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村上 春樹 氏 書籍『村上春樹 雑文集』(新潮社 刊)より

このページは、書籍『村上春樹 雑文集』(村上 春樹 著、新潮社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・なぜ小説家は多くを観察しなくてはならないのか?多くの正しい観察のないとこに多くの正しい描写はありえないからだ


・仮説の行方を決めるのは読者であり、作者ではない。物語とは風なのだ。揺らされるものがあって、初めて風は目に見えるものになる。


・自分自身について書くのは不可能であっても、たとえば牡蠣フライについて原稿用紙四枚以内で書くことは可能ですよね。だったら牡蠣フライについて書かれてはいかがでしょう。あなたが牡蠣フライについて書くことで、そこにはあなたと牡蠣フライとのあいだの相関関係や距離感が、自動的に表現されることになります。それはすなわち、突き詰めていけば、あなた自身について書くことでもあります。


・ゲラで読んだときの題は『民主主義のからくり』だった。今の題の方がだんぜんいいですね。

※高橋秀実さんの著書『からくり民主主義』(草思社、後に新潮文庫)


・安西水丸画伯の不朽の名作漫画『平成版 普通の人』(南風社、1993年4月刊)につけた解説。僕はこの本が大好きで、行く先々でいろんな人に推薦している。これくらい安西水丸性が前面に押し出されたラディカルな作品はほかにないような気がします。また読んでいない方は是非手にとって読んでみて下さい。


・他人と違う何かを語りたければ、他人と違った言葉で語れ

フィッツジェラルド


・全部で七年間、早稲田大学に在籍しておりました。(中略)僕は当時、文学部の映画演劇科というところにおりまして、シナリオを書くことを志していたんですが、エンパクには映画のシナリオもたくさん揃っていて、そういう古いシナリオを読みながら、自白夢を見るみたいな感じで、頭の中で映画をこしらえていたことを記憶しています。


・作家にとっていちばん大事な賞とは、あるいは勲章とは、熱心な読者の存在であって、それ以外の何ものでもないと考えています。


・人は本を読まなくなった。とくに小説を読まなくなったということが世間の通説になっています。しかし僕はそのようには思いません。考えてみれば我々は二千年以上にわたって、世界のあらゆる場所で、物語という炎を絶やすことなく守り続けてきたのです。その光は、いつの時代にあっても、どのような状況にあっても、その光にしか照らし出せない固有の場所を持っているはずです。我々小説家のなずべきは、それぞれの視点から、その固有の場所ひとつでも多く見つけ出すことです。我々にできることは、我々にしかできないことは、まだまわりにたくさんあるはずです。僕はそう信じています。


・もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます。


そう、それほど壁が正しく、卵が間違っていたとしても、それでもなお私は卵の側に立ちます。正しい正しくないは、ほかの誰かが決定することです。あるいは時間や歴史が決定することです。もし小説家がいかなる理由があれ、壁の側に立って作品を書いたとしたら、いったいその作家にどれほどの値打ちがあるでしょう?


・私が小説を書く理由は、煎じ詰めればただひとつです。個人の魂の尊厳を浮かび上がらせ、そこに光を当てるためです。我々の魂がシステムに絡め取られ、貶められることのないように、常にそこに光を当て、警鐘を鳴らす。それこそが物語の役目です。


・歳を取っていくことってそんなにないと思うんだけど、若い時には見えなかったものが見えてくるとか、わからなかったことがわかってくるとか、そういうのって嬉しいですよね。一歩後ろに引けるようになって、前よりも全体像が明確に把握できるようになる。


・レコードが終わると、僕は針を上げ、レコードをジャケットにもどして棚にしまった。彼女はグラスに残っていたウィスキーを飲み干し、席を立ち、まるで外の世界に出ていく特別な準備をするみたいに、注意深くレインコートを身にまとった。


・だいたい自分の考えていることを流暢に話せるような人は、わざわざ苦労して小説を書いたりしない。


・過去に書いた作品は、よほどのことがなければ読み返しません。(中略)自分の小説を手に取るのはなんとなく気恥ずかしいし、読み返したってどうせ気に入らないことはわかっているから。それよりは前を向いて、次にやることについて考えたい。


・優れた古典的名作には、いくつかの異なった翻訳があっていいというのが僕の基本的な考え方だ。翻訳というのは捜索作業ではなく、技術的な対応のひとつのかたちに過ぎないわけだから


・どうしてそんなに熱心に読んでしまったかというと、理由ははっきりしている。①とても読みやすくて、②やたらおかしてくて、③それでいてずいぶん切ない話だったからだ。そういう本ならいくらでもすらすら読める。


・何よりもまず小説の仕事を優先する。毎日早朝に起きて頭がいちばんクリアな時間に集中して小説を書いてします。それから食事をするか、運動をするかして、「さあ、これで今日のノルマは成し遂げた。あとは好きなことをしてもいい」ということで、おもむろに翻訳にとりかかる。


・チップ・キッドの仕事(中略)

彼の描き出す風景や事物は、その本の描き出す風景や事物と、見事に自然に協調しているのだ。そのデザインは斬新ではあるものの、決して本の成り立ちの邪魔をすることがない。それが本と供にそこに立っている。


・テーマをもらって何かを書くということはあまりない


・親戚や友人から借金をしまくり、二十代半ばでささやかなジャズ・クラブを開店した。昼間はコーヒーを出し、夜はバーになった。簡単な食事も出した。いつもはレコードをかけ、週末には若いジャズ演奏家を読んでライブをおこなった。それを七年ばかり続けた。


・音楽にせよ小説にせよ。いちばん基礎にあるものはリズムだ。自然で心地よい、そして確実なリズムがそこになければ、人が文章を読み進んではくれないだろう。


・小説家になってから三十年近くを経た今でも僕はまだ、小説の書き方についての多くを、優れた音楽に学び続けている。たとえばチャーリー・パーカー


・僕の物語世界のひとつの原型ともなっている『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(一九八五)と、僕にとっての大きな転換点ともなったもっとも長大な小説『ねじまき鳥クロニクル』(一九九四、九五)です。


・僕はいつも、どんな物語になるかを予想しないまま小説を書き始める


・小説を書くということは、つまり物語を作るというこであると考えています。物語を作るというのは、自分の部屋を作ることに似ています。部屋をこしらえて、そこに人を呼び、座り心地のいい椅子に座らせ、おいしい飲み物を出し、その場所を相手にすっかり気に入らせてしまう。


・和田さんが最初に会った時、彼はまだ千駄ヶ谷で店(「ピーターキャット」)をやっていた


●書籍『村上春樹 雑文集』より
村上 春樹 著
新潮社 (2011年1月初版)
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