める必要があろう。寒冷地は避けるべきである。

第四に、コンセプチュアルデザインまで開発し、入場者予測とリピーター力、さらに建設コストやオペレーション費用の概算を出し、事業としてフィージビリティースタディー(事業化採算性調査)を判断できるようにする。(中略)

第五に、事業としての経営組織と金融団の組成である。(中略)

第六に、オペーレーション開発とリピーター対策をどこまで深耕して対応できるかである。


・事業の成功は、四人の人々に信頼してもらえるかどうかによって決まる。四人とは、第一にお客、第二に従業員、第三に株主、第四に地域社会の人々である。信頼してもらうということは、喜んでもらえるということでもある。


・「ついでパーク」はけっして観光導線客数を超えることはできない。それゆえ、周辺の観光資源とタイアップした界隈性が大切である。


・コンセプトは普通「概念」と解釈されているが、語源はラテン語のConcipioであり、「懐妊」を意味する。特にテーマパークの場合は「概念」よりも「懐妊」と解釈したほうが正しい。


・ライドアトラクションのリピーター三原則(中略)

第一は、ストーリー性である。(中略)

第二は、ストーリーの演出(環境づくり)である。脚本をもとにして、お客が何のためらいもなくその世界にどっぷり入っていける情感演出ができるか。例えば、音、匂い、色、光、輝き、材質などの要素を、ハイテクを駆使し、素晴らしい空間、景観を演出できるかである。(中略)

第三は、あなたが主役であるかのような気分を起こさせることである。その方法としては、スリルが最も効果的なようだ。

この三つの条件(リピーター三原則)は、一つでも欠けてはいけない。


・笑いは違和感を解消するためと、逆に違和感を作りだすことから起こり、それは根本的な人間の持っている矛盾との出会いだ

※山口昌男氏


・世の中のねじれを突くことに笑いが生じる

吉本興業前会長 林正之助氏談


・賑わいのデザイン

なぜ左なのか

駅前の商店街は左側に発展していることが多い。人間は、基本的に左側通行が自然である。競技場でスピードを競うスポーツは、すべて時計の針と反対の左回りである。四〇〇メートルリレーをはじめ各種トラックのリレー、そして競輪、スピードスケートとすべて左回りである。


・賑わいのデザイン

なぜ左なのか

選挙のポスターで候補者の顔写真をよく観察すると、左側の頬を見せていることが多い。(中略)右脳の特性である感情的なものが、その人のひととなりとして素直に表れることが普通である。それゆに左側の頬を見せることになる。


・ある代議士がどこかで演説会を開く時、優秀な秘書は集まりそうな予想人数より必ず小さめの会場を借りる。例えば、三〇〇人の予定数なら二五〇人くらいの会場を借りて、お客を廊下まではみださせるのが秘訣である。来たお客は、はみだしたお客を見て「えらい先生だから入りきれない」との印象を持つ。


●書籍『人が集まるテーマパークの秘密』より
伊藤 正視 著
日本経済新聞社 (1994年1月初版)
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