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[ 出版業界について ]

本の推定販売額 販売ルート別 (5年間推移) 寄稿:冬狐洞 隆也 氏

日販が「販売ルート別 推定出版物 販売額 (5年間推移)」発表した。6つの販売ルートで分類している。本の売り場はどう変化しているのか。過去5年間ごとの推移を紹介したい。
 

ルート別
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
10年比
書店
1,391,016
1,358,596
1,290,498
1,225,218
1,163,801
▲16.4
CVS
285,984
261,737
245,134
225,217
216,536
▲24.3
インターネット
128,500
137,100
144,600
160,700
162,600
26.5
大学生協
39,773
38,000
35,500
34,900
31,500
▲20.9
駅売店
49,832
45,824
40,209
34,201
24,432
▲51.0
スタンド
19,291
17,632
16,045
13,863
11,129
▲42.4
合計
1,914,396
1,858,889
1,771,986
1,694,099
1,609,998
▲44.2

※単位100万円
※日販 書店経営 調べ
 
 
publication-sales-total-2010-2014.jpg
 
 

この5年間で最大のマイナス率は“駅売店ルート”


日販の調査によると、書店数はこの5年間に1,156店舗減少している(年間平均231店)。全国の書店はそれなりに努力しているが、生産年齢人口減少や年少人口減少といった人口構成の変化には太刀打ちできない。買う人数が少なくなっているのに売上が上がるわけがない。


ネット書店ルートを除いて取次経由の出版物の売上は減る一方で増加する可能性がない。ネット書店はネット専業の売上で書店兼業の売上は含んでいない。如何にアマゾン・楽天に本のシェアを奪われているか理解できる。


この5年間で最大のマイナス率は駅売店ルート。駅売店・スタンドルートは雑誌の衰退で全く先が見えなくなった。駅売店はCVSに変更して生き残りを図ろうとしているが、3種の神器であった新聞・雑誌・タバコの売れ行きは悲惨なもの。


書店は雑誌の衰退で売上・店舗数も減少すると考える。朝の読書普及の運動は書籍の話で、雑誌の読者は育てていなかったよう。 


電子雑誌があるという人もいるが、アメリカの電子雑誌は絶望的な状況になっているのも周知の事実。
 
 

コンビニで雑誌を求める人が少なくなった

CVSの誤算は雑誌のマーケテイングを取次に依存しすぎてきたから。反論があるかもしれないが、数字が事実。最新のデータでも雑誌販売額は1店舗年間平均390万円。1日1万3000円しかない売上でCVSまでの輸送コストを誰が払うのか来年は問題になるだろう。CVS店内では雑誌の価値が無くなったと考える。駅売店がCVSに変化しているが、雑誌に関しては焼け石に水。


大学生協の落ち込みは学生が生協で本を買わず10%引きのアマゾンの影響があるかもしれない。学生の人数も減り続けているのに本の売上が上がる理由がない。


本の売り上げは下がっているのに、出版点数は減らない現状

これだけ売り上げが下がっているのに出版点数は減らず、返品率も高止まりで無駄な事ばかりしているのは出版業界の長年の慣習をそのまま大事にしすぎた結果。


再販・委託システムが疲弊しているのを気づいていても誰も指摘しないで『現状大事』と思っているのかもしれない。新聞を含めた出版・印刷メディアの地位が相対的に低下したと私は考える。


人間はとかく過去の経験の範囲内でしか物事を判断できない。過去の成功体験を引き合いに出す人は、昔の景色を今の時代に出すようなもので何もない。委託と再販制度にどっぷり浸かった人々が痛い目に合う日は近い。
 
 
寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏