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書籍『「大発見」の思考法』(山中 伸弥 著、益川 敏英 著、文藝春秋 刊)より

このページは、書籍『「大発見」の思考法』(山中 伸弥 著、益川 敏英 著、文藝春秋 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・ネーミングは重要、「iPod」もヒントに!?(中略)

山中
iPS細胞(中略)はinduced Pluripotent Stem cellsの頭文字で、日本語にすると「人口多能性幹細胞」になります。(中略)


実はですね、若者に人気の「iMac」や「iPod」にあやかろう、と(笑)。そういう気持ちが多少あったのは事実です。


・益川
どうやって細胞の初期化に関わる遺伝子を見つけ出したんですか?


山中
いくらなんでも十万個は扱えませんから、私達なりに候補を絞りました。まず、京都大学の多田高先生達の実験結果から、「ES細胞の中には細胞を初期化する遺伝子が存在し、その遺伝子は分化した細胞では働いていないのではないか」と考えました。(中略)


林崎(※良英)先生のデータベースは、世界に誇れるすばらしいものです。これを基にして、自分達で少し手を加えてみると、マウスのES細胞で働いていて分化した細胞では働いていない遺伝子のリストを抽出することができました。そのおかげで、何万個もあった遺伝子から、約百個の遺伝子に絞り込むことができました。


・益川
できる範囲のことから手をつけていこうとする。そうしなければ、何も始まらない。


・益川
それは感動的な瞬間ですね。ヒトの皮膚から採取した細胞が生き物のように拍動し始めるんだから。


・山中
iPS細胞は、受精卵ではなく、体の細胞由来ですから、患者さんからわずか数ミリ四方の皮膚をいただければ、そこから作ることができます。


・坂田研(坂田昌一研究室)(中略)では助教授のことも「先生」とは呼ばなかった。「先生」と言った瞬間、学生は自由に議論することをためらってしまうからです。そういう無用のブレーキをかけないよう、ディスカッションの場ではみんなが対等なんだという雰囲気をつくろうとされていたと思います。


・益川
アメリカで暮らしてみると、回施型の人生を送っている人がたくさんいます。たとえば、ベンチャー企業を興して失敗した場合、日本人だと、「もうダメだ」と、お先真っ暗みたいな気持ちになって立ち直れない人が多いですが、アメリカでは、「ベンチャーを興して潰した」という経歴自体が、「すごい経験だ」と評価されます。


・山中
今は効率が最優先される社会ですが、一見遊びに見えたり、無駄に見えたりすることの中に、実は豊かなものや未知なるものがたくさん隠されているのかもしれないですね。無駄なものを削ぎ落とそうとして、そうした未来の種まで捨て去ってしまわないようにしたいものです。


・益川
思考方法にはいえることですけれど、二通りのやり方がある。一つは、ものごとをできるだけ具体化する方法。具体例を使って解法を見つけ、その性質を使って元の問題にアプローチするというやり方です。


もう一つは、徹底的に抽象化し、シンプルにする。そうすると夾雑物(きょうざつぶつ)がなくなって、操作しなきゃいけない概念や数が少なくなってくる。数学者は比較的この思考方法を使うんです。ただし、勝手に抽象化しても成功しない。合理的なやり方をしないと抽象化できないの。


・益川
実験の結果が予想通りだったら、それは基本的に「並」の結果なんです。自分が予想してないことが起こったほうが、科学者としては当然、面白い。そこで大事なのは、「この予想外の結果は、いったい何なのだろう」と考えることです。そこから全てが始まる。


・益川
学生の場合は、「勉強が出来る」のと「研究者に向いている」のとは全く違うので、判断が難しい。


・山中
先生から言われたことの一つに、「発表の時にポインターを動かすな」という教えがあります。(中略)「ここは強調しよう」と思ってポインターをグルグル回したら、あとで先生から、「シンヤ、目が回るからあれはやめて」と言われてしまって。


・益川
僕は「プレゼンテーションの大切さ」には、二つの要素があると思うんです。一つは、今、山中先生がおっしゃったような意味。つまり、正確に相手に内容を伝えるということです。これには価値がある。人から意見を組み入れて考えることによって、そのデータを持つ意味が、より深く自分にもわかってくることもある。


もう一つは、プレゼンテーションそのものの問題。これは、「うまいか、ヘタか」だけの話だから、たいした問題ではない。実際に価値あるデータであれば、ヘタな言い方をしたって相手は理解してくれる。


・益川
「できる」と思ったやったことが間違いであって、できなかったこと自体は間違いではない。「できない」ということがわかったなら、それは一つの成功例だと考えるわけです。だから、僕は他人から見たら、「益川はあそこで挫折したな」と思っているようなことでも自分では挫折と実感してないんだね。


・益川
実は、僕はうつとは二十歳の頃から長いつきあいなの。たしかに、うつになると朝起きるのがつらくなるね。


・益川先生には座右の銘というものはありますか?

益川
「眼高手低」(※がんこうしゅてい)。この言葉は本来、「評論はうまいけれど実作はヘタだ」という意味なんだけど、学生時代にある数学の先生が、「科学者として目標は高く置きなさい。しかし、着実にできることから一つ一つ積み上げていきなさい」と解釈されていたんです。


・益川
目標は間違っていてもいいんです。自分で検討してみて、「この目標は間違っている」と思ったら、そこで変えればいい。(中略)


いちばんダメなのは、目標を設定してもそれを意識することなしに、ちょこまかちょこまか動くことです。それでは発展性がないし、設定した目標が間違っているかどうかもわからない。


・山中
益川先生はかねがね日本は「教育熱心」ではなくて、「教育結果熱心」だとおしゃっていますね。本当の意味で教え育てることに重点をおかず、「どこに大学に受かったか」という結果ばかりに目がいっている。


・益川
実は、「進化論」を信じるのも、ある意味では怖いことなんですよね。

山中
はい。なぜなら、「進化論」はまだ誰にも証明されていないからです。なぜか日本人は、人間はみんな猿から進化したと信じていますが、証明はされていない。


・サイエンスは純粋な好奇心と探求心を離れては成り立たない。

※永田紅 氏談


●書籍『「大発見」の思考法』より
山中 伸弥 著
益川 敏英 著
文藝春秋 (2011年1月初版)
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