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村瀬 拓男 氏 書籍『電子書籍の真実』(毎日コミュニケーションズ 刊)より

このページは、書籍『電子書籍の真実』(村瀬 拓男 著、毎日コミュニケーションズ 刊)から、良かったこと、共感したこと、気づいたことなどを取り上げ紹介しています。


・グーグル問題が突き付けた選択(中略)

和解案において、まずスキャンを先行させた上で、権利者に異議があるならその本だけ除外をする、という「オプト・アウト」方式の手続きを採ったところにあると言えます。著作物利用の基本的ルールは、先に権利者の許諾を取る、というものだからです。


・国立国会図書館デジタル化の現在(中略)

デジタル化されるのは、古典籍資料10万冊、戦前期刊行雑誌2万7000冊、学位論文1万5000冊に加えて、1968年までに刊行された図書を含めた75万4000冊に及びます。これらはデジタル化されると、関西館を含めた国会図書館の館内の閲覧用として、従来の「紙」に代わって利用されます。


・本の市場は(想定される電子書籍の市場も)、販売モデルが主体ですが、一挙にレンタル主体のモデルに転換する可能性も生じます。


・日本の電子書籍の歴史は、CD-ROMから始まりました。音楽用CDが発売されたのは1982年ですが、その翌年にデータ用CDとしてのCD-ROM規格がまとまり、1985年にはCD-ROMドライブが市販され、日本初のCD-ROMとしての『最近科学用語辞典』(三修社)が発売されます。


・出版社の役割(中略)

●出版企画
●編集(原稿を出版物に仕上げる行為)=出版物の内容の質的保証
●出版物の宣伝
●頒布(印刷物としての出版物を書店などに頒布して流通させる行為)
●著作権の育成
●著作権の管理


・電子書籍のおける「本」とは一体何か(中略)

すべてに最適な表示を行おうとするならば、表示画面に合わせて文字組みを変更できるようなフォーマットが要求されます。


・DRMとは、データファイルに対して意図的な設定された技術的な制約のことを言います。違法コピー防止や、内容の改ざん防止、または再生期間の制限などに用いられることになります。


・委託販売制度とは、一言で言えば、書店は単に場所を貸すだけであり、売れなければ返品できるという制度です。実際には、出版社がいつ売上を立てることができるのか、という観点から返品可能な期間が限定されていたりするなど、いろいろと細かい取り決めがあるのですが、全体的に見れば、書店側が売れ残りのリスクを負う必要がない制度だということなのです。


・委託販売制度は別のメリットとデメリットがあると言われています。メリットは、売れ残りのリスクを負う必要がないため、書店は仕入れを厳密に行う必要がなくなり、その結果、出版社が流通させたいと考えた出版物は、ほぼ確実に書店店頭に並べることができるという点です。(中略)


デメリットは、書店に仕入れ能力向上のインセンティブが薄くなるため、どこにいっても同じ本が並んでいる、と言う批判が生じるような状況が存在していることでしょう。その結果、小売店の販売能力の低下を促進してしまう危険性があることもデメリットと考えられるでしょう。


・2009年の数字では新刊書店での販売冊数が約34億冊なのに対して、約3億冊が新古書市場で売買されたとされています。販売価格は低下の半分程度とされているため、600円の文庫本なら300円で、見た目は新刊本と区別しにくい中古本を入手できる状況が存在しているのです。


電子書籍を価格を考える際も、このあたりの価格状況を念頭に置かざるを得ないと言えるでしょう。


・宣伝にまつわる問題点(中略)

新聞広告における書籍広告は、特別な取り扱いを昔から受けています。全国紙の場合、朝刊の1面まら3面までは原則としてすべて書籍広告となっており、さらに媒体費用の点でも、その他の商品に比べて安くなっているのです。一方電子書籍などは単独では書籍扱いとはされず、雑品広告として書籍広告よりも高い料金とされるため新聞広告が使いにくい状況が存在します。


・「出版権」とは、出版社(法律上は「出版者」です)に認められた特別な権利類型であり、出版社が著者との合意の上、独占的な出版活動(著作物の複製と頒布)の権利を有することになるという、著作権法上の制度です。第三者の侵害行為(海賊版)に独自に対抗する権利も認められています。


・20年前の議論(中略)

出版社の権利問題は昔から存在した問題である(中略)

このような議論が出てきた背景には、当時コピー機が普及し始めたことによる本や雑誌の複写が出版活動を阻害する、という問題意識がありました。コピー機による複写の増大は、著者物の複製という側面がある一方、本や雑誌の売れ行きに影響を及ぼすため、出版社の経済的利益も損なう可能性があるということだったのです。


・書協のデータベースである「データベース日本書籍目録」(2009年5月時点)によると、136万5252点の登録があり、そのうち「入手可能」は82万6465点、問題となる「品切・重版未定」は43万9687点、「絶版」は9万9100点です。約44万点がいわば出版社都合で事実上入手不可能な状態となっているのです。


・雑誌は物理的な返品がほとんどない(売れ残りは流通過程で処分し、表紙のみを返品します)ため、雑誌流通にとって全国書店への配送網が維持できているという側面があり、その分書籍流通も低マージンで実現できています(書籍だけなら取次は赤字だと言います)。


●書籍『電子書籍の真実』より
村瀬 拓男 著
毎日コミュニケーションズ (2010年7月初版)
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