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柴野 京子 氏 書籍『書物の環境論』(弘文堂 刊)より

このページは、書籍『書物の環境論』(柴野 京子 著、弘文堂 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・本や出版、書物について書かれた本を図書館でさがすのは、さほど難しいことではない。こうした本は十進分類の0番台「総記」のところに集められている。図書館や図書館学に始まり、本の歴史やエッセイ、書評集、本の編集、販売というふうに分かれていて、そこに行けばひととおりの周辺領域を見わたすことができる。


・版ともちろん印刷につかわれる「版」だが、かつては「出板」という字があてられた。これは、日本の出版技術の中心が版木によるものだったことをあらわしている。本を刊行することを「上梓(じょうし)する」というが、梓は版木に適した木材であることに由来する。


・印刷された本はただ内容を伝播させていくだけではなく、ものごとを規格化し、標準化する役割も果たした。


・「出版文化」と誰かがいうとき、そこにはきっと産業としての出版に対する文化意識------「文化の担い手意識」が含まれている。つまり「出版文化」には、「知的な文化を媒介する様式としての文化、を担う集団としての文化」という三種の「文化」が存在している。


・日本の書店数は最近減少傾向になるが、それでも1店舗あたりがカバーする人口は、単純計算でアメリカの4倍、イギリスの2倍である。アメリカは国土が広いために、早くから通信販売がポピュラーであるほど、ブッククラブも盛んだった。


・ブッククラブとは、一定の会費を払うと、毎月何冊かの本がセットで送られてくるしくみで、リーダーズダイジェストなどが有名だ。


・公共図書館を例にとってみると、人口あたりの館数は、アメリカが日本の1.5倍、イギリスは3倍以上になっている(文部科学省調べ)。


・再販制度とは、本を定価で売り買いすること(中古以外で割引しないこと)と理解されている。実態としてはほぼまちがいではないが、やや極端に「本は定価で売り買いしなければならない」、思い込んでいる人が少なくない。「法定再販」ということばをあげて、本の定価販売は法律で決まっていると説明する人もあるが、もちろんそんなことはない。(中略)


「メーカーである出版社が『定価』を定め、その定価で売ることを卸や小売に強制してもよい」ということであって、「出版物はすべて『定価』で売らなければならない」と定められているわけではない、という点だ。(中略)


つまり出版社が定価を決めなければ、誰がいくらで売ってもよいのである。残念なことにあまり知られていないが、そのような書籍も雑誌もすでに流通している。自由価格本、バーゲンブックなどといわれるもので、最初から定価をつけないで売られるものがあるが、期間をきめて割引販売したり、刊行からある程度の期間が経ったものは、より多く出回ったりしている。


・出版産業と定価販売の関係を知るには、およそ90年前までさかのぼる必要がある。日本では、大正8年に定価販売が業界のルールとして定められた。その当時、独禁法はないから、業界組合の規約として明文化されたものだ。


・雑誌は書籍より利益率が高いので、書籍の出版や流通にかかるコストを吸収できる。それは出版の多様性につながるし、この構造があるために、諸外国と比べて日本の本の価格は安いともいわれている。ただしひとたびバランスが崩れると、出版業界全体の経済バランスに影響するおそれがある。


・学術論文のしくみ(中略)

学会誌では査読というシステムを設けており、しかるべき複数の研究者が論文を審査し、掲載に値するかどうかを決定する。めでたく査読を通過して学会誌に載ったものは、専門家の「お墨付き」を得ることになる。権威のある学会誌に論文が載れば研究実績として認められる。このような学会誌を「ジャーナル」と呼ぶ。


・和書の場合、流通している本はおよそ80万点、実際には書店で買うことができるのは50万点程度といわれている


・そこに行けば「すべて」があると思うから。人は集まるのだ。


・スリップ(中略)

これを早くから導入したのが岩波文庫だった。戦前、スリップはそれほど使われていなかったので、出版業界でスリップといえば「岩波文庫のあれ」と形容されるぐらい知られていたという。(中略)


もうひとつは、ジャンル別の色帯である。黄、青、白、緑、赤、の5色の色帯は、それぞれが国文学、自然科学、社会科学と内容で別れていて、色ごとに番号がふられた。書店は内容を見なくても、まず色分けをそて番号順に並べていけばよい。非常に簡単で、管理がしやすい。だがそれは、書店の棚の分類が出版社の意向で決まるということもであった。


●書籍『書物の環境論』より
柴野 京子 著
弘文堂 (2012年7月初版)
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