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山田 順 氏 書籍『出版大崩壊』より

このページは、書籍『出版大崩壊』(山田 順 著)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・「活字離れ」はじつは「紙離れ」(中略)

紙の本や新聞を読まなくなった若者たちは、昔の若者たちよりはるかに大量の活字(文字)情報に、ネットを通じて接している。また、毎日必ずといっていいほどメールを書いているはずで、これほど若者たちが文字を使っていた時代はかつてなかっただろう。


・消費者は品揃えが豊富でないと、選ぶ楽しみが起こらない。一般書店でもそうだが、さまざまなジャンルの本がそろってなければ、足を運ぶ楽しみがない。


・私は、電子書籍が単なる紙の延長であるなら、読むときは紙のままでいいと思っている。それなのに、たとえば「ページめくり」や「見開きページ」などに、なぜ、多くの編集者がこだわり、紙の使い勝手をウェブの世界でも再現しようとするのだろうか。


・本というのは制作するまでは編集費などのコストがかさむが、いったん制作してしまえばかかるのは紙代と印刷代と流通経費だけである。だから、重版となると「お金を刷っているのと同じだ」と、当時の販売部は言っていた。


・4、5年前なら常に初版1万部以上を刷っていた新書も、いまは1万部がやっと。場合によっては、8000部、6000部まで落ちた。これは大手出版社でのケースだから、中小はもっと部数を絞っている。


思えば、1980年代のカッパ・ブックスは初版10万部などというのも珍しくなかった。しかし、2002年から2009年まで私が編集長を務めたペーパーブックスでは、初版5万部を刷った本はたった1冊しかない。


・読者のことを考えなくなった本の販売(中略)

たとえば、「××ブックス」が何周年を迎えたからといって、読者の日常とはなんも関係もない。いったい誰がそのことで本を買うのだろうか?


・中国は、日本より早く紙と電子版が併存するモデルに移行していた。


・一般書籍を電子出版しても売れない(中略)

この市場は紙とはまったく違う。それがわからないと大失敗する。読者そのものが違うから、売れるコンテンツも違う。(中略)

マンガならいいの?

いや、それも違う。(中略)ケータイで売れているマンガの多くはエロ系、それもBLやTLものばかりだからね


・「百度」はともかく、アップルの事前審査もコンテンツの内容に関しては厳しいが、著者権者の確認ということに関しては甘い。というか、ほとんどチェックしていないようだ。


・私が週刊誌の編集部から書籍部門に異動したのは1999年のことだったが、そのとき、引き継いだ既刊本について契約書をチェックしたところ、なんと約3割の本に出版契約書が存在しなかった。あったとしても、日本書籍出版協会(書協)によって作成された一般的な出版契約書であり、本来ならこれを書籍固有の事情、あるいは各出版社固有の事情によってアレンジすべきものなのに、そのまま使っていた。


・著作権は、1709年にイギリスで誕生した。「アン法」(アン女王の法律)が起源とさせるが、この法律によって、著作権の有効期限(出版後14年、1回のみ更新可)が初めて設定された。つまり最長で28年であるから、現在から考えると、短いと思われるだろう。


・紙版と比べたら売上げは数十分の一(中略)

『もしドラ』(中略)電子版は9万ダウンロード。紙が約180万部だから、約20分の1である。大ベストセラーでこれだから、紙で1万~2万部のフツーの書籍となると、せいぜい数百ダウンロードがやっとという状況になっている。


・電子書籍の販売・配信サイトは、私たちのようなスモールビジネスが手掛けるようなものではないのだ。システムには、まず構築するコストが必要であり、サーバーの管理、セキュリティ対策、決済システムなどをきちんと整えるようとすれば、さらに大きなコストがかかる。


・「印税率70%」のカラクリ(中略)

アマゾンの規定を読んでみれば、「ユーザーのダウンロードの通信費用を著者が負担する(ファイル1MB当たり0.15ドル)」「電子書籍と紙の二つのバージョンがある場合は、販売価格は紙の本の80%以内とする」「販売価格は2.99~9.99ドルの範囲で設定する」などの条件があった。これを満たさないと70%はもらえないのです。


・漫画家・佐藤秀峰氏の孤独な闘い(中略)

2010年9、10月に自身のサイト「漫画onWeb」で『海猿』『ブラックジャックによろしく』の全巻を無料公開してしまった。誰でもヒット作を全巻無料で読めるとあって、多くの読者がサイトに殺到した。そうして、新しい読者を集めることで、新作を自身の手で売っていこうとしている。


・CD販売がわずかだが巻き返して話題になった。その牽引車になったのがAKB48だが、売上げ増の中身を見ると、いずれも「CD+α」商品である。たとえば「握手権付き」や「豪華特典DVD付き」など、女性ファッション誌と同じような「付録商法」が大当たりしたに過ぎない。


・音楽産業と軌を一にしているのが、ゲーム産業である。パッケージゲームの販売は世界的に落ち込んでおり、スタジオの閉鎖やリストラが続いている。


・バーンズ&ノーブルの収益悪化の原因は、電子書籍リーダー「Nook」の開発費がかさんだうえ、アプリケーションの開発、販売にかかるコストが膨らんだことにあった。電子書籍は、このように自らの首を絞めるのだ。


・オンラインによるヴァーチャル世界が広がれば広がるほどリアルが大切になる。


●書籍『出版大崩壊』より
山田 順 著
文藝春秋 (2011年3月初版)
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