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徳川 夢声 氏 書籍『話術』(白揚社 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、書籍『話術』(徳川 夢声 著、白揚社 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・―――ハナシほど楽にできるものなし。
―――ハナシほど骨の折れるものなし。

この二ツの相反している言葉が、話術の上においては、両方とも本当なのであります。


・真似で演じる者が、いかに上手に真似ても、それは聴取を動かせませんーーーなぜなら彼らの芸には個性がないからです。人格もまたひどく段違いときては、これまた芸の上にマイナスを加えます。


・ハナシの目的を、まず三ツに分けますと、
自分はこう思う、だからこうする、だからこうしてもらいたい、だからそうしては困る、というふうに、
―――意思を伝える。

なんと嬉しいこと! なんという悲しいこと! 素晴らしい景色ですなァ! あんな怪しからん奴はいない! というふうに、
―――感情を伝える。

2 +2 = 4である、これがエロというものです、借金を返すものなり、というふうに、
―――知識を伝える。

この三ツの目的は単一のときもあり、交じり合う場合もある。したがって、実際問題としては、ハナシもこうはっきり分かれていない場合が多いが、要するにハナシの目的は、こちらの思っていることを、相手に伝達するにあります。


・コトバ、ことに、美しい言葉、強い言葉、正しい言葉、これをよく頭に刻み込む。

―――豊富なるコトバの整然たる倉庫たれ。
―――言葉を自在に駆使する騎手たれ。


・本来なら、気分の重くなるような題材でも、気の合った親友同士が、ものの三十分も話していれば、胸が開けて明るい気分となること妙です。ハナシというものは、場合によってハイセツでもあるからです。今の世の最大娯楽、最大健康法は、実にこれだと私は申したい。


・他人の不幸を喜ぶ本能は、他人の幸福を嫌う本能です。しかも、他人の不幸を喜ぶ本能より、他人の幸福を嫌う本能の方がおおむね強いようです。だから、コボシ屋よりも自慢屋の方が、余計敬遠されるようです。


・話術というものの不思議な力(中略)

何(ど)んな読み方をすれば、そういう効果があるのか?
原則は、実に簡単であります。

A・マ (間)のとり方、その感情は表わすべく、実に適確であること。
B・声の強弱、明暗がはなはだ巧みに配置されること。
C・コトバの緩急、遅速、申分なく調整されていること。

たったこの三原則が、それだけの不思議を実現させるのであります。音楽的にいうと、リズムとでテムポの理想的な結合です。


・主張する場合(演説心得六カ状)(中略)

第1条 自分が言わんとすることを、心の中に順序よく積み重ねておく。(中略)

第2条 聴取の状態によって、言語態度など、変通自在に加減する。

第3条 場所の状況如何によって、臨機応変たること。(中略)

たとえば学校の講堂などで、あまりにエロがかった比喩は禁物です。その瞬間、聴取はたちまち場所錯誤を感じて、暫時、演説者から注意力を他へ向けてしまいます。(中略)

第4条 自分性来の声、すなわち地声をよく鍛錬すること。(中略)

第5条 会場の広狭、聴衆の多少によって、声の調節を計ること。

広い所が大きな声、狭い所では小さな声、このくらいは三歳の児童も心得ていますが、さて広いといっても、その広さに幾通りかあり、狭いといっても、千差万別です。(中略)

第6条 聞かせるのが半分、観させるのが半分と心がけること。


・野次を大別すると三種あります。

①好意による野次
②悪意による野次
③発作的なる野次(中略)

こうした野次には、どう対処すればよいか? 原則としてヤジは黙殺すべしであります。聞こえないふりしてをしてもよろしい。聞こえてはいるがいっこう平気だ、という様子ができれば、なおさらよろしい。いかに野次られても、涼しい顔をして、一糸乱れず演説を続けて行き、そしてそれが場内の隅々まで透徹すれば、しまいには野次の方で降参して、おとなしくなります。


・「落語と漫談はどう違うか?」
これを説明すれば、自然と漫談なるものの性質がおわかりになると思います。

A・落語には最後のオチが必要でありますが、漫談にはほとんど必要でありません。(中略)

B・落語には一貫した筋があるが、漫談にはありません。
これも原則としてであって、例外としてはほとんどの筋のない落語もあり、立派に筋のある漫談もあります。(中略)

C・落語は師匠から伝授されるが、漫談は自分で創作する。


・とかく世人は、雄弁というと、ただお喋りが上手ならよろしい、と考え勝ちである。それをデモステネスは、根本的の戒めとしているのだ。言うことがいかに優れていても、態度がなっていなければ、聴衆は絶対に感動しないであろう。この場合“態度“という言葉を“人格“という言葉に置き換えてみると、よくわかるであろう。


●書籍『話術』より
徳川 夢声 (著)
出版社: 白揚社 (2003年2月初版)
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