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[ 出版業界について ]

出版取次のシステムは今後も残れるのか。 寄稿:冬狐洞 隆也 氏

出版取次のシステムは今後も残れるのか、10個の視点を紹介したい。
 
 

1) 書店の販売額が減少すれば、必然的に出版取次の販売額も減少が続く。

2) 出版社は新刊点数の増加で売上を補完しているが、結果、返品率の高止まりが継続。返品率の高止まりは、取次にとってコストが掛かりすぎる。

3) 読者は質の低い新刊を買って満足度が低下しつつある。

4) 本の点数が多くなりアマゾンのレビューを参考に購入する機会が多くなっている。

5) 書店では本の評判が分からないため通販での購入が増加した。

6) 出版業界は結果的にアマゾン・ジャパンの巨大化に手を貸したのである。

7) 書店がある限り取次のシステムは残る。しかし、大手取次2社の寡占化が進み、中小の出版取次業者の生き残りは困難と見る。取次はもはや単独で流通を支えて行くことが不可能になってきた。

8) 来春2016年、大阪屋と栗田の統合で売上1,000億円の話も出ている。けれども、これは栗田側の書店離れから不可能に近いと考える。

9) 委託制度が続く限り、出版・取次・書店とも誰も儲からなくなっている。

10) 2015年上半期も販売額は下落中。特に雑誌の販売額の落ち込みが酷い。取次は雑誌販売額で経費を賄っている。雑誌が売れなければ近いうちに取次の経営は持たなくなるし書籍販売額だけではコストが持たなくなる。週刊誌のマイナスは悲惨な現状で今年に入ってから6カ月連続の二桁マイナスが続いている。
 
 

世界有数の出版取次のシステムは、なぜ、おかしくなったのか

中堅取次の大阪屋は昨年2014年、楽天や大手出版社の支援を受けて多額の不良債権処理を行った。栗田出版は2015年6月26日に東京地方裁判所に民事再生法適用の申請をした。同年11月下旬に債権者集会が行われる予定。だが、事実上の倒産。


他にも噂はあがっているが、どうして世界有数の日本の取次のシステムがおかしくなったのか。現在の正味体系に基づく出版社・取次・書店という近代出版流通システムの終わりを告げているのかもしれない。


前から言われているが、出版物の委託制度が問題だと指摘する人も多い。これを解消するには相当の時間を必要としている。しかし、そんな時間の余裕はない。取次が本気になって時限再販に取り組まない限り、三者とも共倒れになるような気がしてならない。

それと生産年齢人口の減少(団塊の世代の人々)と、年少人口の減少が最大の原因と見ている。その証拠にコンビニエンスの雑誌が売れなくなったのと、駅の売店の新聞・雑誌の売上減少に繋がっている。


年少人口の減少は政府が何を発表しようと、今後、全ての売上減少に影響が出てくるのを認識したほうがいい。小手先の対策では継続が難しいということ。人口が減れば成長はないのが基本なのだから。
 
 

寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏