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中村 明一 氏 書籍『倍音~音・ことば・身体の文化誌』(春秋社 刊)より

このウェブサイトにおけるページは、書籍『倍音~音・ことば・身体の文化誌』(中村 明一 著、春秋社 刊)を読んで良かったこと、共感したこと、気づいたこと、こんな視点もあるといった点などを取り上げ紹介しています。


・なぜ、ある人の発する声に魅了されるのか。なぜ、言葉で気持ちが伝えられるのか。なぜ、心のそこから感動する音楽が存在するのか。いまだ誰も、その問いに対する明確な答えを提出できずにいます。

しかし、これらの背後に「倍音(ばいおん)」が存在している、ということを見出すと、すべての謎はひとつにつながり、自然にとけはじめていくのです。


・「鹿威し(ししおどし)」や「除夜の鐘」の音、また「鈴虫・コオロギの鳴き声」「風鈴の音」。ところが、外国に行くと、そうした表現も、そのような音への接し方も、ほとんどないことに気付きます。


・「音」を定義すると、「ある媒質に受ける圧力変化が聴覚によってとらえられたもの」となります。


・「倍音」とは、いったい何を指す言葉なのでしょうか。(中略)

一般的に、音は、ひとつの音として聞こえる場合でも、複数の音による複合音からなっている、ということです。「ひとつの音」と思って聞いている中に、さまざまな音が含まれているのです。それらのさまざまな人がいる音がどのように含まれているか、によって、音色はつくられます。音色(音質)をつくっているのは「倍音」なのです。

音に含まれる成分の中で、周波数の最も小さいもの基音(きおん)、その他のものを「倍音」と、一般的に呼び、楽器などの音の高さを使う場合には、基音の周波数をもって、その音の高さとして表します。


・一九七八年に、日本人の音に対する感覚についての衝撃的な事実が、東京医科歯科大学教授(当時)角田忠信氏によって発表されました。(中略)

結論として、日本人は、論理、感情、自然といった観念が左脳で一緒になっている。西洋人は、左脳の論理と右脳の感情・自然という観念がそれぞれ分離されている、と、角田氏は考察しています。それゆえ、日本人は論理と感情が一緒に融合した形で、思想・文化を展開し、西洋人ははっきりとそれらを分けてとえている、と考えられているようです。


・日本語の特徴とは、何でしょうか。四つあげてみます。

第一の特徴は、母音中心ということです。(中略)

第二には、子音は母音と常にセットになっているということです。母音が含まれていない音は日本語にないのです。(中略)

第三には、言葉の音響的変化が大きいということです。日本語の場合、常に子音のあとに必ず母音が来るという制限があるので、音の組み合わせの可能性へ少なく、音声構成が単純になり、同音語も頻出します。同音異議語を区別するためにも、音響の変化が大きくなります。(中略)

第四に、一音一シラブルという構造です。これにより、一音ごとの倍音構造が複雑化される、一音ごとに音響を変えてひとつの言葉を作る、ひとつの言葉の一音の音響を変化させるといったことが可能になるのです。


・「人の注意を引くには、かえって静かに話すとよい」などと言われますが、これも、心理的な面だけでなく、科学的にも理にかなっているのです。小さな音量の方が、耳の中ではかえって強調され、強く同期する可能性もあるからです。


・同じ本を何度も読み返す人は、それほど多くはないでしょう。しかし、音楽をくり返し聴くことは、ごく普通です。これは、言語性コミュニケーションよりも非言語性コミュニケーションの方が、その情報量の多さにより、毎回異なった面、層を発見できる喜びがあるからでしょう。聴き手は、享受するたびに、自身の中で再創造をくり返しているとも言えます。それほど、情報量が多いのです。


●書籍『倍音~音・ことば・身体の文化誌』より
中村 明一 (なかむら あきかず) (著)
出版社: 春秋社 (2010年11月初版)
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