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[ 出版業界について ]

音楽業界の統計から、今後の出版界を見据える  寄稿:冬狐洞 隆也 氏

日本レコード協会が「音楽メディアユーザー実態調査」を発表した。出版業界と同じ縮小傾向にある音楽業界。書籍・雑誌の購買層にも似たような傾向を示しているので、動向を紹介したい。
 
 

音楽メディアユーザー実態調査

当該期間における音楽との関わり合いで最もあてはまるもの(各年3~8月)

年度
有料聴取
無料聴取
無関心
(無料・認知曲)
無関心
(曲聴かず)
2009年
55.2%
17.0%
12.4%
15.4%
2010年
52.3%
19.1%
12.2%
16.2%
2011年
49.6%
17.0%
16.4%
17.0%
2012年
46.6%
17.1%
18.4%
17.9%
2013年
44.5%
19.1%
19.0%
17.4%
2014年
-
-
-
-
2015年
32.9%
19.3%
34.6%
34.6%

※日本レコード協会発表 2016年3月


有料聴取層

音楽を聴くためにCDや有料音楽源など音楽商品を購入したり、お金を支払ったりしたことがある

無料聴取層

音楽にお金は支払っていないが、無料動画サイトやテレビなどで新たに知った楽曲を聞いた経験がある

無関心層(認知楽曲のみ)

音楽にお金を払っておらず、以前から知っていた楽曲しか聴かず、新曲は(テレビなどでも)聴かない

無関心層

音楽にお金を支払わない。特に自分で音楽を聞かない(音楽には特段積極的な好意、関心は持たない。音楽への本当の意味での無関心派)
 
 

該当期間における音楽との関わり合いで最も当てはまるもの{2015年3月~8月}{属性別}

年代
有料聴取
無料聴取
無関心
(無料・認知曲)
無関心
(曲聴かず)
全体
32.9%
13.2%
19.3%
34.6%
学生
51.0%
23.7%
11.3%
14.0%
20代
50.2%
13.9%
17.6%
18.2%
30代
36.4%
11.9%
20.1%
31.7%
40代
28.3%
13.3%
15.6%
42.8%
50代
25.9%
8.8%
22.5%
42.8%
60代
17.5%
9.2%
26.3%
46.9%

※以上実態調査は2015年12歳~69歳男女に対してインターネット経由で実施。
 
 

音楽、無関心が増加

『音楽メディアユーザー実態調査』によると2014年は未調査のため1年分空いているが、2015年には『若者の音楽離れ』だけでなく全体も無関心層が増えてきている。


若者の音楽離れだけではない。車の免許は取らないし、車自体も購入しない。書籍・雑誌も売れなくなってきているのは格差だけの問題でもなさそう。出版界の特に雑誌が売れないのは中身が『つまらない』からと考える。ただ一方で、毎年行われている東京ビックサイトの同人誌即売会では参加人数が50万人以上集まり、一点1万冊以上売れる雑誌もある。


書店に苦労しておいてもらうより、イベントに参加して売価1500円で1万冊売れたら原価が安いのにいくら儲かるか、数%の印税貰うより人気作家でも連載から同人誌に移行する人気作家もいるようだ。


音楽業界にとってお得意様は学生。しかし、その学生でも少しずつだが「有料聴取」が減り「無料聴取」ですらも減少。無関心層が増加している。書籍・雑誌の購買層も似たような傾向を示している。


出版業界同様、市場の活性化を期待できない層が増加している状況では、どちらの業界もあまり好ましいとは言えない。特に、2015年における無関心層の急増は40歳代以上の4割台がこの層に該当し音楽離れが一気に加速した感がある。


さて、この両業界は人口減少の中でどう対応していくのか。従来の経験則でやってきたプロは辛くなっている。実際、プロの作った障壁が崩れ、新人でも意欲さえあれば作れるデジタルが指示されている。


今のメディアはまず紙媒体があり、その補完としてWeb版がある。しかし、実際は逆ではないか。Web版の方がボリュームに制限は無く、アップデートも出来る。大きなボリュームの物をスマホやタブレットで読むことに若い人は何の苦痛も無い。Webで大量に書いて、その要約版が雑誌というようにこれからなっていくだろうと考える。


利用者層の年代が、年々変化していくのに相変わらず企画編集が変化しないと売れなくなるのは当たり前。消費者目線で作っていく必要があるが出来ていないのが現状。


 
寄稿 : 出版流通コンサルティング 冬狐洞 隆也 氏