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山田 真哉 氏 書籍『平成のビジネス書~「黄金期」の教え』(中央公論新社 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、書籍『平成のビジネス書~「黄金期」の教え』(山田 真哉 著、中央公論新社 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・●ビジネス書とは

ひと口で「ビジネス書」と言っても、ビジネス書の定義ほどあやふやなものはありません。というのも、1990年代までは経済や経営・金融・法務といった実用書がビジネス書と呼ばれていましたが、次第に自己啓発や勉強法、脳科学、心理学といった「広い意味でビジネスに役立つかもしれない」という本までビジネス書のくくりに入るようになったからです。


・『○○力』というタイトルの場合、何が書かれているかなんかよりも、誰が書いているかが大事なポイントなの(中略)


・ビジネス書や新書の世界で『○○力』は流行った時期があった。中でも『ネガティブなもの+力』という組み合わせで『鈍感力』『失敗力』といった本が売れたが、『挫折力』はその流れの中で出てきた本である。「ネガティブなことを力に変える」というのは、誰しも惹かれるテーマだ。


・何かしらの動機付けがなかったら、本なんかすぐに読む気をなくすわ。(中略)この本の場合、動機付けが『週末起業はサラリーマンの不況対策だ!』『ローリスク・ローコストでできる!』『趣味の延長だから楽しいぞ!』など、いっぱいあるの


・ストーリー形式の本が多数出ていたものも2000年代の特色である。難しそうなテーマでも親しみやすくしようと工夫が凝らされたものだ。よりわかりやすくという流れが、2010年代のビジネスコミックの隆盛にもつながっていると思われる。


・株式相場の下落時は、どうやって稼ぐかよりも、どうしてこうなってしまったのか、という点に関心が向くようにである。


・千代田邦夫『課長の会計道』中央経済社(中略)

危ない会社の見分け方(中略)

●仮払金の多い会社は危ない
●役員などとの取引は「不正」の温床
●債務保障は絶対に危険
●内部留保のない会社は「自転車操業」

(本書より抜粋)


・カッキー「あっ、萌さん。この前は本を貸してくださって、本当にありがとうございました。助かりました!」

萌さん「あー、そういえば『会計士受験生に博識なところを自慢できる本を貸してほしい』って言われて貸していたっけ?」

「違います!『会計士受験生にとってためになる話ができる本を貸してほしい』です」

「似たようなもんじゃない。それで、話はうまくできたの?」


・「話し方」系は昔から人気のあるテーマである。ビジネスの現場では昨今、デジタル化が進んでいる半面、アナログ的な顔と顔を合わせたコミュニケーションも求められるため、今後も「話し方」系は廃れることはないだろう。


・公認会計士・税理士になったら、登録すれば行政書士にだってなれる


・どのような本を読んだからいいのか、という「読書術」系も昔からなくならないテーマである。読書するための読書、というちょっとした入れ子構造だが、テレビの味方を教えるテレビ番組や、新聞を読むための新聞、といったものが見かけない。やはりそれだけ読書はそれだけさまざまな見方ができる、奥深いものなのだろう。


・統計から真実を読み取れ(中略)

沖縄県が成長している理由は、出生率の高さもなることながら、先の大戦で多くの方が犠牲になっており、高齢者が相対的に少ないからである。


・Ⅱ 考察編

ビジネス書バブルはなぜ崩壊したのか?


・ビジネス書バブルというのは、出版不況を何とか克服しようとあがいた出版社側の努力と、「失われた20年」から脱出するヒントを本に求めようとした人々の需給がマッチしたことにより生まれたものでした。


・雑誌『PRESIDENT』の「なぜビジネス書は売れなくなったのか」という記事の中で、ある教授がこう分析なさっておられました。


想定外の変動が当たり前となった中では、既存のシステムで効率を追求する合理主義が、次第に効力を失ってきた。つまり、予測と制御に基づいた従来の仕事術やキャリア論では役に立たない場面が続出しつつある。


(『PRESIDENT』2016年2月15日号)


・ビジネス書バブルはなぜ崩壊したのか? (中略)

[通説3] キャリアアップは時代遅れ(中略)

キャリアアップを目指してガツガツ活動する人たちは、「意識高い系」などと呼ばれて、今や揶揄の対象でさえあります。どことなく「イタい人」「残念な人」という印象に変わってしまったのです。(中略)


会計士である私に寄せられる質問も年々変化してきており、00年代は「どうやったら起業できますか」というものが多かったのですが、今は「どうやったら副業できますか」が主流です。


・「ビジネス書はなぜ売れなくなったのか」という問いに対する私の答えとして、私は通説2の「人口減少」と通説5の「ネットに負けた」が大きいと考えています。


・00年代はなぜビジネス書ブームだったのでしょう。総括すると、次の2点に要約可能です。


①誰でも本が書ける時代・・・・・・DTPやネット等のインフラが整備されたことによって、執筆者候補が増加した。それにともない刊行点数が増加した。


②新興出版勢力の台頭・・・・・・出版不況の中、経営多角化でビジネス書専門出版社以外からの新規参入が増加した。それにより、ビジネス書のジャンルの幅が広がった。


・教養新書においては、それまで岩波、中公、講談社が「御三家」と呼ばれて寡占市場を形成していましたが、00年代前後には筑摩、新潮、光文社を「新御三家」と呼ぶ向きもあるなど、新興勢力が次々に現れました。


・ネット書評、とりわけ2000年11月にサービスを始めたネット書店Amazonのレビュー機能です。(中略)それまで書評を書くという行為は、功成り名遂げた学者や評論家、作家による専売特許でした。書く場所も新聞の日曜日の書評欄など、限定的。ところが、Amazonのシェアが拡大していくにつれ、「誰もが書評家」の時代が到来したのです。


・光が濃ければその分、陰も濃くなるものです。ブームというものには一般に、時間の経過とともに質より量という側面が生まれ、その結果、生産者に対する消費者の信頼は低下します。それはビジネス書も例外ではありませんでした。


・煽りタイトルの増加は出版界にとってマイナスだったと思います。


・タイトルだけがよくても駄目(中略)

タイトルだけでも駄目、中身だけでも駄目。タイトルインパクトブームを経たいま、出版業界には両者を兼ね備えることが求められます。


・予備校講師という職業は、高度な知識をインプットして、わかりやすくアウトプットしなければ立ちゆきません。「教える」という行為は、執筆と実に相性がいいのです。実際、予備校・塾業界は表に掲げたようにほかにもヒットメーカーを多数輩出してきました。


・結局のところ、予備校というのは教えることに貪欲で、誰よりも必死です。ビジネス書も何らかの知識を伝授する媒体である以上、その創意工夫に習うのは実に賢いやり方なのです。


・「教える」ことについてのフロンティアである受験産業に注目すれば、必ずビジネス書界の次の一手は見えてきます。


・株式会社オトバンクの上田渉会長に尋ねたところ、「働く人が読んで役に立つ本がビジネス書」ということのようです。


・動画化への流れとの関係でいうと、とりあえず学ぶなら動画、深く知るなら本、という住み分けができつつあるのかもしれません。


・私は10年前に、版元、取次、書店、印刷所という枠組みを超えた業界の垂直統合を予測したことがあります。


・電子に器を変えたとしても、その本質にはなんら影響はありません。先達にならって時代を直視し、あまり古く器にばかり固執するのではなく、どうやって新しいものを見つけていくのかが大切です。


●書籍『平成のビジネス書~「黄金期」の教え』より
山田 真哉 著
中央公論新社 (2017年8月初版)
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