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[ 出版業界のトピックス ]

中学生よ、この本読め

「おせっかい」リスト好評
500冊お薦め、札幌の本屋から

■「中学生はこれを読め!」のリストから

 ・ ミヒャエル・エンデ 「モモ」
 ・ 阪田寛夫 「まどさんのうた」
 ・ 手塚治 「火の鳥」
 ・ 橋本治 「桃尻誤訳 枕草子」
 ・ 村上龍 「13歳のハローワーク」
 ・ 松江哲明 「あんにょんキムチ」
 ・ S・キング 「ゴールデンボーイ」
 ・ 三浦綾子 「塩狩峠」
 ・ 宗田理 「ぼくらの七日間戦争」
 ・ 辺見庸 「もの食う人びと」
 ・ 中島義道 「うるさい日本の私」
 ・ 向井万起男 「君について行こう」
 ・ 乙武洋匡 「五体不満足」
 ・ 重松清 「半パン・デイズ」
 ・ さそうあきら 「神童」
 ・ U・K・ル=グウィン 「ゲド戦記」
 ・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
 ・ 五味太郎 「大人問題」
 ・ さくらももこ 「まる子だった」
 ・ 吉本ばなな 「キッチン」
 ・ ビートたけし 「少年」
 ・ 中原中也 「中原中也詩集」
 ・ 茨木のり子 「倚りかからず」
 ・ J・R・R・トールキン 「指輪物語」
 ・ 養老孟司 「バカなおとなにならない脳」
 ・ 森本哲郎 「生き方の研究」
 ・ 大塚英志 「物語の体操」
 ・ 川崎洋 「ことばの力」
 ・ サンテクジュペリ 「星の王子さま」
 ・ 永六輔 「職人」
 ・ 柳美里 「水辺のゆりかご」
 ・ 魯迅 「阿Q正伝・故郷」

    (注)2005年のリストから(順不同)。今後150冊ほど入れ替える予定


 札幌の本屋のオヤジは気がついた。「最近の中学生は本を読まないと言うが、うちには彼らのコーナーがなかった」。オヤジは500冊のお薦めをリストアップし、専用の棚を作って、こんなキャンペーンを始めた。「本屋のオヤジのおせっかい 中学生はこれを読め!」。それから1年半、おせっかいは全国に広がっている。

 札幌市西区で「くすみ書房」を経営する久住邦晴さん(55)が04年8月に初めた。リストには、夏目漱石や太宰治のほか、石田衣良の「池袋ウエストゲートパーク」、あさのあつこの「バッテリー」など新しい作品も並ぶ。

 持ち帰りできるリストを店に置き、推薦本に共通の帯を巻く。この試みが各地で注目を集め、北海道では町の小さな本屋からチェーンの大型書店まで60店、静岡では130店が参加。愛知は10月から約100店で展開する見通しになった。

 中学生は本屋に来ない。だから中学生用のコーナーがない。久住さんはその発送を逆転させた。顔見知りの常連もできた。それ以上に大人が関心を示した。リストを手にした親や教師から、「お薦めは」と聞かれる。子どもの読書量や性別を聞き、「じゃあ、これとこれ」と選ぶ。

 全国に広がるきっかけは、講談社が主宰し全国370店が参加する「書店未来研究会」の北海道、東海の合同支部会が昨年9月札幌で開かれたことだった。岐阜市にある自由書房の篠田元弘社長(61)が会場に向かうタクシーの中、運転手から「小さいけど面白い本屋がある」と聞きつけた。会場で聞くと「久住さんに違いない」くすみ書房に足を運んだ。

 札幌での話を聞きつけた愛知県書店商業組合理事長で豊川堂(豊橋市)を経営する高須博久さん(55)は理事会に諮り県内での展開を決めた。

 「自分のお薦めを独自に加えたい」という。「論語」やジイドの「狭き門」なども、ぜひ読ませたい。「将来の読書人口を増やすためには種まきが必要だ

 静岡県藤枝市の藤枝江崎書店の江崎直利社長(49)は、県書店商業組合が昨秋、参加店を募る前から知っていた。ネットで検索し「これ読め」のホームページ(http://www.k2.dion.ne.jp/~sa-shibu/)に出くわしたからだ。

 リストを印刷して店に置き、学校に配ると好評だった。出版社の提案ではなく、自ら仕掛ける企画は初めて。「とかく暗くなりがちな業界にあって、勇気をもらった」と話す。

 久住さんのところには、青森県や群馬県の中学校や図書館からも「使わせてほしい」とのメールが来る。「これをきっかけに、児童書と一般書の中間のジャンルが定着してほしい」と言う。500冊の推薦リストは今夏、北海道新聞社がブックレットとして出版する予定だ。(古城博隆)

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朝日新聞 2006年5月6日 夕刊 社会面 より