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筒井 康隆 氏 電子書籍『創作の極意と掟 Kindle版』(出版社: 講談社)より

このウェブサイトにおけるページは、電子書籍『創作の極意と掟 Kindle版』(筒井 康隆 著、出版社: 講談社)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・装幀・装画 山藤章二


・特にギャンブルに関しては、これを現実に体験していない者が書く場合には想像力が必要で、だから体験したことのみうまく表現できるという体験型の作家は、つまり想像力、空想力に乏しい作家は題材にしない方が賢明だろう。


・凄味が必要、と言えばすぐに「死」だの、死に結びつく「恐怖」だのを書こうとするのも安易と言えよう


・つまり死や恐怖は間接的表現の裏側にぼんやりとその存在をほのめかした方が凄味に結びつくことはあきらかなのだ。


・読者に語りかけるような書き出しはわかり易く、好感で迎えられ、読者を読む気にさせることが多い。


・小説のよき展開として「序破急」や「起承転結」以外の技法はないのだ、と考えておいた方がよい。しかしこの章ではあくまで、文学性を重視した作品における展開だけを念頭に置いて述べることになる。なぜなら文学作品においては、前記の技法に必要な直線的な時間が無視される


・江藤淳(中略)だいたい江藤氏が嫌う作家には二種類あって、それは医者と美男子である。


・創作において、手抜きの一手段に会話が使われるのは悲しむべきことだ。主にエンタメ系の作家に多いのだが、描写や展開が面倒なのですべて会話で片づけようとするなどのことである。


・作者の主張や見解を述べたい時、ふたりの人物を登場させて議論させることがある。この時、二人の人物が共に作者の代弁者であってはならない。あるひとつの主張や見解を、ふたりの人物に分担させて述べているに過ぎないからである。


・会話で迫力を生むのはやはり対立であろうか。(中略)価値観の異る人間が対立する図式は実にまことに小説的である。


・語尾の重複を気にしながら長年書いているうちには、音読せずともしぜんに語尾の変化や文章のリズムも体得できるようになる。


・なぜ本というのはこんな形をしているのだろう、もっと別の形があるのではないか、そんな思いに囚われた人もいるのではないだろうか。


・酔っ払って書いたものが傑作になるという作家も存在するからだ。葛西善蔵などは常に酔っ払っていたらしく


・アルコール類と睡眠剤の併用はやめた方がよい。星新一はこれがきっかけで倒れ、以後寝たきりになってしまった


・作家は正直でなくてはならないと思う。「いつも噓ばかり書いているのだから、実生活では噓はつかない」と


・怒りや恐怖の表現としては「声をふるわせて」「頰を引きつらせて」などがあり、「貝のように口を閉ざし」のように質問に答えない人物に対する悪意の籠った主観的な形容もある。


・「インド象の一隊をごっそりいれられるくらいの入口の扉」「むく犬 みたいにていねいに手入れをした立木」「どっしりと気持よさそうに腰をすえた丘」「水面を流れるみたいな歩き方」


・実のところ小生、形容というものにあまり重きを置いていない。(中略)形容よりは描写、と考えているからだ。文学的な凝った形容を工夫するよりは、きちんと正確に描写する方が大切であり、自分に相応しいと思っている。


・他からの借用に関しては、自分で掟と許容範囲を設定した。よく知られた現代小説の形容は使わない。現存する作家による形容は使わない。古典的作品からの形容表現は許容。ただしその形容表現が自分のその作品に相応しいものであること。


・情報小説と呼ばれている一群の作品があって、これは個個の小説のテーマにかかわる情報を盛り沢山に書き込んだものである。


・例えば推理小説で警察の機構つまり警視庁と警察庁の違いとか、階級制度であるとか、犯罪の手口とかを本筋に関係なくえんえんと紹介するといった類いの作品である。


●電子書籍『創作の極意と掟 Kindle版』より
筒井 康隆 (著
出版社: 講談社 (2017/7/14)
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