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[ 出版業界について ]

出版業界は「出版不況」という言葉を口実にしている。  寄稿:冬狐洞 隆也 氏

そもそも、“出版不況って?”

何かというとすぐに「出版不況」という言葉が飛び交うのが出版業界。しかし、何を基準に出版不況というのか、その原因は何か殆ど語られていない。


出版不況といわれる根拠は、取次経由の新刊書店の売上減少の数字が元になっていることが多い。1996年をピーク(2兆6564億円)に、17年間も連続減少(2013年1兆6823億円)していたのに今更「出版不況」の話でもない。
 


本当に出版不況? むしろ、出版市場は拡大しているかも!?

出版業界全体が既得権益にまみれて殆ど何もしてこなかったうちに、中古本の拡大とネット通販の成長・図書館の利用拡大・出版社の読者直販・電子書籍・更には企業出版・個人出版と書店を経由しない出版物が多種多様な流通ルートで出現してきた。これらを合計すると出版不況ではないのではないか。


追い打ちをかけるように急激な老齢化・生産年齢人口の減少と少子化では、余程立地条件が整っている書店以外、成長するわけがない。出版不況ではなく書店の構造不況と言える。実際、年商10億円を切ってしまった書店は二度と10億円以上にはならない書店が大多数になった。


出版社は初版部数を限定して、特定の書店にしか配本しないか、通信販売でしか買えないよう消費者に興味をそそるような仕組みを作らないと難しいだろう。ある出版社はこれで成功しているが、成功しないのは企画から失敗している。良い本かダメな本かを決めるのは消費者であって作家や出版社が決めるものではない。


本は書店で買うのが一番?

更には他業種企業を経由して消費者直販も成功が見える。出版社は書店経由が良いとか悪いとかではなく、ルートにしがみ付くことなく自由な発想をするといい。つまり、読者が望む姿に真摯に応えるべき。


また、書店は出版社が発行するものだけを扱うという発想を捨て、消費者が買うか買わないかの判断をすべきではないだろうか。最近、新刊だけ並べて悦に入る書店が多くなっている。金太郎飴の書店が多すぎる。取次の販売政策かどうか知らないが、それほど新刊は売れていない。


書店は、先ず小売店であるべき。消費者との距離を縮めようとの意気が感じられない。誰が作ったか知らないが小売店マニュアルを実践しすぎではないか。ファストフードとは違うので消費者の相談を親身に受ける人が店内にいることは重要だが、パートやアルバイトでは出来ない相談。


と述べてきたが、「出版不況」ではない。活字商品の販売額から言って消費者の活字商品の入手方法が“多様化”しただけ。他の先進国と同じような成長は続いている、と私は考える。
 
 
 
寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏