FaxDMトップ > 出版業界の豆知識 > 出版業界について > 出版業界の近未来を予想する 19個   寄稿:冬狐洞 隆也 氏

[ 出版業界について ]

出版業界の近未来を予想する 19個   寄稿:冬狐洞 隆也 氏

本の売上げは、1997年から右肩下がりだ。今後の出版業界の動きは、どうなっていくのであろうか。考えられる点19個を紹介したい。
 

出版業界の将来を考える


1、電子書籍は急には拡大しない。当分の間、どこの出版社でも電子書籍でトータル利益は出ない。


2、出版物の売上減少と電子書籍の売上は別問題でリンクしない。出版物の売上が減少したから電子書籍の売上増加はない。


3、公立学校・学習塾に電子教科書・参考書が導入された時が電子書籍のスタートになる。


4、電子書籍制作は出版社の専売特許ではなくなり、誰でも発行が可能となる。出版社が電子書籍制作プロダクションになる日も近い。


5、電子書籍専用端末機は必要なく、スマートフォンとタブレットで十分となっている。


6、電子書籍店は徐々に淘汰され、最終的に残るのは 5社位になる。


7、雑誌というメディアは、媒体の価値・機能そのものが崩れていっている。


8、雑誌流通量が半減すると配送コストの増大が懸念され、書籍にも影響がおよび、今後の出版物流システムは立ちいかなくなる可能性が出る。


9、取次は書店ルートの出版物のシェア減で新たな商材の確保に追われてきている。しかし見つからない。総合物流ルートの準備をする必要あり。


10、消費税 10%の増税で、書店業は売上減と後継者不足・従業員不足で廃業が続出する可能性がある。


11、複合書店の拡大で出版物シェアの減少が起きてくる。利益率の拡大を狙うが出版社の認識不足もある。


12、出版社・取次・書店は新しい別のパートナーや取引先を見つけて、新たな業態に転換していく必要が出てきている。


13、昔、郊外書店と言われていたが、コンビニエンスを併設し、生き残りを模索している書店もある。セブンイレブン・ファミリーマート・ローソンにその兆候が出ている。


14、何らかの原因で年商 10憶円以下になった書店は、よほど立地条件が良くないと売上は回復せず経営が厳しくなって来ている。


15、日本全国で教科書取扱いを兼務している書店(3267店)は電子教科書が導入されると取扱手数料が入らなくなり経営も厳しくなる。


16、人手不足が既に各業界に広がっている。書店も例外ではない。パート・アルバイトの時給は、2014年 3月は前年同月比 6円増の 948円と、9カ月連続で前年を上回った。今後も上がり続けると推測する。しかし、書店には払える原資が不足している。


17、 2018年頃までに本当の人手不足が顕在化する可能性が現実的になってきた。出版社・取次・書店とも人材集めに苦労するのは明白。既にその傾向は出ているが書店業界では対策を聞いたことが無い。


18、地方都市に夕張市予備軍(約50市)が顕在化し、社会問題になりつつある。無理な合併のせい。地域によっては老齢人口比率が40%を超え、若者の人口流出は誰にも止められない地域が出てくる。


19、全国の自冶体 1719のうち 317の自冶体が『書店ゼロ』の状況。今後、数年で新刊書店ゼロが 500自冶体に拡大する可能性も出てきた。読者はインターネット書店・中古書店・図書館もあるので、それほど心配していない。但し、消費者が本を読むかどうかは別問題。
  


出版不況の原因

出版不況の原因は、色々な場面で言われている。しかし、そんなに単純ではない。あくまでも私の仮説であり推測となるが、少子化・高齢化という人口構成比率の変化(今後30年間もっと悪くなる)と、出版物の供給過剰が、本の質の低下を生み、本離れが進んだものと推測する。


出版社としては返品率が高くても、新刊を発行続けなければ、社員の生活が問題になる。売れなければ自然淘汰しかない。考えられる出版業界の近未来から対策をとることが大事だ。
  


寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏