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[ 出版業界について ]

電子書籍がより普及するには●●●●が必要   寄稿:冬狐洞 隆也 氏

●●●●とは、「電子取次」だ。アマゾンKindleの端末器が発売されてから早くも3年経過した。日本でも電子書籍が当たり前のように見受けられているよう。しかし、世間の評判とは裏腹に電子書店は当初の希望とは違い成長が遅々として進まず、中にはすでに廃業する電子書店も出てきた。
 

公正取引委員会は、電子書籍は『物』ではなく情報であるので『再販制度』は適用されないと云う見解を当初から発表していた。よって、徐々に電子書籍の配信値段もバラバラになってきたことは消費者にとって歓迎すべきであろう。値段を統一させたいコンテンツホルダー(出版社)もいるようだが、公取の見解を勘違いしているよう。


日本の電子書籍市場は何もかも未熟さを脱していない。業界が騒ぎすぎる割には現実が追い付いていない。また、米国ではある程度、成功したかもしれないが、ここは日本であり、業界構造も、売れる本の質も全く違うのにアメリカの成功を日本でも成功できるとの幻想を見ている人の多い。日本は電子コミック以外それほど拡大しないと推測する。


筆者の周りでもkindleもkoboも使い続けている人は少ない。一通り触って遊んだ挙句が飽きてポイ捨て。なぜ、そんなに評判が悪いのか聞いたところ、「使い勝手の悪さ」と言う人が大半。日本の電子書籍の88%以上がコミックの読者では、それ以外のコンテンツを読む人にとっては物足りないと思うし、コンテンツホルダーの出版社も電子書籍化に力が入らないのは当然。


なぜ「電子取次」が必要か

デジタル化には大変な手間とコストが掛かる。そればかりではない。書誌情報といってファイルごとに作品名、著者名、出版社名、価格、商品コード,ふり仮名、解説、カテゴリー等必要なデータを作ってDBに入れる。以上のような作業を間違えることなく、出版社は何冊も何冊もやっていけなくてはならない。電子取次業者がいないと、大手の出版社は除き対応が難しいだろう。


デジタルデータの作成だけではない。出版社は売り上げデータを算出して、各著者に売り上げの一部の支払いをしないとならない。小説・絵本などは著者だけでなくイラストレータもいるし、その料率は各社、各著者バラバラだし、この作業を出版社が出来るとは思えない。それを、電子取次業者が代行する。ファイルの一括管理もデジタル化も行えば、もっと電子書籍は増えていくだろう。


出版社が一番やりたいことは「書籍を作ることと編集がメイン」であって、小さい社になると、売上高の管理すらやっていないところがある。通常、紙の本の場合、これも取次が行っているのだ。電子取次業者なくして、今の電子書籍は成り立たない。


現在、電子取次として機能している社は3つ

電子取次業者を介していない電子書店はeBookJapan, パピレス ,Kindle、 ビットウエイ等。他の多くの電子書店はモバイルブック・ジェーピー、メデイアドゥ・デジタル出版機構からデータを分けて貰っているはず。今後も3社が中心で電子取次は変わらないし、これ以上取次は必要ない。


電子書店は勝手に値段を下げらない。出版社との契約があるからとの一因があるが、最大の理由は、今のままで既に赤字なので下げられないから。Kindleが価格を順次下げていけば、他の電子書店は赤字でも一斉に価格を下げざるを得ないだろう。


本来、紙の本の価格と違い電子書籍の価格は市場原理で動くもの。電子書店もいずれ自由価格に動いてくると同時に電子書店は選別・淘汰されるだろう。


公正取引委員会は、2014年8月25日(月曜日)に再度、従来通り電子書籍は再販の適用外との見解を示した。電子書籍コンテンツでコミック以外たいした書籍はまだまだ少ない。ネットの情報と比較してもたいして変わらないコンテンツでは消費者は買わないだろう。


読者が電子書籍に求めるもの7つ

1. コミック以外のラインアップは充実しているか。
2. 読みたい本を簡単に探せるか。
3. 簡単に購入できるか、セキュリテイがしっかりしているのか。
4. いつでもどこでも簡単に読めるか。
5. 購入した本はどうやって保管されるのか。永久に保管出来るのか。
6. 今後20年以上廃業しない電子書店・倒産しない電子書店はどこか。
7. 読む端末を選ばず、自分が持つもの全てで読めるか。


以上、電子書店を選定する前に消費者がチェックする項目を並べてみた。消費者はこれを前提に電子書店を参考に選んだらよい。
 
 

寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏