FaxDMトップ > 出版業界の豆知識 > 出版業界について > 2025年 出版市場はどうなっているか? ドイツ出版界の予測 寄稿:冬狐洞隆也氏

[ 出版業界について ]

2025年 出版市場はどうなっているか? ドイツ出版界の予測 寄稿:冬狐洞隆也氏

本の世界的動向をうかがう助けのひとつになる、と言われるのがドイツで開かれるフランクフルト書籍見本市。また、今の活版印刷技術を考案したのもドイツ出身の金属加工職人、ヨハネス・グーテンベルク。


ドイツにおける出版業界の潮流は、日本の出版界でも見逃すことのできない一つ。そのドイツ流通連盟が発表したものに「出版業界 55のテーゼ」がある。ドイツが危惧している事項は日本でも前倒しで起こる可能性がある。詳細を紹介したい。
 


ドイツ 出版業界 55のテーゼ


書籍業界

1. 全ての印刷物がメディアとしての意味を失う。
  書籍・雑誌・新聞はそれぞれ売上が25%減少する。
2. 最も減少するのは書店店頭の販売で、31%減少する。
3. アグリゲーターはわずかながら成長が見込める。
4. 印刷本の売上は減るが、その分、ペイドコンテンツ(有料デジタルコンテンツ)
  の売上が増える。
5. ペイドコンテンツの提供者は出版社とは限らない。
  新たな提供者が出版社の市場を奪う。
 

出版社

6. 書籍、雑誌、新聞、テレビ、映画、ビデオ、ラジオのメディアはある程度保持
  できるが、専門書・学術書・教育メディアの重要性は薄れる。
7. 伝統的な販売組織をペイドコンテンツなど新しい市場と商品構成に対応
  させなければならない。
8. 出版社は今まで販路の重点を置いていた書店の比率を減らさなければ
  ならない。
9. 取次や書店との取引条件を効率性や利益性を更に考慮して見直さ
  なければならない。
10. 教育メディア、専門メディアの電子出版の開発を進展させなければ
  ならない。
11. マルチメディアのペイドコンテンツの制作と販売についてのノウハウを、
  勉強しなければならない。


書店

12. 売上が減るので、空いた面積に新しい商品を置かなければならない。
13. 書店が新しい売場のコンセプトを開発しなければならない。
14. 殆どの店頭販売書店に置いて、官庁・学校・図書館などへの販売と
  その販売に基づく売上は消える。
15. 学校は書店の取引相手ではなくなる。
16. 書店で販売される専門書、そして専門書と大学内書店が殆ど消える。
17. 教科書が大幅に減る。
18. 大学生はもはや専門書店で一般的な書籍も含めて買わなくなるだろう。


取次

19. 取扱いの量が減少する。
20. 書店の減少と、出版社の集中化により、取次はコスト面で更に厳しくなる。
21. 出版社と書店の集中化によって、配達は合理化される。
22. 取次の倉庫の稼働率を、新しい商品を導入して改善しなければならない。
23. 配送料に、売上のコミッションと経費ベースの計算によって差が発生する。


政府に対するロビー活動

29. 電子メディアの著作権保護のためのロビー活動が更に重要になる。
30. 電子メディアの再販価格維持のためのロビー活動が更に重要となる。
31. 電子メディアの間接税低減税率のためのロビー活動が更に重要になる。
32. ロビー活動によって、教育メディアの激しい変化について政治家に全てわかる
  ように説明し理解させなければならない。


ブックメッセ(ブックフェア)

33. ブックフェアでの出版社の出展面積が少なくなるだろう。
34. 出展者の中の出版社の数が少なくなるだろう。
35. 書店の訪問客は少なくなるだろう。
36. 印刷書籍のブックフェアとして一般人も訪問するライプツィヒのブックフェア
  が重要になることで、マイナスをカバーする。
37. 従来の書籍市場に近い書籍以外の企業を中心に置かなければならない。
38. 展示される品揃えの組み合わせを検討しなければならない。
39. 出版社のブースのコンセプトを作る場合に、電子メディアの説明が難しい
  ことと、販売業者に対する説明がもっと必要であることを考えなければ
  ならない。


業界紙

40. 出版社と書店の専門誌を買う会社が25%ぐらい減るだろう。
41. 広告・宣伝の数と効果が減るだろう。
42. 複雑なペイドコンテンツ(有料デジタルコンテンツ)について説明方法を
  新しく作らなくてはならない。
43. クロスメディアによる情報提供のコンセプトを開発しなければならない。
44. ペイドコンテンツの分野についての記事を大幅に増やさなければならない。
45. ターゲットをペイドコンテンツに伸ばさなければならない。


メディアキャンパス(旧書籍業学校)

46. 売上の重点が移動することに伴い、メディアキャンパスの教育に新しい内容が
  要求されることを意識しなければならない。
47. 書店と出版社の数が減ることを計算して事業計画を作らなければならない。
48. 教育内容が変化するので、事業計画を合わせなければならない。
49. ペイドコンテンツの会社が新しく市場に登場してくることを考えて、
  教育の内容を合わせなければならない。
  電子コンテンツを専門的に販売する人が書籍販売の知識を学び、
  書籍を専門的に販売する人が電子コンテンツの知識を学ばなければならない。
50. 学校で使っている電子的な教育メディアのコンセプトと技術と販売に力を
  入れなければならない。


VLB(書誌データベース)とLibreka

51. 測される市場の傾向は、Librekaのビジネスモデルにとってありがたいこと。
52. VLBは、販売業者の購入が減って、その運営は出版社の負担になる。
53. タイトル数、オリエンテーションメディアの必要性が増えるため、
  VLBの必要性が増す。
54. 書誌データは更に必要になる。
55. 書籍と電子書籍・アプリケーション・電子ペーパー・その他のペイド
  コンテンツの検索と手配のために大きなデータベースが必要になる。


                          ドイツ図書流通連盟 
  
  

短評

上記の各項目はドイツ図書流通連盟が2011年6月に、2025年までに現実に起こりえる事項の予測したものを一部抜粋した。もちろん日本には55のテーゼなんてあるわけがない。とはいえ、ドイツ流通連盟が危惧している事項は日本でも前倒しで起こる可能性がある。


日本では1997年の消費税増税から出版物の販売額減少と書店の廃業・倒産が始まり、15年間マイナス成長をたどってきたが、販売額はいまだに底を打ってはいない。少子化が止まらなければ今後数十年マイナスは続くと推測する。


少子化と生産年齢人口の減少に電子書籍・電子教科書の発達で印刷物は益々衰退していくだろう。出版社には電子書籍・電子教科書という新たな商品開発が望まれるが、その提供者は現状の出版社とは限らない、新たな挑戦者が出てくるはず。電子書籍が成功しょうとしまいと関係なく、既存の出版ビジネスモデルが危機に瀕していることは多くの人が認めている。


書店・取次の関係者とも印刷物の販売が衰退していくのを理解していながらドイツのように危機感があるようには見えない。最近、若手の出版関係者がようやく危機感を見出したようだが、中高齢者任せにせず、現状を打破したいため、それでも“本を作りたい・本を売ることを仕事にしたいと”考える人たちの存在がある以上、共に『書店のある社会』を次世代に渡すために今こそ考えなくてはならない時に来ている。


寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏