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[ 出版業界について ]

出版不況の原因7つ 寄稿:冬狐洞隆也氏

日本の出版不況を出版業界の「内部要因」と見ている人々は多い。しかし、「外部要因」が多くを占めていて、既に出版業界の自助努力だけではどうにもならないところまで来ている。出版物は出版社が生産をして取次(問屋)を経由し、書店で販売するルートが80%以上占めていた。だが新刊書店だけではなく他のルートにも流れていることの認識不足もある。
 

取次経由の出版物販売額の推移をみると、2012年は17,398億円となり、売り上げのピーク(1996年)から見るとマイナス9,166億円。特に、雑誌の落ち込みが酷くマイナス6,248億円となった。結果、書店経営も厳しくなり、ピークの25,000店から12,500店に半減している。書店数のみならず、出版物の販売金額・部数ともに右肩下がりの状況にある。雑誌販売の最大の不振は、コンビニエンスと駅売店の雑誌の売上の減少、これは今後も生産年齢人口減少と少子化で不振は続くことになると考える。


出版不況の原因7つ

 1 ) 日本人の人口構成比率の変化・少子化と生産年齢人口の減少
 2 ) インターネット・スマートフォン・タブレットの普及
 3 ) 図書館・新古書店の利用拡大
 4 ) 消費者の情報収集手段の多様化と情報の階層化
 5 ) 時間・お金の使い方の変化
 6 ) 所得の実質的な減少と格差社会の2極化
 7 ) 情報源や娯楽としての出版物の価値の低下


更に、今後、電子書籍の普及と消費税増税が加わるといくら新刊書店が頑張っても限界が見えてくる。出版物の売上は1996年をピークに1997年の消費税が5%に増税後、外的要因で出版社も新刊書店も16年間もマイナスが続いた。


特に、人口構成比率では年少人口減少の影響と中心読者層の年齢上昇が原因となる。近年団塊の世代が65歳になり極端に読者人口が減ってきている。5年後の2018年には年少人口が全人口の12%。生産年齢人口も59.6%と6割を割ることになる(労働力不足が顕在化する)。上記7項目は社会の構造変化の結果で、出版業界の自助努力だけでは限界があることが証明されている。


2016年までに書店数は 1万店を下回る

心情的には出版業界の成長を希望している。だが、現実の7項目の数字の裏付けを見ると出版業の成長の根拠もなく、社会変化に適合しない従来からの出版刊行と流通システムでは読者減少に歯止めはかからない。つまり、売り方が変わっただけでなく、書籍・雑誌そのものが以前に比べ読者に支持されなくなったようだ。売れる本と売れない本の2極化が一段と鮮明になってきた。買う人が少なくなれば本の売上は上がるわけがない。


出版流通システムの中枢を担っている取次の扱い量の減少は今後も続き、企業の成長どころか半減の可能性が大である。書店の数も2016年までには10,000店を下回ると断言する。


電子書籍の成長を吹聴している企業も多いが、全て希望的観測でものを言っているので数字的根拠は何もない。2009年調査では日本のヘビー読者層は1,654万人。ライト読者層は3,336万人(現在は減少)で、この人達が全て電子書籍を読むかと言うと学習や仕事に必要な本を除けば読書はあくまでも趣味の世界にすぎない。


日本ではスマートフォン・タブレットの使用方法が欧米と違い電子書籍と言う一つのコンテンツよりも他のアプリケ―ションを使用する時間が長くなっていると見る。紙の本が残るのは確かと思うが各々の企業規模は小さくなっていく中でどうすれば自社企業が残れるか悩ましいところだ。出版社も各々ジャンル違いによって立場は違うだろうが、過去16年も連続して売上は減少しているので意外としぶとく残る可能性はあると見る。


寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏