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井村 雅代 氏 書籍『教える力~私はなぜ中国チームのコーチになったのか』( 新潮社 刊)より

このページは、書籍『教える力~私はなぜ中国チームのコーチになったのか』(井村 雅代 著、新潮社 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・「コーチ」という言葉の本当の意味をご存知ですか?語源は、四輪の大型馬車です。コーチとは、元々、その馬車が最初に通りを走ったハンガリーの街の名だったそうですが、「馬車に乗せた人を目的地に連れて行く道具」ということから、「指導者」の意味を合わせ持つようになったといいます。


・選手たちをただシゴくのではなく、彼女たちを目的地に連れて行き、そこで最高の演技をさせたい


・長いものに巻かれない一匹狼的な生き方


・連続八回すべてのオリンピックでメダル獲得という輝かしい成績を挙げてきた指導者である。日本の長いスポーツ史のなかで、彼女ほど実績を残し続けた監督やコーチが、他にいただろうか。


・どうして「売国奴」とまで、言われるようになってしまったのだろう。原因ははっきりしています。中国に返事をした直後の二〇〇六年一二月のアジア大会で、日本が中国に負けてしまったからです。強いはずの日本が、弱いと思っていた中国に負けてしまった。(中略)

「いいんやないか?」と言っていた人たちが、負けたら急に、「あいつ、何考えとる?」となってしまった。


・私が中国に行く理由は、日本シンクロを世界に認めてもらうためなんです


・誰の周りにもいろんな考えの人がいて、一〇人の人がいたら一〇人全員が賛成してくれたり、理解してくれるなんて、あり得ません。(中略)沢山の人と仕事をしたおかげで、「人間は、みな違うんだ」ということを、学ぶことができた


・シンクロの基本は、水中の無重力のなかで自分で軸を作ることだから、重い筋肉をつけたら駄目なんです。走ってアウター・マッスルは重い筋肉。重い筋肉は力は発揮できるけど、水の中では沈んでしまいます。だから、インナー・マッスルをつけるために、マット運動とマシンのトレーニングに徹しました。


・選手と向き合うとき、一番大事なのは、国の違いなんか関係なく「心が通じ合う」ことなんですね。私の「思い」がどこまで通じているか、ということなの。そして、通じ合うためには、自分が嫌われることを怖れては駄目。


・リーダーはリーダーに徹していて、現場は現場に任せてくれる。中国の上層部は、どうしたら私が力を発揮しやすいかを、常に考えてくれていました。


・四川大震災(中略)

四川出身の三人の選手がいて、彼女たちはあまりのショックに、とても練習を続けられる状態ではなくなってしまった(中略)

あなたたちは今、自分が普通の生活をしていることを、罪にように思っているのよね。でも、それは違う。あなたたちには、あなたたちしかできないことがあるでしょう?それは、今は希望を失っている四川の人たちに、希望を届けることなんと違う?あなたたちがオリンピックで頑張ることが、故郷の人々を元気づける一番の方法なの


・「この子は追いつめても大丈夫」と思った子には、何時間でも練習に付き合いましたが、「この子にはいま、逃げ道が必要だ」と思ったら、パッと救いの手を差し伸べてやる。追い込んでいる者の責任として、最後に救ってあげなきゃ駄目です。


・考えてもしょうがないことを私はいつまでも考えません。終わったことは捨てて、目の前にあるものをひとつひとつ克服していくしかない。


・何かあったとき、選手たちを支えるものは、「自分たちが何をしてきたか」しかないんですね、だから私はギリギリまで練習させて、彼女たちを追い込みました。


・何か心配事があるときは一人にしてはダメです。誰かと一緒にいたら気が紛れる。


・「あなたたちに今できる一番いい演技を、みんなに見て貰ってきなさい」と言いました。試合になったら、特別上手に泳いで欲しい、なんて思いません。ただ、今の力を出してくれればいい。


・私、日本をやっつける気なんか、露ほどもありませんでした。自分が強くした日本に誇りを持っていましたから。


・記録なんて、残しても意味ないですよ。だってシンクロは、毎回、毎回、試合のために進化していくものだから。過去にやった練習時間とか、メニューとか、そんなのは終わったらもう、古くて使えません、。だから全部捨ててしまう。


・------(中略)常にシンクロ界の第一線で活躍し、オリンピックでは八大会連続のメダル獲得を果たした。そのパワフルなエネルギーの原動力は何なのか。


それは、いつも目の前にある一回、一回のことしか見ていないからです。(中略)先のことは何も考えていないからやれるんですね。長い計画を立ててやるのはしんどいとわかっているから、私は何でも短いスパンで考えることにしています。


・人を惹きつけるものって、演じる者とお客さんが一緒に楽しむことが大事なんや(中略)「(中略)観客も共に楽しめるものって何だろう?」とかんがているうち、パントマイムが浮かんだんです。


・選手たちがシンクロをしているのは、メダルを取ることより前に、世界中の人々に感動してもらうためなんです。人を感動させるためには、まず自分が感動できる人にならなきゃ駄目。私が選手たちを歌舞伎に連れて行ったり、スペインへの遠征時にフラメンコを見せたりしながら感動体験をさせるのものそのためです。


・「場を制する」という点で最高にうまく行ったのが、シドニー大会のチームのテクニカル・ルーティン『空手』でした。あのときは、プールに飛び込む前の陸上動作でお辞儀をさせて、あっという間に場の空気をつかむことができた。お辞儀は、外国の人たちにとって、礼儀を重んじる日本ならではの魅力的な動作です。


・「もっと上手になりたい」「向上したい」という誰かのために、力になってあげたいという気持ち。「ここに私の存在価値があるんだ」というよろこび。それがコーチを続けてきた私の原点やと思っています。


・「やりがいは、オリンピックでメダルを取ることですか?」と、よく聞かれるという。その問いに対しては、こう答える。「違います。自信のない子が、自信ある顔に変わっていくのを見るのが、私のやりがいです」と。子供を指導していて「あ、私もできるやん」という言葉を聞くと、めちゃめちゃ嬉しい。


・当時、水泳連盟の会長だった古橋広之進さんに(中略)「浜寺の井村さんにナショナル・コーチをしてもらったんじゃない。井村雅代というひとりの人間を見込んで頼んだのだから、あなたが辞める必要はない」と言ってくださった。(中略)どれだけ心強かったか・・・・・・。


・オリンピックは、スポーツの天才の集まりではないのよ。あれは、オリンピックに出たい、出たいと、誰よりも強く、強く、思った人の集まりなの(中略)オリンピック選手のなった子たちは、生まれたときから才能に恵まれた、特別な人でも何でもない。みんなと同じように、どこにでもいる普通の子がしっかりとした目標を持って、オリンピックに行くことを本気で願って、諦めず、努力し続けたことの結果なんです。


・シンクロは競泳と違って、プールの深さ、水の柔らかさや硬さ、水の色、天井の景色、そんなものがみんな演技に関係するんです。だから選手たちがプールに慣れるのはとても大事なことです。


・「私は試合前にすごく緊張してしまうんですが、どうしたらいいですか?」と聞かれますが、緊張はしなきゃダメです。大きな試合の前の「心地よい緊張」は絶対に必要なの。練習のときと同じ気持ちで行くなんて、とんでもないことです。


・コミュニケーションの仕方(中略)なかなか伝わらないときは「自分が悪い」と思って、言葉以外のあの手この手を使って、気持ちを伝えられるように


・私は、日本のナショナル・コーチを二七年もしてきて、シンクロのあらゆる技術やノウハウを知っているから、中国に行っても、自分のノウハウが七五パーセントか八〇パーセントは役に立つだろうと思っていたの。でも、実際指導してみると、役に立ったのはたったの三〇パーセントに過ぎなかった。そして、その三〇パーセントとは、技術よりも精神的なものだけでした。


・私は「ハンディ」という言葉が使わない人なの。そんな言葉、私の辞書にはありません。何故かというと、「ハンディ」と言った途端に、そこで止まってしまいますから。その言葉を言うことで、どこに責任転嫁して自分を許してしまったら、そこで止まってしまって、その先の成長がないでしょう?


・神様は平等で、ハンディがある人にも、何か別の素晴らしいものを与えてくれているはずや(中略)だから私は、「ハンディ」と、「仕方がない」、その二つの言葉は使ったことがありません。


・日本と中国の上に立つ人の一番の違いは、下の人への託し方です。任せたり、信じたりは、絶対中国のほうが上。あれだけ信頼されたら、人間、頑張りますよ。


・人の心に訴えるものを作るには、何よりも「自分たちの思い入れ」が必要です。


・リフトで、下の子の肩に立たせるのは、「下が大事なんや」ということを学ばせるため。親はみんな、自分の子には上に立つ人になって欲しいと思うけど、人間社会は下が大事なんですね。上の子が下の子を信用することを体操から学ばせる。


・「この子のためと思ってやっていたことが、実は、子供の芽を摘んでしたかもしれない」


●書籍『教える力~私はなぜ中国チームのコーチになったのか』より
井村 雅代 著
聞き手:松井 久子
新潮社 (2013/4/18)
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