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[ 出版業界について ]

出版ビジネスの四大視点

寄稿:出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏

再販制度と委託販売制度

日本の出版ビジネスモデルの中心は再販制度と委託販売制度にあるといっても過言ではない。その結果が出版社は高い返品率に悩まされ続け、書店では目利き力・マーケティング力がさっぱり育たない状況を生んでいる。今後この両制度が続くとすれば出版社・取次・書店3者とも共倒れの可能性が出てきた。
 

取次の影響が大きい産業構造

出版産業構造の特殊性は出版社約4,000社・書店約13,000店(一部を除いて殆んどが中小企業集団)の中間に位置する取次が日販・トーハンの2社で独占状態である。この2社に対する出版社・書店の不満は多々有るがそれでも2社から離れられないのは金融システム・物流システムが他に代替が無いほど優れているからである。


出版産業では日販・トーハンが実質的な支配者に相当するが、支配者が積極的に動かなければ抜本的な構造改革は出来ないと業界外から指摘され続けられているも、対処療法しか感じられない。それを断行する外部の黒船が現れるとしたら大資本か外資の可能性も強いが出版産業の低落を考えると実現の可能性は低い。


情報産業におけるインターネットの影響

情報産業といわれている出版産業は生産・流通・小売全ての面でインターネットが深く関わっている。特に雑誌についてはそのコンテンツの内容は別にしてスピード・ボリューム・コストに関してインターネットに勝てる状況ではない。コンテンツを2次・3次利用して収益を上げていくことが必要となってきた。


書籍に関しても仮に電子書籍が拡大してくれば紙の本の産業が大きく変化するがそれにはいくつかの問題も抱えている。当面は活字メディアとITメディアのダブル出版活動が展開されると考える。


新古書店の台頭

消費者の一般常識では古くなった商品は安く売られて当然との感覚がある。書籍・雑誌は発売から時間が経過しても値下がりしない。この矛盾を立てに取って成功したのがブックオフを代表とする新古書店である。


近年は新刊書店も新古本産業に参入し消費者の選択肢が広がり歓迎されている。出版産業界も公正取引委員会が提唱する再販制度の弾力的運用で価格の柔軟性を体現するチャネルとして出版物の通常流通に取り込むくらいの大胆さが必要となってきている。出版業界としていつまでも新古本書店を敵視しても何も始まらないと思われる。


寄稿:出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏