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[ 読者について ]

読者がインターネット書店を利用する理由  寄稿:冬狐洞隆也氏

日本出版インフラセンターより、「読者がインターネット書店を利用する理由」調査を紹介したい。
 

順位
理由
実数
1
送料無料なので
63.8 %
390
2
扱っている本が豊富
61.7 %
377
3
決済が簡単なので
52.7 %
322
4
配送が早い
50.7 %
310
5
ポイントがたまるので
45.8 %
280
6
検索機能が便利
20.3 %
116
7
本以外の物も購入できる
19.0 %
124
8
書評・感想を投稿できる
14.6 %
89
9
ギフト券がある
14.4 %
88
10
コンビニ・書店で受け取れる
12.1 %
74
11
その企業が信頼できる
7.4 %
45
12
的確に欲しい本を進めてくれる
2.5 %
15
13
ギフト用に包装してくれる
0.7 %
4
14
その他
2.6 %
16
15
コンビニ・書店で受け取れる
12.1 %
74
-
合計
100 %
611

※複数回答
※日本出版インフラセンターより


「リアル書店」より「ネット書店」で多く売れるジャンルとは

インターネットを用いたWebアンケートの集計結果なので、パソコンを利用しない読者は集計数に反映していない。最近は、書店の注文よりもインターネット書店の注文の方が多くなることを気づいた出版社も多いと感じている。特に、人文社会科学関係・理工図書・医学書・コンピューター関係書は明らかに書店の客注よりも多いはず。
 

「リアル書店」が「ネット書店」に勝る5要素

書店に行かなくてもネットで注文すれば、配送料無料で早く手元に届き、決済も簡単でリアル書店大手と同じようにポイントもたまり、居ながら本が入手でき、店頭で扱っているのと扱い点数が違うのでリアル書店は勝てない。


現在リアル書店がネット書店に勝てるのは、現物を手に取って選べること・試し読み(立ち読み)が出来る事・目的の本以外にも出会うことができるのと店内で時間をつぶせる、また世の中のトレンドが分かることだ。


書店という場所の雰囲気が好きな人は書店を覗けば良いし、忙しくて買う本が決まっているならネット書店を利用すればいい。送料無料はアマゾンと楽天ブックの2店で、その他は購入する金額が1500円以上は無料となることが多い。コンビニエンスで受け取る場合も無料となるのでライフスタイルに分けて利用しているようだ。


ネット書店の人気は、注文から商品を受け取るまでの速さと送料無料で決まる。今後、配送料無料がスタンダードになれば、料金を取るネット書店は益々苦しくなるし、ロングテール商品の調達能力の違いもある。ベストセラー・ロングセラーは同じ調達スピードであり、リアル書店もネット書店も問屋(取次)を経由しているが、新刊以外のロングセラー商品の調達方法が専業ネット書店は少し違うのではないかと考える。(テクニックの問題)
  

どのインターネット書店を利用しているか

順位
ネット書店名
実数
1
アマゾンジャパン
79.2 %
484
2
楽天ブックス
54.8 %
355
3
セブンネットショッピング
15.9 %
97
4
ビーケーワン
12.3 %
75
5
紀伊國屋Bookweb
7.4 %
45
6
ツタヤオンライン
7.0 %
43
7
ブックサービス
2.8 %
17
8
ネットストア ホン
2.4 %
14
9
e-hon
2.0 %
12
10
ライブドアブックス
1.1 %
7
11
その他
3.6 %
22
-
合計
-
1,171

※複数回答
※日本出版インフラセンターより

アマゾンジャパンと楽天ブックスが選ばれている理由

1位・2位が飛び抜けている理由は単純で、「送料無料」が原因。他に理屈を捏ねる人が出版業界にはいるが、文庫1冊でも送料無料がスタンダードなれば、注文が集中してもやむを得ない。それと注文してから届くまでの「時間が早い」、リアル書店と同じ取次を経由しているがネット書店の企業努力での差別化がある。


2010年ネット書店の推計売り上げは、アマゾン1560億円・楽天ブックス328億円・セブンネット190億円で他のネット書店は50億円以下推計されているが、殆ど書店と兼業のため自社のPRが殆どで売り上げを発表するに至っていない。今後益々ネット書店上位3社との格差がつくと考える。ネット書店2011年度売上は後日発表する予定。


ネット書店 口コミランキング

ネット書店名
備考
1
アマゾン
中古本併売
2
楽天ブックス
中古本併売
3
セブンネットショッピング
セブンイレブン
4
honto
トゥ・ディファクト運営
5
ebookoff
中古本
6
フルイチオンライン
古本市場を改名
7
Honyaclub
日販傘下
8
紀伊國屋BookWeb
-
9
jbook
文教堂傘下
10
DMM
-
11
駿河屋
中古本

※市場の人気順位


1位~3位は売上・人気も同じ順位。日本インフラセンターと違うのは中古本を扱っているのが5社有るということである。中古本の人気が如何に強いか、同じコンテンツなら定価の安い方に流れるのが当たり前で、消費税が増税すれば益々中古ネット書店は拡大するだろう。リアル書店の文芸・小説が売れなくなったのもネット書店が大きな原因の一つである。


書店に購入したい本がなかった時、どうする?

順位
項目
実数
1
インターネット書店で探す
64.8 %
592
2
別の書店(中古書店も含む)で探す
53.1 %
485
3
その書店で取り寄せる
27.8 %
254
4
後日またその書店に来る
21.3 %
195
5
諦める(買うのを止める)
1.4 %
13
6
電子書籍で買う
0.8 %
7
7
その他
0.5 %
5
-
合計
100 %
1,551

※複数回答
※日本出版インフラセンターより

売り手と買い手の温度差

ネット書店で探せば時間の無駄をせずに済むのを、再度書店に行くのは読者がその書店が好きだと思っている証拠とみる。別の書店で探して無ければ最初の書店に戻って注文する場合が多いということは、書店にとって大事な顧客だという認識を書店側はする必要がある。


顧客を大事にするということは、他の小売業種では当たり前のことだが、その書店で注文することを書店は客に対するサービスと思っているふしがある。他業種小売店ではサービスではなく当たり前のことで、そこに顧客に対するギャップが生まれている。これではネット書店に客が逃げても当然と考える。


ネット書店を兼業していない書店は、地域の顧客に対する客注問題で悩ましいと思う。しかし、大手ネット書店と競合しても負けるのは間違いなく、それは書店兼業のネット書店が77社有るが、資本力とインターネットに対する姿勢の違いがはっきりしている。それより書店の得意としているジャンルを伸ばす方法が賢明と考えるが、大手書店をマネした金太郎飴の本屋では規模の大きさでは勝てないと認識すべき。


日本出版インフラセンターで、書店の客注品の迅速配送を実現しようと『フュチャーブックストア・フォーラム事業』として検討しているようだ。50坪以下(1日1冊)の書店と、300坪以上(1日50冊以上)の書店の客注の量の違いで同一視は出来ず、書店は何でも本ならば客注を受注したがるので、取次の協力は不可欠。


小量の客注配送が、成り立たなくなる日も

書店の客注は小量の場合、必要以上に流通コストが掛かる。ただ、このことの認識が必要であるが、依存症の強い多くの出版業界関係者には理解できていない。流通マージンだけでは負担しきれない書籍流通コストを誰が負担するのかも認識されてはいない。


雑誌流通の上に書籍流通が乗り、今までやってきたのはご承知の通り。インターネットのお蔭で雑誌の販売額が急激に減少し、書籍流通のコストを再検討する時期に来ている。とはいえ、先延ばしの好きな出版業界で何かの外圧がない限り変わるのは難しいだろう。


寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏