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津野 海太郎 氏 書籍『電子本をバカにするなかれ』(国書刊行会 刊)より

このページは、書籍『電子本をバカにするなかれ』(津野 海太郎 著、国書刊行会 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・本が読まれていない、本は衰退しつつあるというが、そうじゃない。現に、いまはかつてはいほど大量の本が出版されている。その分、私たちは、かつてないほど多様な本を自由に読めるようになった。むしろ、本と読書にとっていまほどいい時代はない、と考えるべきじゃないのか。


・一九八〇年代の前半です。いまとおなじく、あの当時も、出版界周辺では「活字文化があぶない!」という危機意識が急につよくなっていた。ただし統計でみると、このころ本の売れ行きはとくに急激に落ちたわけではない。その逆です。返品こそふえたが、年間発行点数も総発行部数も実売金額も、むしろ安定して増えつづけていた。それなのに、あの時期、なぜあんなに声高に「活字の危機」が叫ばれていたのか・・・・・・。


・OPACは、Online Public Access Catalogの略語です。インターネットでだれもが利用できるデータベース化された書誌カタログ。ふつう、「オーパック」と発音します。もともと図書館から生まれた用語のよう


・私は、いま(二〇一〇年夏)、これから本の世界に生じるであろうことを以下の四つの段階にわけて考えているわけです。


(第一段階) 好むと好まざるとにかかわらず、新旧の書物の網羅的な電子化が不可避的に進行していく。


(第二段階) その過程で、出版や読書や教育や研究や図書館の世界に、伝統的なかたちの書物には望みようななかった新しい力がもたらされる。


(第三段階) と同時に、コンピュータによって達成されないこと、つまり電子化がすべてではないということが徐々に明白になる。その結果、「紙と印刷の本」のもつ力が再発見させる。


(第四段階) こうして、「紙と印刷の本」と「電子の本」との危機をはらんだ共存のしくみが、私たちの生活習慣のうちにゆっくりともたらされることになるだろう。


・本の電子化は、やがて人間から「記憶」と「精読」の能力や習慣を致命的なしかたでうばってしまうにちがいない。この批判にはやはりかなりの理があると思うんですよ。わが身をふりかえっても、オレは絶対にそうはならんぞ、といいきる自信はないです。


・ユネスコの調査によれば、世界では年間一〇〇万点以上の本が出版されているらしい。


・一九九三年に発売された日本初の電子本リーダー、NECの「デジタルブック」


・「無料情報の大海」はどんどん大きくなりつづけ、いずれはそれが本の世界の下部構造をガッチリとかたちづくってしまうだろうということなのである。(中略)


読みたいもの、読む価値のあるものが大量に存在する以上、なんとしてでもそれを読む工夫をするにきまっている。その工夫、つまり気持ちよく読むために道具として小型コンピュータの登場が、二十一世紀の出版史をいろどる大きなトピックになるだろう。


・「インターネットは無料が基本」という私たちの感じ方はこの先も大きく変わることはないだろう。


・日本エディタースクール出版部から永嶺重敏さんの『モダン都市の読書空間』という本がでました。


・たとえば「定着」という一点をとっただけでも、印刷本にとってかわるメディアはまだ存在しないんです。だから特定のテキストをなんらかの手段で物質的に定着しておく必要があると私たちが感じつづけるかぎり、紙の本はほろびない。というより、ほろびようがないんですよね。


・ ジョージ・オーウェルが一九四七年に発表した「なぜ私は書くのか」という有名なエッセイがあるでしょう。かれはあそこで「なぜ書くのか」という理由をきわめてあけすけなやり方で書いている。


一番目はエゴイズム。かしこい人間だと思われたい。人の話題になりたい、むかし小学校でオレをいじめた連中を見返してやりたい、というようなね。


二番目は美的情熱。自分の原稿がいい紙に美しい活字書体で適切な余白を持って印刷されている。そういう本の物質的形態にかかわる満足感をもとめて書くというんです。


三番目は、世界はこうあるべきだというメッセージをほかに人びとに伝えたいという広い意味での政治的動機。


そして四番目が、自分が見聞きしたほんとうのことを記録して後世に伝えたいという証言欲みたいなもの。


・紀元前三世紀、古代アレクサンドリア図書館で詩人・文献学者のカリマコスによって目録技法がはじめて生み出されて以来、図書館人は二千三百年間にわたって、いわば検索技術の先端的な専門家でありつづけてきた


・書物とはなにか。(中略)以下のように定義することができる。

---筆記にせよ印刷にせよ、ひとかたまりの文字列や図像をインクの染みとして複数の紙の上の定着し、それらを綴じて表紙をつけたもの。


・フランクフルトの見本市は十五世紀末、グーデンベルグの活版印刷術が出現してまもない時期にはじまった。その印刷本の牙城ともいうべき最古最大の国際書籍見本市が、とうとう電子本の書物の一族として正式に認知さぜるをえなくなったのである。

・二〇〇二年二月、すなわちグーグル・プロジェクトが発表される二年まえ、東京都庁が「社会経済の変化に対応した新たな都民サービスの向上」のためという名目で、突如、三つの都立図書館(中央、多摩、 日比谷)が重複して所蔵している本を段階的に破棄し、以後は三館あわせて一冊しか買わないようにする、という新方針がうちだされた。


●書籍『電子本をバカにするなかれ~書物史の第三の革命』より
津野 海太郎 著
国書刊行会 (2010年11月初版)
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